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53話 戦闘終了

 背中から黒赤色の血が飛び、後ろの比奈にかかる。

ぼくに刺さっているのは比奈のナイフ。


「凛、ごめん。でも、おかげで戦えそう」


 比奈がどういう意図で言っているのかは分からないが、信じてみよう。


「今治すから」


 比奈がさっきついた傷口に手を当て、塞ぐ。


 ぼくは戸惑い顔の真奈を見続けたまま比奈の隣まで下がり、時間のずれを復活させる。


「比奈、毒みたいな微生物って作れる?」


「作れるけど、血管に直接入れないとダメだから、あのツルツルみたいな能力には厳しいかも」


「そこはなんとかするよ」


「分かった」


 一旦時間のずれを解除し、今の会話を真奈的に無かったことにする。


 そろそろ、さっきの会話分の時間も経ったし時間のずれを復活させよう。


 真奈も動き始めるが、ぼくも比奈もいない方に向かって走り出す。何をするのかと思えば、窓ガラスを割らずにすり抜け外に出て行ってしまった。


 比奈が右手から、微生物を地面にカーテンをかけるようにうっすら広げる。もしかして、床を警戒している?

たしかに真奈の能力ならそれができる。


 じゃあ、比奈の近くに出てくるはず。その時、後ろに気配が立ち現れる。予想外だった。何でぼくの居場所分かってるんだろ。

でも後ろなら、さっき用意した紐付きナイフがそろそろ飛んでくるはず。左足に結び付けておいたのだ。

きっと効果はあんまりないけど、一瞬くらい気が引けるはずだ。


 その一瞬で比奈がきっとどうにかしてくれる。


 ぼくのナイフが弾かれた音がして、その直後に真奈よりも大きな気配が立ち現れる。床を見ると、さっきの緑の薄膜が後ろに向かって流れていく。


 振り向くと、大きな蛹のように真奈がなっている。


「凛、これだけじゃ足りない。能力をどうにかしない限り殺せそうにない」


 比奈がそう言うのだから本当にそうなのだと思う。


「分かった......なのだ」


 またリーザが出てしまった。このままリーザの能力を使えば真奈の能力を打ち消せそうだ。


 リーザは自分の血を使っていたようだが、それは魔法陣があったからで、ぼくはその書き方が分からない。


 詠唱してみるが、集まってくる黒い霧は大した量じゃない。蛹の中から漏れてくるものの方が多い。蛹が見えなくなる。


 いや、いくらなんでも多くないだろうか。比奈よりも多いのは普通に考えて異常だ。


 黒い霧が真奈から比奈の方に伸びていく。つまり、そこは抵抗が小さくなっているということ。でもきっとそれだけじゃない。


 蛹から真奈が出てくる。これは、比奈に高速で向かってしまう。そうだ。抵抗が小さくなっているところにナイフを向けてやればいいのだ。


 ぼくは急いで移動し、真奈と比奈の間に割り込み、左手でナイフを真奈に向けて持つ。


 真奈がいつの間にか見えなくなっている。


 左手が宙を舞う。


 誰の?


 ぼくの。


 ぼくの?


 自分の理解を超える事実に驚く。そこにぼくの左手を飛ばした真奈の姿が見える。ぼくにぶつかったからだろう。


「凛、ごめんね。でも、仕方ないよね」


 真奈がぼくのことを心配する余裕を見せつつ、こっちを攻撃する素振りは見せてこない。


 そうだ。これで何とかできる。


「死せるものよ、」


 ぼくが詠唱しかけると真奈の攻撃の意思がこっちに向く。

でも、これを詠唱し切ることができればきっとなんとかなる。


目の前に微生物の壁ができる。それにすぐに穴が開く。


「有うべき力を顕現し、」


 真奈の攻撃が比奈に移り、比奈から血が流れる。ぼくにガードを使ったせいだ。


「終わらせて」


 願いを込めて詠唱を完了する。ぼくの左手に向かってどこからともなく黒い霧が集まってくる。ファミレスに誰にも世話されずに咲いていた花や、転がっていた死体が全部黒い霧に変わっている。


 半径2メートルくらいまで大きくまとまった霧が真奈に向かって、体を覆いつくす。


 黒い霧が消える。真奈に外傷は見当たらない。でも、比奈がボロボロだ。真奈は止まっている。


「え? 嘘。能力が使えないんだけど」


 リーザの能力で、真奈の能力を封じたのだ。吹き飛んだ左手を核として黒い霧を無理やり集めた。


「比奈、後はお願い」


 比奈が赤いナイフを取り出す。


「真奈、こういうわけだから、ごめんね」


 涙が流れそうになるのをこらえる。たった3日の付き合いのはずなのにずっと前から知っていたような、そんな気がしたのは比奈に似ているからかもしれない。でも、流れそうになったのは、真奈に向けてだと思う。


「」


 比奈が真奈にナイフを突き刺す。


 最後に真奈が何かを言おうとしていたみたいだけど聞こえなかった。

右手で両目を覆い、少し泣いた。腕は汗をぬぐった後みたいに濡れる。


 比奈を改めて見ると、腕にナイフが刺さった傷は治っていないし、不自然な抉れ方をしている箇所が二つある。何かに吸い込まれてしまったかのように肉が消えている。

真奈が黒い霧で覆われていた時、真奈は究極奥義的なものを発動していたのかもしれない。そうじゃないと左手が簡単に吹き飛ぶはずがない。左手のことを考えると急に痛みが襲って......こない。


 確かに左手はないままなのだが、傷口がふさがっている。


「ありがとう、なのだ」


 ぼくの中にリーザの精神がさらに混ざってきているらしい。リーザの能力があったおかげで何とかなったから、まぁそれくらいは許容しよう。


 そういえば、もうすぐ12時か。血がこびりついて、ほとんどの部分は見えないが12時のあたりだけが見えるようになっている。


 鐘が鳴って、12時を知らせる。


 パンパカパーン


 と例の音が鳴る。


 頭の中でマスターの声が聞こえてくる。


 おめでとう! 君はこの5日間のイベントで見事に1位に輝いたよ!

集めたポイントは破格の4913ポイント! 不吉だけどとりあえず報酬をあげるね!


 君への報酬は......



 不死の能力だよ。

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