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20話 電車

 ぼくは眠りから目覚める。幸い、危惧していたことは何も起こっていないようで、比奈にも、ぼくにも、傷一つついていなかった。

2階に1人で寝ていた、そうするよう頼んだのはぼくなのだが、潔を呼んで、出発することにした。


 そういえば、ポイントを見ていなかったな。


ポイント 12


 ただ、見たところで他の生き残りに勝っているのかどうかはわからない。


「比奈、今何ポイント?」


「11ポイントだった」


 11ポイントか。逆算して考えると、固定女はテスターだったようだ。

初日、周りがまだ平和だった時に、人を殺すことができる、いかれたやつだったということが今わかった。

これから先、遭遇する相手で特に警戒すべきはやはり、テスターのようだ。


「よし、いくぞー!」


 潔が元気にそう言う。

たまには、うるさいのがいてもまた雰囲気が変わっていいかもしれないな。味変的な感じで。


 住宅街では、全然人が見当たらない。そこで、誰かしらがいそうな駅を目指すことにした。普段なら、人が多すぎて近づきたくない場所である。

駅に着いた。閑散とした駅がそこにはあった。誰も、動かない電車に用は無いのだろう。


「なかなか見つからないな」


 ぼくが言う。


「あそこには人、いると思うよ」


 比奈が指差す先にあったのは、動いている電車だ。

なぜ動いている? もう、乗客などいないというのに。


「とりあえず行ってみようぜ」


「そうだな」





 駅のホームに着く。

ガタガタと音を鳴らして、電車がホームに入ってくる。


「世田谷、世田谷ー。この電車は現金要らずでご乗車いただけまーす。ただ、保証として、あなた方の命をかけていただきまーす。天界への片道切符とならないよう、お気をつけくださーい」


 ふざけたアナウンスが流れてくる。


「どうしようか?」


 比奈が聞いてくる。


「人がいるの確実なんだし、探しに行って見つからないよりはいいかもしれないし、3人いれば多分、何とかはなると思う」


 そう言って、電車の12両編成中の6両目に乗り込んだ。逃げられなくなるのを防ぐためだ。ただ、挟み討ちされる可能性もないとは言い切れないため、得策かどうかは怪しい。


 再びアナウンスが聞こえてくる。


「ご乗車ありがとうございまーす。今日の乗客は3名様。こちらはスタッフ5名で、天界まで案内させていただきまーす」


「5人もいるんだな」


 潔が言う。


 プシューと音がして、ドアが閉まる。

さて、どこから敵は出てくるのだろうか。


ドン


 潔がいきなり倒れる。


「潔!?」


「いや、大丈夫だ。普通は防弾ベストは着てるものだろ」


 確かに、人を近づけさせない能力の潔なら、遠距離攻撃にだけ警戒しておけばいい。


「ちっ」


「だから言ったろ。銃は雑魚だって」


 7号車の方から、背の高い痩せこけた、もやしのような男と、背の低いリーゼントの男が出てきた。

銃を持っていたのはリーゼントの方だ。

これは先手必勝で行くべきだろう。

ぼくは敵めがけて走り出す。急にリーゼントが銃を捨てた。そして、こちら側に向かってくる。

次の瞬間リーゼントは、ぼくの隣を過ぎ去ろうとしていた。


 一瞬で8メートルくらいの距離を進んできた。この前の瞬間移動のやつよりは遅いが、十分速い。

しかし、ぼくが見えていないのなら、こうだ。

足を高さ30センチほどのところで振り抜く。

すると、リーゼントはすっとぼくの足を飛び越える。

そして、そのまま比奈たちの方に走っていく。ぼくのことは見えてはいないようなのだが、どうして避けられたのだろう。

リーゼントが何かにぶつかった。きっと潔の能力だ。


 そのままリーゼントは後ろ向きに体勢を崩す。が、床に当たるとはね返ったかのように、起き上がってくる。

そろそろぼくが動き始めて、10秒が経ってしまう。まだ、違和感を持たせるわけにはいかないので、ずれを解除する。


「君はワープするのですか。面白いですね。ですが、私は負けないですよ」


 礼儀正しいもやしだこと。先ほどリーゼントと話していたときとは大違いだ。そして、ぼくの能力をワープと勘違いしているらしい。


「ぼくも負けないですよ」


 礼儀正しく返しておこう。まず、能力の把握をしないといけない。リーゼントは恐らく肉体強化。身体能力が、人間とは少しかけ離れている。

最初、遠距離攻撃を仕掛けてこなかったことや、見た目には身体が強い感じもない。


 一旦、様子見程度の攻撃を仕掛けてみよう。

ぼくは、今日家で集めた、おもちゃのボールを5つほど取り出しす。


「これあげる」


 そう言いつつ、もやしに2つボールを投げつけた。


 これにどう対処するだろう。

もやしは、1つのボールは避け、もう1つのボールは手で優しく受け止める。

きっちりと対処しているようだ。片方だけ、衝撃を与えると爆発するようにしておいたのだが。


 分析能力に長けているらしい。先に、後ろにいるリーゼントから倒してしまおうか。

残りの3つのボールを後ろに転がす。


 そして、もやしの方に攻撃を仕掛けに行く。

頭がいいやつ相手は、近接戦闘の方が考える隙を与えなくて済むため、とにかく近づく。

左足は、本物の足ではないので、強く蹴っても全く痛みを感じないので、それをいいことに左足で勢い任せな蹴りを繰り出す。

チャプンチャプン音がしていて、不思議な感じだ。ただ、そのおかげか、足の振りが普段よりも格段に速い。

当たった。相手は、左側へとバランスを崩し、倒れ込むかと見えた。

しかし、そんなことはなかった。もやしはそのまま、倒れた方向に手をつき、側転をした途端、窓を踏み台にして、こちら側に飛んでくる。そして、両手で吊り革に捕まり、くるりと前転し、ぼくの所にすごい速度で足を伸ばしてきた。

とっさにぼくは近くの座席に飛び乗って避ける。

そういえば、天井に足がぶつからないようにとっさに足を縮めて前転をしていたな。その姿はまるで体操選手さながらだった。

非礼にあたるかもしれないが、そうは見えなかった。しかし、実は身体能力抜群なのだろうか。


 もう少し戦ってみたら分かるかもしれない。


 ん?


 もやしが動かなくなった。

今のうちに後ろに回り込んでおこう。そう思って、座席を降りたその瞬間、


 ヒュッ


 と音がした。


 そして、その音がこんどはこちら側に向かってくる。

すかさずしゃがんで避ける。


 もやしは刀を振っているらしい。何が起こってるんだ......?

ぼくの位置がまるで分かっているかのように刀を振っている。


 一度比奈たちの方に戻って体勢を立てなおそう。一対一だと、勝ち筋がはっきりと見えてこない。

こっそりと、もやしの横を抜けれるだろうか。そういえば、今、もやしは動いていないな。


 よし、いける。

ぼくはもやしの横をするりと抜けたが、何もされずに通過できた。

もやしのぼーっとしている感じに多少の違和感を感じたが、とりあえず比奈達の方に向かった。


 道中、リーゼントが必死で潔の壁? と呼べばいいのかは分からないが、潔の能力を突破しようとしている。

ぼくは、能力の中身を知っているので、潔のいるところから、ギリギリ1メートル離れたところを通って、比奈達のいるところに戻ることができた。

リーゼントは頭が悪いらしく、力で押し切ろうとしかしないので、ぼくは、その後ろにいるもやしの動きを見ることにした。


 もやしは、刀を2本持って、こちらの方に向かってきていた。

もやしは、体の前で刀をクロスしてかまえていた。あまりにも独特すぎる構えに、ぼくはもやしに対する不審感が増した。

そのままの状態でゆっくり近づいてくる。


そして......


 ぼくにはその先を冷静に判断している余裕はなかった。


「比奈、潔、逃げて!」

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