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一章 : 聲
人混みの中、佇む少女。
その目は何処かを鋭く見つめていた。少しして視線を前へと戻し、歩き始める。
「S20301,167p94,Lha2479,vai:atlo-san」
何かを唱える。言葉の意味はわからない。
3秒後、殆どの通行人が立ち止まった。
スマホを見つめ、操作する人たち。
『大規模な通信障害が発生している。』
立ち止まった人たちを気にせず歩く少女。
狙いを定めていた人間に、彼女は歩みを進め、立ち止まる。
手にはナイフ。
一人の女性を、何の躊躇いもなく殺した。
「ごめんなさい」と感情のない、
プログラムされた言葉を放って。その女性は、笑った。
最期に、「またね。」と言い返して。
白い服に、返り血を浴びた少女。
悲鳴を上げる者やSNSに書き込む者、警察を呼ぶ者もいた。
しかし少女は、騒然とする周りなど気にせずに道路へと歩み、車と衝突。
少女は、消滅した。
その瞬間、人々は■を失った。