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変わり始める生活

長編と並列して進めているので、もしかしたら口調やキャラが引っ張れることもあるかもしれません。

気づいたら修正します。

 翌日、私は戦っていた。

 

 何とって?そんなの決まっている。魔道具の山と…………


 

 正直脳内で一人で会話をし出す程度には私は疲れていた。

 

 まず家を片付けようと思って掃除を始めた。当然カイルにも確認したが二階のものは売れなかったものなので必要ない物なのだとか。


 だったら捨てろよ!!と怒鳴りつけたい気持ちを抑えて私は一人で戦っていた。

 落ち着くのよ私。カカシに何を言っても無駄なのよ。


 既に今日分の私の魔力は三分の一ほどを残してカイルの魔道具に奪われている。だが、魔力を使っても別に体力が削られるわけではないので、余った時間で片づけを始めた。


 ごみの捨て方を聞くと、だいたい炉に入れれば処分できるとのことだったので私はゴミを持っては階段を降りるというのをずっと繰り返している。

 

 ちなみに、運搬には悪路でも魔道具を運べるように開発されたらしい運搬用の台車を使っている。

 

 最初見た時は、魔道具の需要が無いのにそれを運搬するための台車ってなんだよとツッコミどころの多い作品だったのだが、見たこともないような形の細長い車輪が階段すらも走破しとても便利な代物だった。

 燃費も悪くないようで、それほど多くない魔力を継続的に流すだけで車輪が回転し、軽い力でもぐんぐん前に進んでいく。まあ、あくまで貴族の魔力での印象なので普通の人には難しいかもしれない。小型化したら普通の平民でも使える気がするが、カイルにとっては魔道具の運べないものに価値は無いようで小さいものは一切なかった。



 どうやら、これはカイルのオリジナルらしく、生活能力や対人能力が皆無な分、魔道具作成能力はかなり高いらしい。ただ、それで発生したゴミを片付けるために魔道具を使うというわけがわからないことになっているが。


 

 

 階段を降り、今日一日で見慣れた魔力炉に向かった。



 魔力炉は二つある。サイズとしてはかなり大きい。

 カイル父曰く、一族がここに居を構えた時からずっと使い続けているものらしい。


 おそらく一族にとっては大変貴重なもののはずだが、手が触れない部分がうっすらと埃をかぶってきており、一番使う部屋ですらもカイル色をしっかり出してきている。





 用途としては、一つ目の魔力炉は貯蔵用の鉱石を加工するためのもの

 

 炉の本体は魔力を弾く効果を持つ貴重な魔石であるルナライトを使用しており、中に染み込ませるように魔力をゆっくり注ぎ、その特性を使って魔力を閉じ込めているらしい。

 そして、この魔力の充満した空間に元々魔力を蓄える性質のあるリチウス鉱石を長時間入れておくと、貯蓄できる量は変わらないながらも、長期間貯蓄できるようになるらしい。


 正直、普通の貴族が作る魔道具は、自身が魔力を潤沢に持つため貯蓄機能を持たないことがほとんどだ。

 そもそもリチウス鉱石自体使われることがほとんど無い。私も正直初めて見たくらいだ。

 少し脆いものの大量に取れることもあって極めて安価。でも使われない。

 

 その一番の理由はやはり蓄えられる時間で、普通のものであれば、恐らく三十分もせず全ての魔力が抜け出してしまう。だが、この一族の製法で作ったものは三日程度なら貯蔵しておけるようだ。


 




 もう一つ目の魔力炉は魔方陣用を刻む魔石と外部部品として使われる金属を加工するためのもの


 これも、炉の本体がルナライトを使用しているのだが、構造が異なっているようで打ち込むように魔力を勢いをつけて注ぎ、それが繰り返し反射することで強い熱を生み出させているらしい。

 しかも、この反射で生じた熱は反射が繰り返されるごとに徐々に温度が上がっていくため、それを排出する量を変えることで温度を調整できるようだった。


 この炉では外部を構成する金属部品は当然のこと、魔方陣を刻む媒体となるマグライト鉱石の加工もできるらしい。

 マグライト鉱石は、大量に取れる上、軽く、極めて硬質な優れた材料ではあるのだがそれを加工するのが難しい。

 長時間、かつ超高温で加熱すると柔らかくなって加工ができるようになるのだが、大量の木材と特注の窯が必要になり、鉄のが柔軟で加工しやすいということもあってほとんど使われることが無い。


 だが、この一族の製法だと少量の魔力だけでそれを加工できるようになり、それに対して同じくマグライトを用いた大きいペンのようなもので魔方陣を書き込めるらしい。

 マグライトは冷やすと元の硬さを取り戻すため、安価で丈夫な有形の魔方陣が出来上がるようだ。





 どちらも、まさに歴史的な発明に思えるのだが、今も世間で知られていないところを見ると彼らはそれを外に出すつもりは無かったのだろう。技術を独占したいというのは当然の話だ。

 

 カイルはそもそも、その価値すら理解していないかもしれないが。一族の宝をゴミ処理用として使っているくらいだし。

 まあ温度を高めた炉は魔道具をパーツ丸ごと燃やしてくれるので助かってはいるのだが。




 しかし、知れば知るほどこの一族は謎が深い。なぜ、これだけの設備を用意するほど戦闘用の魔法具に拘ってきたのだろうか。

 この元貴族の一族が持ち続けていた悲願というものが凄く知りたい。非常に知りたい。

 何か昔の日記とかないか掃除が終わったら探してみよう。


 




 そんなことを何度か繰り返していたら外が茜色に染まっていた。


 今日は掃除をやっているうちにみるみる効率が良くなってきたのを感じる。

 そして、それが凄く楽しい。

 

 私は知的好奇心も強いし、けっこー負けず嫌いだ。だからだろうか、何か新しいことをしたり、それを徐々に高めていくのが好きだった。

 

 貴族的な舞踏会に出ることも何度かあったが本番よりも上達する踊りの練習の方が楽しかったくらいだ。


 

 まだ台所付近は魔道具たちのベッドと化しているので触れないが片付いたら料理に手を出してみよう。恐らくそれも楽しいはずだ。


 

 とりあえず今は外食するしかないのでカイルに声を掛けるため地下室へ降りる。


 今日何度も彼の作業机の横を通ったが、正直時間がループしているんじゃないかと思うほど毎回同じ光景だった。

 むしろ、不思議な安心感すら感じてきたかもしれない。

 

 苦笑しつつ声をかける。


「カイル。ご飯に行きましょう」


「ん?もうそんな時間か?」


「ええ。貴方はトイレも地下室のを使ってるから全然外の様子に気づかないかもしれないけど」


「そうか。そう言われると確かに腹も減ったような気もする」


「それはそうでしょうね。貴方朝も昼も後で落ち着いたら行くからって言って私一人先に食べさせたのに結局家から一歩も出てないし」


「そうだったか?いや、そんな気もする。君が一人で行けるように案内したからいいかなと思った記憶がある」


 私の想像は甘かったようだ。私がいる間くらいはまともな食事をすると思っていたがそれは違ったらしい。この一歩も家を出ない男に定期的に人並の食事をさせようと思うとどうやら料理を覚えるのは急務らしい。


「ほら!さっさと行くわよ!」


 変人度を上方修正することにした。これまでよりも強い態度で臨む必要があるようだ。


「どうした?怒ってるのか?」


「怒ってないわ!呆れてるだけ」


「そうか?怒ってるように見えるが」


「怒ってないって言ってるでしょうが!!」


 いちいち癪に障る受け答えに口調が強くなる。


「あっ…ああ。わかった。君は怒っていない。それでいいのだろう?」


「……貴方本当に会話が下手よね」


「会話に下手とかあるのか?」


「…………貴方に言った私が間違ってたし気にしないで」


「そうか。よくわからんが君がそれでいいならそうしよう。」


 本当に手間のかかる男だ。カイルを連れて外に出ると一番星が顔を出していた。


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