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116 魔術師、依頼を受ける

エマの挑発に、ボルグと名乗ったハンターは僕に向けていた視線をエマに向けた。

「氷のエマなどとおだてられて、思い上がっているようだな」

立ち上がって長剣の柄に手を掛けたボルグを、ギルマスがいさめる。


「冒険者を相手に問題を起こせばハンターの称号は剥奪だぞ、ボルグ」


ギルマスの言葉に、ボルグは腰を下ろす。

「たしかに、女子どもを相手にするのは大人げなかった。しかし、こいつらの誰か、おそらくそいつが俺に対して何かしかけてきた」

そういって僕の方を指さした。

「何をしたというのだ。魔法の発動は感知していないぞ」

「ああ、魔法ではない。魔法が使われれば俺にも判る。魔法ではない何かだ」

「勘違いじゃないのか。魔法じゃなければ何だというのだ」

「俺にも判らん。…勘違いだったかもしれんな」

「すみません、あなたの剣と鎧が気になりまして、つい見つめてしまいました。その鎧はもしやアダマンタイトではありませんか」

「お前が気にする事じゃぁないが、その通りだ。この剣もアダマンタイト製だ。気が済んだか」


あぶなかった…

超能力の発動を悟られるとは思わなかった

これからは気をつけよう

とりあえずエマには感謝だ


「エマ殿もヘタな挑発をせんでくれ。ハンターの称号は伊達ではないのだぞ」

「それでは何のために偉大なハンター様がここにいるのだ」


ギルドマスターはボルグの方を見る。ボルグは面倒くさそうに手を振った。それを見てギルドマスターは話を始めた。


飛竜の存在が報告されると、村の職人組合の長は帝都の商人組合に連絡を取って、飛竜に対抗できる冒険者の派遣を依頼したのだ。帝都の商人組合の長は帝国の重鎮とコネがあり、その人物は帝都に逗留するハンターに依頼したのだった。飛竜程度の討伐を引き受けるハンターなど通常はいないのだが、その重鎮はハンターの有力な庇護者であり、むげに断ることも出来ず、まだハンターになって日の浅いボルグが貧乏くじを引かされたのだ。


ボルグが村に到着すると、職人組合の長は早速飛竜の討伐を願ったが、ボルグが約束していたのは貴重な木の群生地を飛竜から守るという事だった。それを盾に、自分から飛竜のもとに行くことを拒否し、今日にいたったという訳だ。


「俺の役目は貴重な木を飛竜から守ることだ。飛竜がやってくれば討伐してやる。飛龍ごときに俺様の方から出向くなどまっぴらごめんだ」


ギルドマスターは困ったような表情で、エマに言った。

「飛竜2匹の討伐を請け負ってくれるような冒険者が見つからず困っていたところに、お前さんが姿を現したというわけだ」

「わたしでは2匹が相手では引き受けられん」

「そこの小さなお嬢さんがおるではないか。わしの全盛期に匹敵する魔力が感じられる。それに、お主と組むくらいだ、他のお仲間も飛竜と戦えるだけの力があると、わしは思っている。報酬なら相場の倍は出す。討伐した飛竜の素材もすべてやろう。ぜひとも引き受けてくれ」


エマがトールを見る。トールはミスターを見る。

「俺たちは、旅の…」

そう言いかけたところで、ボルグが口をはさんだ。

「是非とも引き受けてもらいたい。あんたたちの手並みを見せてくれ。特に…その男のな」

そういって僕の方を見た。


トールとエマは、こいつが向けている微かな殺気に気づいたようだ。ギルドマスターは問題を起こしたらハンターの称号は剥奪だと言ったが、バレなければ別だ。旅の世中で何か起こっても…。


「ミスター、大丈夫か」

トールが聞いてきた。

「もう2日も休めば…」

トールの厳しい表情に、ノアたちは口を挟めないでいる。

「3日の休息が必要だ。その後で良ければ引き受けよう」


「ほら、引き受けてくれたろう」

そういってボルグは笑った。



★★ 117話は3月20日00時に投稿


外伝を投稿中です

https://ncode.syosetu.com/n3559hz/

王女と皇女の旅  ~魔術師は魔法が使えない 外伝~

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