33話 オリーブ
地中には謎な光景が広がっていた。どこまでも穴が続いていて、少し奥の方にはぼうっと松明が光っている様子が見える。
「何なんだ? ここは」
地中なのに松明が灯っていて、穴が奥の方まで続いている。
何かあるのは間違いなさそうだ。
松明の方に向かってぼくは歩く。
松明のところに着いたが、また奥に新たな松明があった。松明を一つ持ってさらに奥に向かう。
穴は少しずつ曲がっていて、しばらくの間真っ直ぐ進んでいたが、ずっと同じ景色が広がっている。
「いつまで続くんだ......?」
自然と独り言が漏れるくらい長い。時間がないのに......
ぼくの方向感覚が間違っていなければ、もう360度は周っている気がする。少しずつ半径が大きくなっているのか?
もし、そうなら、この土の壁を蹴っ飛ばせば一周分外に行けるのだろうか。
つま先で蹴ると痛いので、壁に背中を向けて、ヒールキックの要領で蹴り飛ばす。
踵が壁に埋まる。一度抜いてもう一度蹴るとボロボロと土が転がり、新しい道が現れた。
やはり、あったか。それなら、こっち側を蹴っ飛ばせば、
そう思い、もう一方の壁を蹴るとやはり壁が崩れ、そちらの方を見てみると、左側に土が積もっていた。ぼくが落ちてきた場所だ。
ここからどう出るかな......
とりあえず渦巻きの外側に向かって行くことにした。外向きに壁を蹴るとまた道があった。
さらに奥に!
そう思って新たな壁を蹴り飛ばした。
ガチン
「いたたたたた」
土を蹴っただけでは鳴りえない音がした。土を手でガサガサと除けてみると、鈍い色で光沢を放つ鉄の壁があった。この先にきっと何かあるのだろうが、ぼくの能力では突破できそうにない。
突然上方からズズズズという音がして、ヒトが降ってきた。
「ひ、比奈?」
しばらくして返事が来る。
「だから、真奈だってば。比奈っていったい誰のことよ」
あ、真奈か。なんとなく残念。
と、いったん能力を解除しておこう。
「ここまでどうやって?」
「土から受ける抵抗力を減らしたら、ずぶずぶって入ってこれたの。位置はすでに調べてたから」
確かに、土からの抵抗がなければ沈んでくるかもしれないが、それは起こりうるのだろうか。とそれは置いておくとして、それならこの壁も通ることができそうだ。上を見るとぽっかりと穴が開いていて、穴の下には土がたまっている。
「真奈、ここ通れる?」
鉄壁を右手でコンコンとしながら問いかける。
「多分いけるよ。やってみるね」
真奈は壁から少し距離を開けて、壁に向かって走り出す。そして、壁に当たると同時に鉄壁はぐにゃっと曲がり、真ん中が断裂した。
「いけたよ」
「ありがとう」
壁を越えた先にはまた不思議な世界が広がっていた。壁一面が真っ白で、ほとんど何もなかった。ただあったのは赤く染まった死体と黒い塊だけだった。
なんとなく上を向いていると白しかないためか目が痛いので、死体とかが転がっている床を見ることにした。
ペタリペタリ
奥の方から足音が響いてくる。
「あら、ここまで来た人は初めてね。おめでとう」
声も聞こえてきた。しかし、本体は見当たらない。
密かにぼくは能力を元に戻す。
ペタリペタリ
足音は徐々に大きくなる。
真っ白な部屋のなかぼくはまっすぐ前に走った。
走り出して数秒して、何かにぶつかって後ろ向きに倒れた。
すぐに前を見ると、そこには死体が一体うつ伏せに倒れていた。
「死せる者よ。我が贄となりて、有うべき力を顕現し、消え去れ!」
中二病みたいな発言が部屋で反響して聞こえてくると同時に死体が赤く光り出し、破裂した。
血が辺りに飛び散り、ぼくにもベッタリかかる。
殺せ......殺せ......
壊せ......壊せ......
頭の中でこの2つの言葉がずっと流れ込んでくる。
それと共に何か別の感情が直接流れ込んでくるような......
そこでぼくの意識は途絶えた。