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Faker ZERO  作者: Joker
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0.01章 0.04話-アトラスの秘術-

咲と刹那の間に芽生えた絆。

刹那にとってそれは何をもたらすのか……。

 今日も刹那と戦場を駆け抜ける。彼女との模擬戦のおかげで私は以前よりも強くなっているような気がした。先輩から受け継いだこのエーテルウエポンもよく手に馴染んできたような気がする。

Cラウンダー:「おい……何だよ、あの2人……ヤバいってもんじゃないぞ。」

レプリカントの残骸の中で私は刹那に向けて笑った。

咲:「私って思ったより強いかも……いやぁ……モテモテだなぁ。」

刹那:「……気味悪がられているみたい。」

咲:「どうして!?カッコイイでしょ、私!」

ふんぞり返るくらい胸を張る。そんな私に刹那は溜息を吐いた。

刹那:「笑いながら戦っているから、みんな気持ち悪いって。」

なんですって?どんな時も笑顔を絶やさないのがイイ女の条件でしょう?

咲:「どうしてよ?笑顔が似合う女はイイ女なのよ!」

刹那:「自分で言わなければ……少しはそう思ったかもしれないけど。」

そう言うと刹那は私に背を向けて歩き出した。むぅ、せっかく慣れてきたと思ったらまだまだ親交を深めないとダメみたい。私はエーテルボディを解除して刹那に近づく。

咲:「せっちゃん!」

思いきり彼女を振り向かせてしゃがみ込むとその頬を思いきりこねくり回した。

刹那:「……。」

恨めしそうに彼女は此方を睨みつけるが何も怖くない。可愛いものだ。

咲:「ほら笑顔、笑顔……刹那は黙っていても可愛いんだから笑おうね。もう少し心に余裕を持ってニコニコしましょうねー。」

思いきりぎゅっと抓る。頬が柔らかくて可愛いのお餅みたい。私はニヤニヤしながら彼女の頬をこねくり回していると……刹那は私の手からするりと脱出した。一瞬の隙を見逃さずに彼女は私の額に思いきり額をぶつけてきた。

咲:「あでッ!!」

Cラウンダー:「げぇ……仲里隊長!?」

痛すぎる……涙を浮かべて刹那の方を見た。

咲:「痛ぁい!なんてことするの!?」

刹那:「ふ……おでこ赤くなっているわよ。可愛いわね、咲。」

思いきりしてやったわというような満足気な笑みを浮かべる彼女。どちらかと言うと私の求めていた顔じゃないけど……確かに笑ってくれた。

咲:「あはは、それで良いのよ、刹那。」

彼女にそっと微笑む。泣きたいほど痛いけど。

刹那:「……ふふ。」

まったく、まだまだ素直じゃないけど笑った時は凄く綺麗だった。今も気づいていないだろうけど笑っている。たぶん、もう少し成長したらどんな男でも振り向かせるような……そんなイイ女になるだろう。


 任務が終わって私たち2人は黒崎さんの元へやってきていた。私と居る時の刹那とは違って以前に会った時のような物静かな刹那になる。

黒崎:「聞いているよ……随分と戦果をあげているようじゃないか。」

咲:「いえ……私はやるべきことをしているだけですから。」

黒崎:「刹那も随分と君に懐いているようだ。」

刹那は黒崎さんのことを信用していないのだろうか。いつもの無表情で何を考えているかわかり難い顔をしている。

黒崎:「そろそろ……君もわかっただろう?その娘の“在り方”に。」

なるほど……黒崎さんは私の刹那の接し方が気に食わないみたいだ。あくまで彼女のことを“兵器”だと言いたい訳だ。私は思いきり彼を嘲笑うように言ってやった。

咲:「いいえ、やっぱりこの娘は“普通の女の子”です。そして、私の妹です。」

隣の彼女を抱き寄せてニヤリと笑う。

黒崎:「姉と言うより娘を溺愛する母親の言い分に聞こえるがね。」

咲:「いいでしょ、黒崎さん。このまま私がこの娘を預かっても。別に任務に支障も無い。」

黒崎:「わかった……もうしばらく君に預ける。」

私は刹那に向かってにっこり笑った。


 しかし、私の予想が外れた。彼女は随分と母性のある女だった。ああいうタイプは男に溺れるようなタイプだと思っていたが……存外、根はしっかりしているらしい。

黒崎:「これ以上、刹那を仲里君に預ける訳にはいかない。」

私は培養ポッドに浮かぶ美しい肢体に向けて声をかけた。

黒崎:「なぁ、瑠璃?」

ポッドの中の彼女の目が開き、私に微笑みかける。ポッドの水を抜くと私は彼女にバスローブを手渡した。

瑠璃:「……まさか、本当に生き返るなんて夢みたい。」

彼女は両手を広げてくるくると回る。瑠璃……まだまだ技術的には未完成だが、やっと君をこの世界に戻すことが出来た。

黒崎:「おかえり、瑠璃。」

瑠璃:「あら、隆一くんはあの時から全然変わってないのね。」

まるで生前の彼女とは別人の表情。彼女はアトラスの民の秘術によってこの世界に戻ってこられた。高城の協力も少しはあったがほとんど私の研究成果によるものだ。

瑠璃:「隆一くん。」

彼女は私に近づくといきなり私の唇を奪った。薬品の匂いが鼻孔を刺激する。

瑠璃:「ふふ、ありがとう……こんなに想ってくれていて……嬉しいわ。」

死者をも蘇生させる秘術……やった、私はついにやったぞ。後はあの娘、刹那からまだ取りきれていないデータがある。それを得ることが出来れば……目の前の彼女はさらに完璧なものとなる。死を乗り越え、完全なる生命体へと進化を遂げる。

黒崎:「瑠璃……仲里君が私たちの邪魔をしようとしている。」

瑠璃:「……わかっている、あなたの為だもの。ちゃんと始末しましょう。」

彼女は不敵な笑みを浮かべて笑い続けた。そんな彼女を見て私はこう思う……今回も失敗か……魂が明確にその身体に縛りつけられていない。彼女はただのモンスターだ、私の愛した瑠璃じゃない。やはり……刹那は返してもらうよ、仲里君。

思惑とは違い、咲と刹那の間で芽生えた絆。

兵器に心など不要と考える黒崎がとる行動は……。

不老不死の研究の行方は……。

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