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117 魔術師、考えをめぐらす

ギルドが用意している宿泊所は長屋形式で、大きめの部屋が並んでいる平屋だった。城塞都市である王都や帝都とちがって土地の制約がないためか、十分な部屋数があった。おかげで他の冒険者と同室にされることはなく、僕たちのパーティーだけで一部屋あてがわれた。壁際に暖炉がひとつあるだけで、テーブルや椅子はもちろん、ベッドもない。ただ7人が寝ても十分な広さはある。ようするに、雨風の心配の無い野営とさほどかわらない。


僕たちは野営の時と同じように、思い思いの場所に寝袋を広げ、それぞれの寝場所を確保すると、まだ陽は高く、寝るような時間ではないので、部屋の真ん中に車座になって話を始めた。


「面倒なことになったな」

「でも、ハンターだよ、ハンター。一度会ってみたかったんだ」

トールの言葉にノアが応える。

「そうだな、だが、他のハンターがどうなのかは知らんが、あいつは少々剣呑だぞ」

「すみません、僕が余計なことをしたばっかりに…」

「なにをしたのでしょうか」

「ハンターと聞いて、ついね…装備をちょっと調べたんだ」

「そのようなこと、手に取らず見ただけで判るのですか」

「伝説の鑑定魔法みたいだね、またも驚きだよ」


鑑定魔法か…

元の世界で読んだファンタジーでの定番だな…

現実は、僕が知っている知識の範囲内でしか判らないけどね…


ソアの質問に対する僕の答を聞いて、ノアが目を丸くしている。

「たしかに不用意だったぞ、主殿」

「でも、魔法じゃなくてミスターの力だよね。あいつはどうして気がついたんだろう。あたしもギルマスも何も気がつかなかったのに」

「僕も気がつかれることはないはずと思い込んでいた」

「あいつも何をされたのかは判っていなかったに違いない。気のせいかなんてつぶやいていたからな。しかし、何か感みたいなものが働いたんだろう。さすがハンターというところか」

「しかし、ミスターがあいつに敵意とまでは行かなくても興味を持たれてしまったのは面倒ですね」

「そうだな、万一にそなえておく必要があるかもしれないな」

「戦ったら勝てる?」

ノアが心配そうに聞く。


ハンターが相手となると、いつもの強気のノアでもさすがに心配か…


「まぁ、僕の手の内を知られないうちは何とかなると思うし、いざとなったらテレポートで逃げるさ」

「そか、テレポートがあったね」

「ところで、エマは奴について何か知っているのか」

「いや、何も知らん。今日はじめて会った相手だ」

「そうか…」


いつも面倒なことを頼んでばかりで悪いのだが、ここはまたアリサに頼むしかないか…


「いつものことですまんが、奴について調べてもらえないかな、アリサ」

「マスターのご命令とあれば」

「命令じゃない、お願いだ」

「わたくしには同じ事です。ただ、この町では何も判らないかと思われます」

「どこなら」

「帝都ならば何か判るかもしれません」

「何か伝手でもあるのか」

「いちおう…」


アリサの返答に公爵の顔が頭に浮かんだ


「それでは帝都で調べてきてもらおう。テレポートで送るのでよろしく頼む。二日後の正午に迎えに行く」

「かしこまりました。すぐに身支度をいたします」


トランクから何やら取り出して、小さめの鞄に詰め替えると、メイド服の上からインバネスのコートを羽織った。

「それではお願いします、マスター」


僕はアリサの横に立つと、帝都の門に近い街道の基準点にテレポートした。アリサが帝都に入るのを見届け、もとの場所に戻った。


「ミスターはアリサさんに頼りすぎですね」

「ソアの言うとおりだな…」

「もう少しわたしたちを頼ってもらいたいものです」

「アリサにはすまないと思っているよ」

「たしかに、アリサにしかできないことばかりですけど…」


「アリサなら、心配はいらんさ。こっちの話をしておこうぜ」

トールが話題を変えてくれた。

「3日の余裕をもらったが、ミスター、体力は回復できそうか」

「大丈夫だと思う」

「ならば、ミスターに一匹相手にしてもらい、ミスター以外の俺たちでもう一匹を相手にするってことでいいかな」


飛竜ならば問題は無い。前と同じ手でやってもいいし、以前では思いつかなかったレールガンもどきも使えそうだ。また、トールたちは飛竜一匹なら戦い方を確立している。おまけに今はエマとアリサもいる。飛竜2匹なら余裕で討伐できるだろう。


「まだ、繁殖はしていないんだよね。行ってみたら2匹じゃなかったなんてことは…」

「それはないんじゃないかな。その可能性があればギルマスが何か言うだろう。卵くらいはあるかも知れんが」

「卵があるならラッキーじゃん。がっぽりだよ。討伐した素材は全部もらえるわけだし」


上機嫌なノアを横目で見ながら、僕はボルグの心配をしていた。ノアと同じで、ハンターに会ってみたいと思っていたのだが、もうちょっと友好的な場面で会いたかったものだ。


もしも闘ったら…


トールには大丈夫といったが、エンダーやゾルドバ、それにキーファーや二人の刺客と闘ったときでも、それなりに危険はあった。ハンターとなれば、彼ら以上の力の持ち主だろう。アリサが何か良い情報を持ち帰ってくれると良いのだが…



★★ 118話は3月22日00時に投稿


外伝を投稿中です

https://ncode.syosetu.com/n3559hz/

王女と皇女の旅  ~魔術師は魔法が使えない 外伝~

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