9話 策2
「お疲れ様」
嘲笑うような声が聞こえた。負けたのか?
だが、まだ体は動きそうだ。ここから、うまく誘導して、隙をつきたい。自分の能力を活用するにはどうすればいいだろう。能力の詳細を思い出してみる。
そうだ。これを使えば......
とりあえず、相手の情報を探るところからだ。一旦、時間のずれを解除する。
「ど、どうして......?」
「あははは。綺麗に引っかかったのさ君たちは。なんの能力だと思ったの?」
「死体を動かす能力じゃないの?」
「ざんねーん。魂を生きていない物に憑依させる能力でしたー」
そう言って、ぺらぺらと話してくれた。
なるほど。あえて死体を動かしていたけれど、それがフェイクだったわけか。今思えば不可解な点はあった。どこからともなく包丁が現れたり、死体を動かすにしては、動きが乱雑で死体を動かすことが本当の能力だとは今となって考えてみれば、ありえない。
ただ、ここからが勝負だ。今度はこっちが誘導してやる。
「そっかぁ。はめられたかぁ。でも、あなたには比奈を殺すことはできない。今日の間は。だって、ぼくがすでに死んでるもの」
「は?」
「ほら、試しにぼくを打ってみなよ。操作してた銃でさ」
「いいだろう」
ずれを復活させ、元いた場所から一旦動く。
バン
銃声が鳴り響く。そして、相手が撃ってから10秒以内に、元の位置に戻り、ずれを解除した。こうすることで、相手目線では、ぼくはずっと倒れた状態でいたことになっているはずだ。そして、銃弾がぼくの体を透過したかのように見えたはずだ。
「え......?」
困惑してるようだ。
「ぼくは殺されたのさ。君の銃で。ついさっきね。ただ、ぼくの能力は、殺された日の間だけ幽霊として生き残る能力だから、今ここにまだいられている。だから、君は今日の分をすでに殺したことになるのさ。判定上は、まだ殺してないことになっているけど、今日が終わるときには1人殺したことになるよ」
もちろん、嘘だ。だけど、説得力はあるはずだ。
あえて、死ぬリスクを負ってまで、人を殺す必要はないはずだからだ。
「そっか。それなら仕方ないね」
よし。いけた。
バン
再び銃声が鳴る。
と、同時にぼくは意識が薄れていく。その時、
「一回で信じるわけないでしょ?」
と言う声が聞こえた。