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106 魔術師、刺客と出会う

「おう、ミスター、どうだった」


宿に戻ると、トールが真っ先に声を掛けてきた。

「残念だけれど手がかりは見つけられなかったよ…」


宿に帰るまでの間に、ゾンデルたちを見つけたことは話さずにおこうと決めていた。僕の言葉を聞いてノアが何か言いかけたが、僕の方を見て口を閉ざした。エマは全く表情を変えることなく無言である。


「そうか、行方は判らんか…」

そう言いつつ、トールは何か言いかけたノアの様子を見る。

「まぁ、町長の出方を考えると、行方を眩ませて戻ってこない方がいいかも知れんな」

そう言って僕の方を見た。

「そうですね。町長はターニャに気はないからターニャ一家に手を出す理由はないですしね。息子が逃げている以上、無実を訴えるのは難しいし、逆恨みをするとしたら僕たちだけど、僕たちは町を出てしまえば問題はないですしね」

「そういうことだな…ゾンデルの奴が戻ってくることはないんだな?」

「戻ることはないと思うよ」

「じゃぁ、一件落着だな」


お見通しのようだな、トールは…


「これからどうするの」とノア。

「明日になったら、ターニャちゃん一家をソリトの町に送っていこう。家まで送り届けたら、そのまま俺たちは次の町に向かおうじゃないか」

「勝手に町を出ていってよろしいのですか」

「明日の朝一番でギルドに話を通すことにしよう。治安部隊にはギルドから連絡して貰う。俺たちがいなくても問題はないだろうよ。どうせゾンデルの奴は捕まらんだろうし…」



翌朝、トールと僕はギルドに出向き、キーファーの供述書の現物をギルマスに預け、町を出ることを告げた。特に止められることもなく、治安部隊への連絡もギルマスが引き受けてくれた。町長の事を尋ねたが、息子と通じていたという証拠もなく、どうにも出来ないとギルマスは答えた。


宿に戻ろうとギルドを出ると、二人の男が道に立って行く手を遮った。

「俺たちに何かようか」

「リーダーはお前か」

「パーティーのリーダーなら俺だ」

「キーファーをやったのは?」

「キーファーの仲間か、それとも、町長にでも雇われた刺客か…」

「答える必要はない」

「キーファーをやったのは僕だ」

「ゾンデルはどこだ?」

「知らないな。どこかえ逃げたのでは」

「答えないか…」

「答えなければ、どうする」

「死んで貰う」


「街中だ、場所をかえようぜ。町の外がいいな。ついてこいよ」

そう言うと、トールは背中を見せて、町の出口に向かって歩き始めた。後ろを警戒しながら僕も後に従った。


背中を見せた途端に襲ってくるのではと危惧したが、ギルドの前で騒ぎを起こしたくはなかったのだろう。おとなしく付いてくる。しばらく歩いて町を出ると、街道を外れた荒れ地で二人の男と向かい合った。


「ミスターは左の奴を頼む。俺は右の奴を相手にする」

右の男は長剣が得物のようだ。一方、僕に任された男は双剣使いのようだ。以前に戦った女騎士を思い出した。



僕はトールから距離を取り、偽装した鉄剣を抜いて構えた。これまでの相手は皆、僕の構えを見て素人と侮ったが、目の前の男は全く表情を変えず、無言で双剣を抜いた。


プロの殺し屋だな…


ゆっくりと前掲姿勢になったかと思うと、一瞬で間合いを詰めてきて双剣を振るってきた。双剣使いはスピードが命だ。そう思って用心していたのだが、後ろに跳ぶのが遅れた。


右手の剣は躱したが、左手の剣に胴を払われた。戦いの前に纏った障壁がなければ無事では済まないところだ。相手は確かな手応えを感じたはずだが、無傷の僕を見ても、能面のような表情をくずさない。


再び距離を詰められる前に、相手の後方にテレポートをして、出現と同時に剣を振り下ろす。偽装したままの鉄剣では振り下ろす速度がたりず、なんなく避けられてしまう。


テレポートを見せても驚かないか…


動揺は見せていないが、警戒をしたのか、すぐに反撃してくることはなかった。


僕は鉄剣で地面を叩く。偽装の鉄剣が砕け、僕の手元に柄だけが残った。もちろん見えない剣がそこには存在している。それを見て、無表情だった男がかすかに眉をひそめたような気がした。僕の方から仕掛けようと思った時、相手は素速く左手の剣を鞘に収め、空いた手で腰のベルトからダガーを取って投げてきた。キーファーの投げた槍で判っていたはずだったが、とっさに剣で払ってしまった。両断されたダガーが、そのまま僕に迫る。キーファーの槍ほど威力も速度も、そして質量もないせいか、コースがわずかにそれて、僕の顔の横を掠めていった。


初めて男が口を開いた。

「剣があるのか…。見えない剣とは…世の中は広いな」

そう言うと、鞘に収めた剣を抜いて、再び双剣で構えを取った。

「おまけに、はね飛ばすこともなくダガーを両断するとは…」


見えない剣での奇襲はなくなったか…

しかし、まだ、間合いは判らないだろう


相手の意表を突くしか素人の僕にはできない。左手で光の針を出現させ、相手に放った。




★★ 107話は2月28日00時に投稿


外伝を投稿中です

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王女と皇女の旅  ~魔術師は魔法が使えない 外伝~

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