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7話 過去

「凛......なんで......?」


 ぼくに刺されたことに彼はしばらくしてから気づいたみたいだ。正確には10秒後だけれど。


「なんでって言われても、クラスメイトだからって躊躇するとでも思った? 人も少ないんだから、見つけたら殺すでしょ。しかも、何? 流石に殺されないとでも思った?」


 返答はなかった。ぼくはプロフィール画面を開いて確認する。


 殺した数 3人


 そう書かれている。また、1人殺した。けれど、初日のような罪悪感はもうない。


 ぼくは久しぶりに過去を思い出した。




「お前、やべぇな」


「ガリガリ」


 今聞くと薄っぺらく、馬鹿みたいに小さな言葉だ。

ぼくは、ずっといじめられてきた。ぼくの住む町は人口の少ない小さな町だった。そのため、小学生の時から、クラスの顔ぶれは変わらない。そのせいで、ずっとずっといじめられ続けた。何年間も。ぶっちゃけいじめの理由なんてないに等しい。ほんと、なんでも良いのだ。


 先生は、


「いじめをするやつは許さない」


 と言う。いじめられて、その経験をしてから言えよ。今となって思う。


 今の人は、昔の人は生贄を捧げててバカだ、という。


 それでは質問です。この中で1番のバカは誰でしょうか。

もちろん、今の人だ。同じことをしていることに気づかずにいるからだ。

1人の生贄を決め、その1人を敵に仕立て上げれば、否応無しに他は同じ集団となる。

その生贄がぼくだった。ただ、それだけだった。


 そんな地獄を見ること10年、高校2年生になって、初めて救われた。


 誰にかって? 決まってるでしょう? 比奈に助けてもらえた。今でも、その時のことは切り取られた映画のワンシーンさながらに思い出すことができる。

比奈は本をずっと読んでるだけの人に見えた。高校2年生になるまで一度も同じクラスになったことがなかった。

正直、誰とも関わっているのを見たことがなく、社会不適合者か、と不適合者ながら思ったものだ。


 当たり前のようにいじめられていたあの日、


「やい、ガリガリ。もっと食えよ」


 そう言って、あいつ、いや、あいつらは、ぼくの苦手なマヨネーズを口に直接流し込んできた。


「やめて」


 やめてくれるはずがない。


「あなたたち、うるさいんだけど」


 その時初めて、声を聞いた。

あいつらも驚いている様子だった。


「ガリガリとか人のこと言う前に、体型どうにかしといたら? デブ」


「あ?」


「ごめんなさいね。言い方を変えた方が良かったかしらね。やい、デブ。もっと痩せろよ。こうかしら」


 その言い方は、大人っぽい言い方にも関わらず、その顔には、少しだけ、いたずらに成功した子供のように見て取れる部分があった。

あいつらはバカだから、言い返すスキルもなく、静かにどこかに去っていった。


「ありがとう」


「いえいえ」


「なんで助けてくれたの?」


「気まぐれかな」


 それから、ぼくは、比奈とだけは話せるようになった。また、比奈はぼく以外の人とそれ以降も話しているのをみたことはなかった。


 唯一、比奈だけは信じられるようになったのもその時だ。その時初めて、まともな人付き合いというものをするようになった。

だから、今更クラスメイトに慈悲なんてない。今になって、『なんで』と言われても、明白なのだから、自分のバカな頭で考えろっての。


 ただ、流石に比奈にはショッキングだったかもしれない。一応知り合いが殺されたのだから。

ちらっと比奈を見てみる。しかし別にどうってことなさそうだった。いや、むしろ喜んでいる?


 流石に違うか。


 ガサッ


 嫌な感じがする。


「避けて!」


 比奈の声だ。とっさに前に動く。

教えてくれていなければ間違いなくやられていた。誰が攻撃してきたのか、振り返ってみてぼくは困惑する。

ぼくを襲ってきたのはさっきのクラスメイトだった。

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