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22話 もやし

 もやしは死んでいなかった。やられてもいなかったのだ。

むしろ、さらに強くしてしまったのかもしれない。


 もやし、もといラストヒストリー、いや、もやしの方が呼びやすいか。もやしの能力は先程の発言からして、歴史的な人物を転生させる能力だと考えられる。


 そして、最終転生、つまり、これ以上転生することはないということだろう。

ただ、もやしの容貌は、歴史人物の誰とも当てはまりそうにない。


 左手に銃、右手に刀。体は恐ろしく鍛えられているように見える。身長は軽く2メートルを超えている。究極生命体と呼んでも差し支えないレベルだ。

そういえば、ぼくの能力にも究極奥義があるとかなんだとか言ってたな。けれど、使うともやしみたいに後戻りできない可能性がある。


「勝ったと思いましたか? この形態に私をできた時点で、褒め称えなければなりません。流石です。それと、あなたの能力は、幻影を見せることですよね? 見誤っていました」


 話し方は、確かにもやしだ。


「一回負けたくせに、よくそんなこと言えますね」


 挑発してみる。最初に遭遇した時、もやしの話し方は今ほど丁寧ではなかった。機嫌によって、性格まで変わるタイプなのだろう。


「はい? 今から負けるのはあなたなんですけど。最終負けたやつが負けで、過程なんてどうでもいいだろ」


 10秒して返答が来た。語気が少し荒くなった。いい感じだ。

そろそろかな。


 ぼくは、もやしから離れて、リーゼントの方に向かう。


「は? なぜ動ける?」


 もやしの声が後ろから聞こえる。けれど、そんなことに答えるはずがない。


「比奈! お願い!」


 この声は比奈にしかまだ聞こえない。

比奈はリーゼントの攻撃を全て防御しかしていない。それだけに相手の押しが強いということだ。


 比奈がぼくの声に反応したようで、リーゼントの足元から湧き上がるように、微生物が出てくる。それで、少しリーゼントはバランスを崩したように見えたが、その程度では倒れない。簡単に倒せるはずもないか。それだけだと。

体勢を立て直そうとしているリーゼントの首を後ろからガッと両手を引っ掛けて引っ張る。

すると、リーゼントは流石に体勢を立て直せずに背中を床につける。そのまま畳みかける......ことができたら良かったのだが、そういうわけにはいかないらしく、床にぶつかった瞬間に首をバネに、バク転して、そのまま足でぼくの頭を挟みにくる。

もしかして、今触れたから、位置がバレたのか?


 咄嗟のことでぼくは目を閉じかける。

しかし、その足が空中で止まり、足が再び下に落ちる。

比奈が、微生物でリーゼントのお腹と床を無理矢理くっつけようとしてくれたようだ。


 ボッ


 リーゼントから火が出て、微生物が焼き切られる。

自然に火が出せるようになっている。その場で技を習得しているらしい。

長期戦に持ち込むわけにはいかない。これ以上レベルアップされても困る。


「比奈、一気にいこう」


「うん」


 ぼくは、リーゼントの次する攻撃を予測する。倒れた状態から、恐らくぼくを攻撃しにくる。

そのためには、こっちに動いておいた方がいいだろう。ぼくは、比奈とリーゼントの両方から離れる方向に少し進んだ。そして、時間のずれを解除する。

その瞬間、リーゼントはこちら側に飛びかかってくる。


 今だ。


 ずれを再び復活させる。すると、凄まじい速度で切り返して、10秒前のぼくの方に向かっていく。

恐らく、リーゼントの能力は、身体の表面を強化なり改造なりする能力のはずだ。ぼくがナイフで刺そうとした時に、ナイフが折れた後、ちらりと内出血している痕が見られたからだ。

これでぴったしかな。まさか、ぼくのいるはずのところに爆発物があるとは思わないよね。


 ボッ


 小さな爆発音がして、リーゼントが倒れる。

やはり、内部からやってしまえばいけるようだ。

そんなこと思っている隙に、背後から、凄まじい殺気を感じた。そこで、横にスッと動く。


 ザン


 もやしの振るった刀が空を切る。

もしかして......ぼくのいる位置を把握できていない?

もやしの右耳のあたりから、ボタボタと血が落ちてきた。こちら側からは攻撃していないはずだが。


「ぐ......」


 もやしからうめき声が漏れる。


 まさか......


 当たらないにも関わらず、もやしは刀を振り続ける。


 すると、


 ベチャ


 床に何かが落ちた音がした。

落ちたものを見て、ぼくはゾワッとした。


 目だ。もやしの左目が無惨にも半分潰れて落ちていた。

なんと叫んでいるかも分からないほどの悲痛な叫びが聞こえた。



 そんな時、もやしに近づいていった人が1人だけいた。


「ねぇ、あなた、私の仲間にならない?」


 それは、比奈だった。

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