113 魔術師、回復する
ちょっと下ネタ…
僕の怪我が完全に治ったので、トールたちはそれぞれの部屋に戻り、中断していた出発の準備を始めた。アリサは僕を直してくれた魔術師を送っていって留守だ。名前はおろか、どこの町に送っていくのかも教えてもらえなかった。
まぁ、二度とやっかいになるつもりはないので、いいのだが…
僕の部屋に残っているのはノアだけである。
「出発の準備はしなくていいのか」
「準備なんて、すぐ出来ちゃうよ、パパッと。それより、本当に元通りに治ったの」
「ああ、傷痕ひとつ残ってないぞ」
そういって、上着を少しめくり上げて腹部を見せた。
「本当だ…きれいさっぱり…。もっと上の方は?」
「気になるか?」
上着を脱いで上半身を見せる。
ノアはベッドを一回りして僕の背中も見ると安心したのか、笑顔になった。
「じゃぁ、次は下の方!」
「下?」
「そ、ズボンを脱いで!」
「見なくてもいい!下半身はなんでもなかったんだから」
「でも心配だし!」
そういうと、僕のズボンに手を掛けた。
「馬鹿、何するんだ!やめろ!」
あわててズボンを押さえるが、ノアも手を離さない。
「確かめる!」
「だから、そこはもともと怪我もしてない」
「そこって?」
「どこでもいい!とにかく離せ!」
「何ともなくても、役に立たなくなってたらどうするのよ。あたしが確かめる!」
「役に立つって…」
ノアがさらに力を込める。腕力ではノアに叶わない。といってトールたちに助けを求めるのもちょっと…
必死にズボンを押さえながら、首をひねって窓の外を見る。天気は良く、雲ひとつ無い青空が広がっていた。
僕は、ノアごと青空に向かってテレポートした。上空100メートルほどの位置に出現して浮遊する。ただし、ノアの重力コントロールはしない。
落下し始めたノアが悲鳴を上げ、ズボンから手を離し、僕の腕に捕まる。
「お、落ちる!」
「変なことを言った罰だ」
「早く何とかしてよ」
ノアに捕まれた腕が痛くなって来た。離すまいと力一杯でつかんでいるのだろう。腕がどうにかなりそうなので、ノアの重力もいじって僕の隣に浮遊させた。
「どうだ、正気にもどったか」
「あたしはずっと正気だよ。本当に良かった。死んじゃうかと思った…」
「死にはしないさ、死んだら本当の魔法使いになれないからな」
ノアが真剣な表情になって、僕に首に手を回してきた、身体が密着し、顔が近い…
やってしまった…
もとの世界で全く女性に縁の無かった僕の初めての経験だ
物心つかないころ、お袋にされたかも知れないが、それはノーカンだ
ノアの頭を両手で持って、そっと引きはがす。
「帰るぞ、今のは忘れろ。誰にも言うなよ」
元の部屋、ベッドの上にテレポートで戻った。
「何をしているのですか、ノアさん」
部屋にはトール以下、アリサ以外の全員が揃っていた。
ベッドの上で、ノアに抱きつかれている僕を見て、ソアが言った。
「トール、どういうことですか」
「いや、さっきは誰もいなくて、もぬけの殻だったんだ。てっきりまた刺客に襲われたんじゃねぇかと思って…」
あわててベッドからノアが降りる。
「なんでもなーい、何でも無いよ」
問い詰めるソアを何とかなだめて、僕は刺客と戦ったあとのことをトールに聞いた。
ふたりの刺客の亡骸は治安部隊に回収され、調査がなされている。町長が絡んでいる証拠などは見つかっていないそうだ。
「残念だが町長が依頼したかどうか、証拠は何も見つかっていない。まぁ、殺しを生業としていたんだ、依頼人がバレるようなものは残しちゃぁいねぇだろう」
「でも、治安部隊が町長に目をつけていますから、しばらくは町長も動けないでしょう。最初の予定通り、早々に出発して町を離れましょう」
「ソアの言うとおりだ、ミスターも準備をしてくれ。アリサが戻るのを待って、すぐに町を出ようじゃないか」
「町長をやっつけられないのは悔しいよね」
文句を言うノアをなだめる。
「まぁ、黒幕だって言うのも可能性の問題で、町長は無実かも知れないからな」
「アリサは?」
「明日か明後日には戻るんじゃないかな」
「それまでに町長が尻尾を出すといいなー」
「町長にちょっかいをだすんじゃないぞ、ノア」
「はーい」
トールが睨みを利かせる。
「じゃぁ、あたしも出発の準備をするねー」
ノアが出ていくと、トールたちも後に続いた。ソアを残して…
沈黙が続く…
気まずさに耐えかねて、僕はベッドから立ち上がった。
「さて、僕も出発の準備をしようかな…」
ソアが僕の目の前に立ちふさがった。
「ノアとふたりで姿を消して、何をしていたのでしょうか」
「いや…ノアが僕が心配だったと言って…」
「ノアだけじゃありません。わたしも…」
そういって、僕の方に頭を載せてきた。ソアの手が背中にまわり、僕を抱きしめる。
僕の胸にはっきりとした感触が…
ノアより大きい…
ソアが顔をあげ、僕を見つめた。
やってしまった…
またしても…
初めての経験から時をおかず、二度目の経験だ…
ノアよりもずっと大人のソアに、思わず興奮する
反応しかけたのを必死で押さえる
素数だ、素数を数えろ
2,3,5,7,9,11,13,15…
いや、15は違うぞ…
僕から離れると、ソアが言った。
「ノアには内緒ですよ」
部屋を出て行くとき、僕の方を振り返って笑顔を見せた。
「ちゃんと機能も正常で安心しました」
そう言って扉を閉めた。
★★ 114話は3月14日00時に投稿
外伝を投稿中です
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王女と皇女の旅 ~魔術師は魔法が使えない 外伝~




