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Faker ZERO  作者: Joker
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0.01章 0.08話-新たな運命-

咲の意志は刹那に受け継がれる。

彼女は新たに”仲里桧璃”と名乗ることに。

 ここは過去?夢の世界?死後の世界?黒崎くんの声で目を開ける。あれ?ここは……私は刹那と瑠璃に立ち向かって……それから?

黒崎:『はは、相変わらずだな、仲里くん。』

咲:『あれ……私、寝ていました?』

そうだ、ここは遠征の帰りがけのベースキャンプだった。瑠璃は別の任務があったから先に戻ってしまったけれど。私たちは2人でここに野営していた。

黒崎:『気持ちよさそうに寝ていたよ。起こすと悪いと思ってね。』

私は思わず赤くなる。起こしてくれれば良かったのに……。

咲:『黒崎くんは……瑠璃のこと、好き……なのよね?』

2人がそういう関係なのは薄々気づいていた。

黒崎:『そうだね……俺は彼女が好きだ。もちろん……それと同じくらい君のことも“信頼”している。』

私は……それでも良いと思っていたから。友達のような先輩のような……頼れる黒崎くんと瑠璃。彼らの傍に一緒に居るだけで幸せだった。

咲:『そっか……瑠璃のこと……よろしく、黒崎くん。女を泣かせたら許さないからね。』

泣かせたのは……私の方だったかもしれない。本当に……。

咲:「ごめんね……2人とも……。」

もう身体の痛みすら感じない。本当に呆気無かった、私の最期は……刹那、こんなお姉ちゃんでごめんね……あなたは……私よりも幸せになって……。

咲:「幸せな明日を……あなたは……必ず……。」

あぁ悔しいな……言葉になっているだろうか……もう喋ることも刹那を見ることも……本当に悔しい……でも……刹那の温もりを感じる。最期は幸せだった、私。刹那、あなたのことを本当に愛していたわ……私の愛しい、愛しい……可愛い妹……。


 咲……助けてあげられなかった。黒崎のところに戻っても良かった。でも今の私はそれを受け入れることは出来ない。今の私は昔の“私”ではない。心の中に……強く咲が生きている。彼女は生きる術と“心”をくれた。兵器と呼ばれ、怖れられたこんな私に心をくれた。本当にありがとう、なんとか……やっていけそう。この部屋で咲の想いと一緒に過ごすから……だから、見ていて咲。きっと私もあなたみたいな“イイ女”になる。

刹那:「乖離……悲しいけど綺麗な響き。」

咲が残していた読みかけの本の言葉が気に入った。切なくて悲しい……だけど美しい言葉。咲と一緒に悪戯書きしたメモ用紙を見つける。そこには咲と瑠璃という名前が書かれていた。アルファベットに書き起こす。ひょっとしてと、思った。

刹那:「やっぱり……偶然?」

彼女たちの名前をアルファベットに直す。SakiとRuriの2つの名前。その文字をバラバラにさせて1つの言葉を完成させる。もちろん、“Kairi”となる。色々辞書を引っ張り出して字を探した。決めた……。

刹那:「今日から私は仲里桧璃だ。」

彼女の姓の仲里をとり、その憧れの先輩の名前から字をとった。瑠璃の璃。ちょうど、私は咲のすすめで学校に通っていたし、もう少しで中学に進学する。生活も一新するのだし、ちょうど良い。この名前で、再び戦うことを決意した。


 黒崎の元を訪れた。中学生活も無事に終わり、今日からは高校生。女子しかいないけれど、お嬢様学校に入る。咲のヤツ、本当に私を女の子にさせる気満々だったみたい。まぁ、それはそれで良いけど。私、元々あなたみたいなイイ女だしね。

桧璃:「なんです、黒崎さん?」

黒崎:「暫く会わない内に随分と綺麗になった……仲里くん。」

私は彼の言葉を受け取り、豪快に笑った。

桧璃:「あなたの口からそんな言葉を聞けるなんて……咲に感謝してくださいね?」

最後に彼を射抜くように睨みつける。

黒崎:「……そうだな、彼女が君を変えたのだから。」

黒崎……私は必ずお前の悪事を裁いてやる。だから、ずっとこの組織に所属しているのだ。咲の仇のいる組織に……。

黒崎:「君も新たな生活を送るのだから、私から贈り物をしようと思ってね。」

彼は端末を渡してきた。今度は何を企んでいる?

黒崎:「ウエポンレプリカと言ってレプリカントの力を利用して造ったエーテルウエポンだ。本来なら……仲里くんに手渡すべき予定だった。“仲里”を引き継ぐ者として君が扱うのが自然じゃないかと思ってね。」

自分で造った兵器の試験運用とは恐れ入った。この男、本当に心があるのか?

桧璃:「わかりました。」

私は端末にエーテルを流し込むと武器は形を変えた。大鎌の形のエーテルウエポン……咲の姿を思い出す。彼女も大斧を使った特殊なスタイルだったけど……。確かに黒崎の言葉は真実のようだ。彼女向けのスタイルであることに違いは無い。

黒崎:「無心という……君なら上手くそれを扱えるだろう?」

……やってやる。咲が出来たのなら私も……。

桧璃:「私にぴったりの名前、どうもありがとう。それじゃ、ありがたく使わせてもらうわ。」

これが……私に新たな“名前”を与えてくれることになるとは思わなかった。

Cラウンダー:「全員、このまま待機……死神が通るぞ……。」

いつの間にか私は“死神”と呼ばれるようになっていた。この武器が死神を連想するからなのかもしれないが、女の子としては複雑だ。

桧璃:「ご苦労様……後は私がやるわ。」

黒と赤を基調としたエーテルスーツと後ろで束ねた髪が風で揺れる。スーツの胸元には数えきれないほどの勲章がある。何の勲章なのかいちいち覚えていない、もう忘れてしまった。今ではあなたと同じくSラウンダー、いやSSラウンダーの称号を与えられている。

桧璃:「全員下がりなさい、死にたくなければね。」

建物を崩しながらバケモノが現れる。

玲:「桧璃、敵は2体。」

桧璃:「それじゃ、3分ね。1体1分、探すのに1分。」

一瞬で目の前のレプリカントを斬り伏せる。

玲:「……今の10秒だけど?」

柊一:「……死神。」

Cラウンダーの1人が呟いた。まったく、どいつもこいつも私を死神扱い。本当に面白くない……面白くない……運命の人なんて本当に居るのかすらわからない。だけど、この後出会うことになる運命の人の存在を今の私は知らなかった。また、私の運命を大きく変えてくれる彼に……。

成長した刹那、桧璃は戦場を駆け抜ける。

死神、仲里桧璃。

彼女の物語はここから始まる。

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