6話 クラスメイト
残りが3億人。1日経てば、最低でも人口は半分になる。そう考えると、多くとも30日ほどで、人間はこの世に1人になる。
つまり、比奈といられるのは最長でも1ヶ月。あと30回も人を殺せば、ぼくもほかの人間と同じように死んでしまうのだ。
そんなことを考えていると、再び、気が抜ける音が鳴る。
「イベント、終わったみたいだね」
比奈がぼくに話しかけてくる。
「そういえばそうだね。すばらしい報酬って何だろ」
ピコン
もう聞くことはないと思っていた音で、いや、そこまでたくさん聞いたわけではないが。通知が来た。
プロフィール画面を見ると、このように書かれている。
イベントクリアおめでとう!
それじゃあ、すばらしい報酬あげるね!
能力の細かな説明をプレゼント!
周りからは10秒前のあなたが見える!
現在の時間の方を周りの人に見せることもできる!
究極奥義もある!
ただし、能力がバレたら、その人には、現在時間のあなたが見られてしまう!
頑張ってね!
なんだこれ。
確かに、すごく嬉しい情報だが、ドッと疲れた気分だ。説明細かいようで、雑だし。『!』がうるさいし。
しかし、一つ疑問が解消された。比奈が現在のぼくを見られるのは、たまたまぼくのプロフィール画面を見たからと思われる。おそらく、初めてプロフィール画面を開いたときに、見えてしまったのだろう。気をつけないとな......ずれている自分が遅れていることを考慮して動かないと、いつ能力がバレてしまうか分からない。
「なんだったの? 報酬って」
そうか、比奈は宝物だったから、参加者ではないことになっているのか。なんか、不公平だ。声の主に会えたら、抗議してやろう。
「能力の説明書だった。なーんかもっとすごいものかと思ってたよ。お金とかさ」
あえて、気分を少しでもあげるためにおどけてみた。お金なんて必要ない。みんな等しく売り物は命だけなのだから。
「そうね」
適当に返された......
結構メンタルが削られるので、逆に気分が下がる。
気を取り直して、今日からは殺す人を2人で探しに行くことを決める。そこら辺の人はだいたい死んでるだろうし。
家から出て、とりあえず周辺を探索する。見つかるのは黒い塊のみ。酷い匂いだ。それもそうか。70人中67人は死んでるのだから。しかも、これからは人を殺した人、つまり、自分のために人を躊躇わず、もしくは、殺す勇気を出せた者しか存在しないのだから。
ガサッ
と音がした方向から、続いて声が聞こえる。
「凛......か......」
声の正体はぼくのクラスメイトだ。近くにねじれてない死体があった。人を殺した罪悪感で怯えているのだろう。見たところ、正当防衛のようだ。死体が持っているナイフが死体に刺さっている。
おそらく、クラスメイトは襲われて、咄嗟に相手のナイフを相手の手を持って、返り討ちにしたのだろう。
グサッ
これで3人目。
さよなら、クラスメイト。