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49話 仲直り


「比奈、予定通りだね」


 ぼくは比奈の方を見て話す。

少し下を見ると驚き顔で真奈がこちらを見ている。


 ぼくは死んだと思われてただろうから、その反応は当然だと思う。一旦時間のずれを解除する。


 でも、まず比奈とのことを優先しよう。真奈に説明するのはその後。


「ねぇ、比奈、ぼくを殺してよ」


 このゲームに比奈が参加させられた時に言った事を再び言う。

そして付け加える。


「最後の2人になった時にね」


「了解」


 落ち着いている風に比奈は話しているが、顔が珍しく綻んでいる。とてもかわいい。


 ぼくの視線に気づいたのか、少し頬を染めて、


「あの、そっちの条件聞いてあげるから、私のも聞いて欲しいんだけど......」


「いいよ〜」


 比奈と話していると落ち着く。


「私を守って欲しい」


 これもずっと昔に聞いた言葉。といっても1週間と少し前だけれど。


「もちろん」


 今回の言葉をぼくは疑うつもりはない。


 比奈と話すようになるまで、ぼくは人を疑い続けていた。いや、今でも疑い続けている。

ただ、比奈の発言だけは疑っても暫定的に真実だとして受け止めてきている。他の人の言葉は証拠がない限り嘘だと思っている。


 でも、今回の言葉を疑うのは感覚的で上手くは言い表せないけど、ナンセンスな気がする。


 比奈が近づいてきて、ぼくにぴったりとくっついてくる。

って、え......!?


「えっと、え、いや、え、あの、え、その......」


 比奈がこちらの顔を見てきて、


「約束だから......ね?」


 と柔らかな声で言う。


 このまま昇天してしまいそうなくらい、かわいい。語彙力がもっとあれば、この感情で一句読んだりできるかもしれない。


「あのー、お二人さん。私に状況をお教えください」


 真奈がもうお腹いっぱいだと言いたげで、不服そうだ。


「ごめんごめん」


「つまりね、要約すると、比奈に殺されたフリをして、隙をついて倒したってこと」


 口で説明するのはすっごく面倒だったので、本当に雑にしてしまった。


 もう一つ理由はある。


 でも、とりあえず状況整理から。


 比奈が殺人鬼だって分かった時、今までの行動が全部繋がって、ある意味納得がいった。

そこで比奈をキツイ言葉で責めた。嘘を織り交ぜながら。

だって、比奈が誰かに襲われてた時、そもそも殺人鬼ならその誰かは簡単に殺せるはずなのにわざわざ危なそうに演技なんてする必要がない。


 それがぼくを求めてしたことだったらいいなとか、思ってみたりはしたけど。


 ぼくは比奈を責めない。というか、責める理由がない。そもそも、ぼくが比奈に攻撃されても、ぼくはそれを受け入れてしまう。


 そのことを比奈も分かっているような気がその時はしたから、責めることで分かってもらおうとした。それに、全部完全に嘘、とか普通に使わない言葉だし。



 けど、比奈がナイフをぼくに向けてきた時、少しだけ、死にたくない、って思ったんだよね......



 そして、比奈が赤いナイフをぼくの胸に振り下ろした時、赤いナイフの刃の部分が消えたのが見えた。


 というわけで死んだフリをして、隙を狙っていたら、比奈が男と嘘の約束をしていた。


 真奈を殺す手助けをする代わりに、今日は殺すのを諦めて欲しいという話だった。きっと、男はその後で比奈を拘束でもするつもりだったのだろうけど。


 このファミレスにはこんなに死体があるのに、一つも黒い塊がなかったから、男が何人かを無理矢理拘束して、そこで誰かを殺させてから殺していたのだろう。ポイントを効率よく稼げるし。


 その後、分身に動けなくされて、比奈が真奈をダシにして分身を消してくれたタイミングで、時間のずれの能力で背後から心臓を貫通させたのだが、まだ何かある気がしてならない。


「え、いや、急に黙ってどうしたのさ? それに、説明雑いし」


 真奈に流石につっこまれた。


「色んなことがありすぎて整理して話せないというかなんというか、そんな感じだよ〜」


「それならいいけど」


「そういえば、真奈の名字教えて欲しい」


「えとね、海月真奈だよ」


 道理で誤解した訳だ。左見月が珍しい名字だったから、昨日名前を聞いた時は比奈だと確信してしまっていた。


「さっきから凛にずっとくっついてるのはどういうこと? もうお腹いっぱいなんだけど」


 やっぱりお腹いっぱいだったらしい。ぼく自身もすごく恥ずかしい。その気持ちとともにずっとこのままでもいいような気もしてはいるけど。


「比奈、もう体温が2000度くらいになりそうだから一旦離れて欲しいかな。嬉しいんだけどね! もっかい言うけど、すっごく嬉しいんだけどね!」


「わかった」


 少し拗ねるように比奈が離れる。それと同時に比奈の顔が普段の少し冷たいオーラを放っている状態に戻り、


「で、真奈はいつまでいい子ちゃんしてるの?」


 さっきまでとは打って変わって喉に刺さるような声だ。


 真奈は口をピクリとも動かそうとしない。


 ぼくは時間のずれを復活させる。その直後、真奈が何かを投げる素振りをする。すると、ぼくの後ろで何かが刺さり、血が飛び散る音がした。


 そして、真奈が言う。


「じゃあ、いい子ちゃんやめるね。だから、比奈を殺す」

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