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34話 黒い塊

 意識が不意に戻ってきた。周りの変化が全く起こってないことからそこまでの時間が経っていないようだ。


 正直、驚いているところが強い。ぼくの中では3時間くらい経っていてもおかしくないくらいの感じなのだから。最も、3時間経っていたらぼくはここには生きていないのだが。


 ぼくは地獄を見た。呪いのような、人間の狂気のその先を。

ぼくは1人の男の記憶のようなものをそのままに体験したのだと思う。





「ねぇ、リーザ、明日は何して遊ぼっか?」


 オリーブ畑だろうか、そこで少し息を切らしながら問いかける。


「あたいはね、かくれんぼがしたいのだ!」


「そうしよう! 今日は遅いから、また明日!」


「明日なのだ!」


 ぼく、いや、この記憶の持ち主は手を振ってリーザを見送る。

リーザとは、ついさっきまで......


「明日は、9月11日。リーザと初めて会った日からちょうど一年だな」


 そう独り言を呟きながら家に帰る。


ゴーンゴーンゴーンゴーン......


 家に着くと同時に家に古くから置いてある時計が16回鐘を鳴らす。


「これから、この星で選抜を開始する。君には能力を一つ与えよう。では、ルールを説明しよう」


 昔聞いた言葉だ。昔というほど昔ではないのだが。そこから簡単な説明があって、ここまではぼくと一緒だったのだが、この先が違った。


「君を今から、日本に転送する」


 その言葉が終わると同時に、鳴っていた時計も、白塗りの壁も、何もかもが輝き出し、白い世界に閉じ込められた。


 気づくとぼくが見たことのある、ついさっきまで見ていた、ただ白いだけの部屋にいた。


「リーザ......?」


「あ、サーフもいたんだ」


 なるほど、サーフと言うのか。


「リ、リーザ。さ、さっきの声聞いたよね......?」


「聞いたよ〜」


 リーザの様子がおかしい。そのことはリーザをほとんど知らないぼくでも明らかである。


「他にも、村の人たちが集まってる......」


 サーフいわく、知り合いばかりがこの部屋に転送されているらしい。


「え......?」


 サーフが周りを見渡して、不意に動きを止める。サーフだけでなく、部屋にいるほぼ全ての人がフリーズした。

リーザのすぐ隣には首が直角に折れ曲がった死体が倒れていた。

今まで見てきた死体の中でもこんなに惨たらしく殺されていたのは見たことがない。


「大丈夫だよ。サーフは殺さないから......さ」


 リーザの真っ白な肌も、輝くような金髪も、そして、しなやかで柔らかそうな腕もが輝きを失っていた。しかし、どこかに殺すことを怖がっている様子が何とはなしに感じられた。


「はぁ......はぁ......」


 サーフの呼吸が浅くなった。


「そっか。じゃあ、ぼくもリーザは殺さない」


 サーフは右手から水玉を作り出して、近くにいた人に向かって飛ばす。

飛ばした水玉は人に当たると、ジューと肉を焼くかのような音がして、当たった人の皮膚が赤くただれ、血のようにベチャリと床に落ちる。

ただれた皮膚の先には骨が見えていた。


 躊躇なくサーフも人を殺した。


「リーザ。ぼくも殺したよ」


「そう。それでいいの」


 気づくと、周りでも殺し合いが起きていた。殺し合いというより、殺戮ショーに近いかもしれない。平然と殺す人、殺される人がはっきりとしていた。部屋の隅には小さくうずくまっている少年がいた。10歳くらいだろうか。


「みんなどうしちゃったんだろ......オリーブの畑の近くで一緒にずっと過ごし......」


 その少年の言葉が最後まで発せられることはなく、ぼくは見てしまった。少年の左手首から黒い血がどくどくとあふれ出して、少年を覆いつくしていくのを。体が完全に黒く覆いつくされた後、


ベギッ

グニッ

グシャ


 異形でも生まれるような音がして、黒い塊が出来上がった。


 サーフは突然の吐き気に襲われたようで、激しく嘔吐する。それだけで済めばよかったのだが、


「あ、サーフ辛そう。大丈夫?」


 リーザがそう言いながらサーフに近づいてきた。


「死せる者よ。我が贄となりて、有うべき力を顕現し、奪い去れ!」


 プツンとそこから先の情景を見ることはできなかった。





 これがぼくの見た地獄。大きな謎の一端だろう。


 前を見ると、そこにいたのはリーザだ。先ほどの記憶と合わせると間違いない。いつの間にここまで来たのだろうか。ただ、好都合であることは確かだ。視認できない敵ほど怖いものはない。


「真奈、あいつは本気でいかれてる。分散するわけにはいかない」


 そう言いながらぼくは少しある抵抗を無視して、真奈の手を取った。


「え? どうしたの?」


「とにかく、この手をしばらく離さないで。今、真奈が必要だから」


 誤解を生みそうなことを言ってしまったけど、それは後で言い訳をしよう。


「そう。あなたたちにはそんな余裕があったのね」


「リーザ、今から君をぶっ潰してやるよ」


 そのとき、ぼくに謎の使命感があったのかもしれない。しかし、その正体が何なのかはまだぼくに知る由はない。

次話から、久しぶりの戦闘シーンに......!

今後ともよろしくお願いいたします!

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