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28/39

28:望も男

 一方、モール内のレディースファッション店。

試着室に入っては出てくるを来る返しているサヨ。それを片っ端から褒める望。次から次へと、サヨに似合いそうな服を渡してくるゆず。サヨが試着し終わった服を戻す役割の了介。

 さっき、ばったり会って、いつの間にかWデートになっていた。

 いや、今はサヨのファッションショーか。

 まあ、実際のところサヨがゆずの着せ替え人形になっていた。

 サヨはいい加減疲れていた。

「さよ、次はこれ」

「ゆずちゃん、もうこれでいいんじゃない?」

「ダメよ。やっぱりサヨは、カッコイイ系がいいわ。可愛い系はダメ」

そう言われて、サヨは自分の格好を見る。明るい色がメインの、コーディネート。

 ショートパンツははくことはよくあるけど、ミニスカートはいたことがなくて、なんか変な感じがする。

 そして、チラッと望を見た。

 いつもと違う自分は変じゃないだろうか?

 サヨは思わず、自分を隠そうと一歩下がった。

「そうかなぁ?どれも似合ってると思うけど?」

試着室に隠れて聞いたサヨは、一気に真っ赤になった。

 とくんっ、とくんっ、という心臓の音が、近くで聞こえる。

「のろけが出ました~」

溜息混じりに呟いた了介の頭をぽかりと叩いた。

 なにするんだとでも言いたそうな顔で、ゆずを見上げる。

 その手には、さっきまで選んできた服が握られていた。了介にそれを押しつける。

「へいへい、女王様の言うことを聞きますよ~」

なんて愚痴をこぼしながら、ゆずと一緒に違う服を探しに行った。

 二人っきりになり、サヨの心臓の音はもっと早く、もっと大きくなった。

「わ、私、一応、元の服に着替えるね」

そういって試着室のカーテンを閉めながら、服に手を掛ける。

 ゆずちゃんにも、望にも、あと了介君にも悪いけど、いつもの服が一番いい。

 まあ、着せ替え人形にされるのも楽しかったけど。

「え?ちょっと待ってよ。そんなすぐに着替えなくても」

「ちょっ!?」

サヨはいきなり開いたカーテンに、目を丸くした。

 それもそのはずだ。さよは、すぐに着替えるつもりだったものだから、上着は脱ぎ捨てていて、スカートに手を掛けていた。

 つまり、サヨの格好はブラに脱ぎかけのスカート、下着姿と言っても過言ではないのかもしれない。

 サヨは目を白黒させる。

 望も驚きのあまり、カーテンを開けたまま身動きがとれないでいた。

 幸運な事に、試着室の近くには人の行き来がない。

 と、望の後ろからヒューと口笛が聞こえてきた。

「若気の至りってか?」

おかしそうに声を震わせている了介が見えて、サヨはやっと状況が把握できて、その場にしゃがみ込む。脱いだ服で体を隠す。

 恥ずかしくて恥ずかしくて、体中が熱くなる。

「え、いや、その、ちが…。ごめん」

慌ててカーテンを閉めた望は、試着室に背を向けてしゃがみ込んだ。たてた膝に額を押しつけて、必死に顔を隠していた。顔だけじゃなくて、感情とか恥ずかしさとか、そう言ったもの全部全部隠すように、身を縮めた。

 その横に、おかしそうにしてる了介がしゃがむ。

「望くんも、男だったってわけねぇ」

「了介と一緒にされて可愛そうね。サヨ、大丈夫?」

うんっと小さく、か細い声がカーテン越しから聞こえた。

 その中で、サヨがどんな行動して、どんな顔をして、どんなことを思っているのか、わからないけど、恥ずかしくて死んじゃいそうなことぐらいは、女のゆずにはわかる。

「出てこられる?」

と、カーテンがシャッと開き、いつもの格好をしたサヨが出てきた。

 うつむいて、もじもじしてはチラリと望を見る。

 それに気がついた了介は望の肩を叩く。すると、何事かと顔を上げる望。

 視線が合うと、恥ずかしそうに逸らす。二人とも、目の下が真っ赤で、どこか可愛い。

 それが、しばらく続いていた。

 とんでもないことが起こったのに、なぜか微笑ましい。

 幸せに包まれた気がした。なんて、がらになくゆずは微笑んでいた。



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