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51話 リーザ


「じゃあ、遠慮しないよ」


 真奈は吹っ切れたのか不敵な笑みを浮かべる。


「比奈、一緒に戦うよ」


「え、うん......」


 比奈はそう言いつつも戦意が全くないように見える。


 真奈がぼくにじわじわと近づいてくる。これは、きっと緩急をつけて、一気に来るつもりなのだろう。それなら、こっちから近づいてやればいい。真奈に近づき始めようとしたところでぼくは時間のずれを復活させる。


 真奈は予想に反してまだゆっくりと動いている。ぼくがまだ動いてないように見えてるから、様子を見計らっているのだろうか。ぼくは今日、殺せないから、足のあたりを攻撃して、比奈が殺しやすいようにしないと。


 ぼくは前傾姿勢になりながら、真奈の足に向かってナイフを全力で振る。


 真奈のナイフが触れたと思ったら、ナイフが皮膚の上をなぞるように滑っていく。真奈の足には軽い切り傷だけがつく。すると、ぼくをめがけて、真奈がナイフを左斜め上から右斜め下に向かって振る。このままだと切られる。


 ぼくはさらに身を低くして、というか、倒れこむようにして、ナイフを上に見るようにして、ギリギリ避ける。

そして、倒れないように、右手を一瞬床につけて、前方向の速度を鉛直向きに変更する。さらに、体を起こしつつさっき真奈に渡してもらった糸のついたナイフを真奈の足に巻きつくように投げる。


 きっと、真奈にナイフで致命傷は与えられない。抵抗を下げられるだけ下げたら、刃は深く入り込む前にさっきみたいに滑っていってしまう。


 となったら、巻きつけるなり、毒を入れるなり、火をつけるなり、滑っても殺せるような攻撃方法を使うしかない。


 真奈の足に巻きつけた紐を引っ張って、無理矢理バランスを崩させる。


 さて、バランスを崩させてからどうしようか。ぼくの能力に物理攻撃以外の攻撃手段はない。


 比奈なら、真奈にトドメを刺せる。しかし、比奈はぼくと真奈の方を見ているだけで戦いに参加するつもりが無さそうだ。


 比奈はまだ今日誰も殺してないのに、どうして動かないのだろう。いつもの比奈なら戦うべきなことなんて当然だと示すようにすぐに殺しに向かうのに。


 あれ?

いつの間にかさっきまで前にいたはずの真奈がいない。ナイフの紐が切られている。


 後ろを見ると、比奈の方に向かって行っている。なんで気づかなかった?


 真奈の方が速い。比奈は、近くにあるオリーブオイルの瓶を右手に持つ。それを何かするのかと思ったが、比奈は真奈との間に、うっすら緑色の霧を出す。きっと、微生物を散らしているのだろうけど、知らない人からしたら毒ガスに見えると思う。


 真奈は一旦霧の手前で止まる。


 今のうちに何かしら対抗手段を探そう。そう思ったので、厨房の方に向かうことにする。

毒ガスに見えてるだろうから、ぼくが突っ切ったらだめだし、真奈に途中で狙われてもだめだから、大回りする。


 真奈の方向を見続けながら音を極力立てないように動き始める。というか、そもそも時間のずれがあるからそこまで警戒しなくてもいいのか。


 いつの間にか真奈との距離が近くなっている。でも、真奈は動いていない。

なぜ? 近づいた記憶がない。


 もう一度厨房に向かう。その途中で何かを蹴った。水風船を蹴ったような感触。

足元を見ると、さっきまで戦っていた男である。人間がそんな水っぽくなるものだろうか。


 でも、ぼくが開けた心臓の穴からはもう血も出ていない。

触ってみると、お腹の部分が水っぽい。

ナイフでそこを刺してみると、粘度の高い黒い血がゆっくり出てくる。ぼくの頭が急に痛む。


 一瞬、オリーブ畑の光景が浮かび、その後、再び、黒い血が流れている男の死体が見える。どす黒いもやもやが、男の死体全てを覆っている。真奈のほうを見ると、真奈が見えなくなるほど、同じように黒くなっている。


 もしかして、リーザからの侵食が激しくなってる?


 小さく言葉を発しようとする。


「......なのだ」


 間違いない。けれど、ちょうどいい。右手に力を集中させ、


「死せる者よ。我が贄となりて、有うべき力を顕現し、燃やせ」


 小さくつぶやくと、男のところで淀んでいた黒い霧が少し、右手の上に集まってきて、火が発生する。

なるほど、これを使えば、真奈をどうにかできるかもしれない。


 じゃあ、ここから反撃だ。行くよ、リーザ。

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