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5:寿命

 「早くいこ。」

待ち合わせの一時間前だというのに、彼はいた。

 たまたまそこを横切ったとき、もうすでにいた望がサヨ達を見つけ、声をかけたのだ。

 もちろん驚かないはずがない。

 まだ待ち合わせの時間ではもちろん無かったが、サヨは望に付き合うことにした。

 「まだ、時間じゃないの。」

「いいじゃん。」

サヨは、もう何回目になるかわからないため息をついた。

「わかったよ。でも、今日じゃなくてもいいんじゃない?」

「なに、急に。」

「いや、その、何となくよ。」

「俺、ジャマ?」

望が心配そうに上目遣いでサヨを見てきた。まるで女の子がおねだりするみたいに。それが様になってるから、すごい。

「違う、じゃなくて…その。」

「じゃ、いこ。」

「じゃないって言ってるでしょ!」

抵抗もむなしく、サヨは望に引きずられるような形で連れて行かれた。

「場所わかってないのに、どこに行くつもりなのよ!」

「ノゾム、場所はよ〜」

「ユキゲ!」

望に耳打ちしているユキゲを、思いっきり睨みつけた。

 望の足が止まり、顔が強ばっている。

「そこって、俺の…」

「そうよ。君のお母さんの病室。」

サヨは、困ったというため息を一つついた。

 そして、こっそり逃げようとしていたユキゲを捕まえた。

「よくやってくれたわね。」

サヨは小声でユキゲを怒鳴った。反省しているのかしていないのかわからない顔で、ユキゲは手を合わせて無言で謝った。

「母さん、死ぬの?」

「生きている限り、人は死ぬ。

 あなたのお母さんの寿命が、今だってこと。ただ、それだけよ。」

サヨは、ただ彼を励ましたかったのに、逆に傷つくような冷たいことを言ってしまった。サヨは、そのことをわかっていた。

 だけど、それしか言えることが無かった。

「私は、先に行ってるから。」

ユキゲを捕まえ、空に飛んでいった。

 うなだれている彼を置いて。


「置いてきてよかったのかよ。」

「いいの。来るか来ないかは、彼が決めることよ。」

「だけどよ。」

「ユキゲ、うるさい。」

サヨは隣を飛んでいるユキゲを、ハエか何かのように手の甲ではらう。

 しかし、いつものようにユキゲは飛んでいかず、軽々飛んで避け、サヨの目の前に飛んできた。

 目の前に現れたせいで、サヨは急停止しなくてはいけなくなった。

「なに?」

サヨは苛立たしそうな顔をして、ユキゲをにらむ。

「サヨ、まさか」

「ユキゲは来なくていいよ」

サヨは、ユキゲの横を通り過ぎた。ユキゲの髪が風で跳ね上がる。

「サヨ!」

ユキゲが振り返ったときには、サヨはどこにもいなかった。

「くそ。」

ユキゲは悪態をついて、大急ぎで病院に向かった。

 あいつ、またやる気だ。寿命を延ばす気だ!

 あれは禁忌で、危険なのに!

「ぜって~、やんじゃねぇぞ!」

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