31話 真奈
ぼくは真奈と行動を共にすることにした。なぜか、不思議なくらい真奈には惹かれるのだ。
一旦いつも通り状況を整理しよう。
ぼくはプロフィール画面を確認する。
ポイント 70
なかなかにポイントは溜まっているほうじゃないだろうか。
生存者数 300万
結構減った気がするが、あと何日で人類は滅びるのだろう。単純計算だとあと21日だが、きっとあと10日もしないうちに人類は終わってしまうのだろう。
「ねぇ、真奈、なんで協力してくれるの?」
何か目的があるはずだ。これの答え次第でどう動くかが変わる。
「1人、殺したいやつがいるの。1人じゃ厳しいから誰かと協力して殺そうかなと思って。今日あなたが殺すのを手伝うから、明日はあなたが手伝う。それが終わったらまた敵同士。そだ、あなたの名前教えてよ」
「凛だ」
「凛ね」
今のところ辻褄は合っているし、強いやつを最後まで放置したら生き残れなくなるかもしれないというのは確かだ。合理的だ。
「能力聞いといてもいい?」
真奈が問いかける。どうしよう。教えてもいいものなのだろうか。
いや、やめた方がいいだろう。今後のことも考えればまだ言うべきではない。
「ごめん。ちょっと今はまだ言えないかな......」
「そっか。私は、抵抗を減らす能力だよ」
なんか活用しやすそうな能力だ。工夫次第では相当強い。
「ほらほら考え込んでないで、早く探しにいかないと。まだ死んでもらったら困るもん」
「よし、さっさと探しに行こうか」
気づいたらぼくは笑っていた。なぜだか幸せだった。
10分ほど歩いて都会の公園に着いた。都会の割には大きな公園で、噴水だの銅像だのがあり、木々も地面の芝も綺麗に整備されている。
ん? 綺麗に整備されてる?
なんで綺麗なんだ? こんな広い公園、すでに血だらけになってていいはずなのに、血の一滴も見当たらず、木々も丁寧にカットされている。
何か強大な敵がいる気がした。
「誰か、いるよね」
真奈が話しかけてくる。
「いるな。能力が分かるといいんだけどな」
「ちょっと待ってて」
真奈は目をつぶって、祈るように手を体の前で合わせた。
3秒ほどして、真奈が再び目を開ける。少しだけ先程より髪の毛がフワリとしている。
「この近辺にはまだいないっぽいよ」
真奈が言うのだから、きっとそうなのだろう。
一回、ボウガンを飛ばしてみるか。木で隠れていられそうな方向に1本だけ撃ってみる。
あれ? 何の音もしない? まさかそんなはずは......
もう一度ボウガンで撃ってみる。やはり、音がしない。
何かがある気配しかしない。
「真奈、あっちの方行ってみよう」
「分かった」
立ち入り禁止の看板が立てられているのが目に入った。
なんとなく怪しい。ボウガンを立ち入り禁止のところに向かって放つと、突如として矢が消滅した。
「もっかい探してみるね」
そう言って真奈は再び祈るような姿勢になった。
「いた。立ち入り禁止のさらに奥15メートルのところにいる!」
立ち入り禁止は避けるか......? いや、このまま突っ切ったほうがよさそうだな。
ぼくは走り出す。走り出してすぐに、ぼくは違和感を覚えた。風を切る感覚がないのだ。聞こえるのはただ芝を踏むぼくの足音だけ。
見えた。
少し奥のほうに人影が薄っすらと......あれ? 消えた。
右を見てみるとこれまた少し奥に人影が。右に進路を変更する。しかし、人影に近づくとまた消えた。
それからも右に左に後ろにと人影は現れ続ける。しかし、一度も正体をはっきりと見ることはできていない。
「凛、やっと追いついた」
少し息を切らした様子の真奈が近づいてきた。
「あそこにまた人影がいるんだけどなかなか捕まえられなくて......」
「あ、そだ。いいこと思いついたっ!」
「何を思いついたんだ?」
真奈がどこからともなくスタンガンを取り出した。
「凛、今から5秒後に一回跳んでくれる?」
「分かった」
「5、4、3、2、1......」
ぼくはできるだけ高く跳んだ。
「0!」
ズガーン
その瞬間雷鳴が鳴り響いたかのような音が鳴った。
「あそこに見えてるのは偽物みたい」
「なんで分かるの?」
「今、一瞬地面の電気抵抗を下げて、地面にスタンガンを当てたの。でも、人影はまだあそこに立っている。そんなわけないもの」
真奈は自信に満ち溢れた顔でそう話してくれる。
その顔はぼくを。きっと大丈夫なのだと思わせてくれる。
よし。能力を話そう。
「ねぇ、真奈?」
「ん? どうしたの?」
いや、言ってもいいものなのだろうか。いいや。さっき決めたばかりじゃないか。話そう。
「ぼくの能力は......」
少しうつむきがちになる。
その時急に体中にぬくもりを感じる。
「え? 真奈......?」
気づいたときには真奈がぼくに抱き着いていた。