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14話 紐使い

 比奈が嘘をついてる? まさかね。


 ただ、声の主は嘘をつかないはずだ。そんなことをしたらシステムとして成立しない。

だとしても、何の嘘なのか。どんな内容でどの程度の嘘なのか。それを確かめようにも分からない。たとえ比奈がぼくを急に殺しに来たとしてもぼくは困らない。というか、本望だ。

それを比奈も分かっているはず。だから、嘘をつくとしたら、もっと別のところだ。


「ねぇ。有益な情報ってなんだった? 私はね、凛の能力を教えてもらったよ!」


「え?」


「10秒ずれてるんでしょ?」


「ま、まぁそうだけどさ」


 おかしい。確実に。もし、ぼくの能力を今知ったところであれば、今までがおかしい。


「ねぇ......比奈? 今嘘ついたでしょ?」


「ついてないよ? というか、本当にそんな能力なの? 今までもずーっと普通に話せてるんだけどさ」


 確かにそうだ......本当に今聞いたと仮定すると、逆に声の主が嘘をついてると感じるはずだ。声の主は嘘をつくのだろうか? そう仮定すれば、比奈が嘘つきでないとも考えられる。

うん。きっとそうだ。比奈が嘘つきなはずないもんね。


 考え終わったので、返答する。


「さぁ? 何か見える条件でもあったんじゃない?」


「なんかあるんだよ。10秒ズレるってすごい能力なんだから。能力バレちゃいけないとか」


 ん? ここでぼくは大きな見落としに気づいた。先ほどの考えの矛盾に。もし、声の主が嘘をついていると仮定した場合、比奈はぼくの能力を知ることはできない。しかし、比奈はぼくの能力を知ってる。ここから結論づけると、声の主が本当のことを話しているということ。


 そして......

やはり比奈が嘘をついているということ。

ぼくの能力のディスアドバンテージも1発で当ててきている。


「ぼくの能力の特徴当ててみてよ」


「触れ合ってるものは能力共有できるとか?」


「え? そうなの?」


「さぁ? 試してみたら? ほら、手を握って、一緒に鏡の前に立ってみようよ」


 比奈が手を出してくる。

え......やば......理性が飛ぶやつ......でも、こうしないと。


「すまんね」


 そう言いながらそっと手を握る。

手が柔らかいって何のことだろうと今まで思っていたがそのことが綺麗に解決する。このことだ。間違いない。

鏡の前に立つ。しかし、鏡の中にはぼくだけがいない。


 服とかはぼくに含まれるのかな......でも......持ち物も見えないはずだよね。ナイフだけが浮遊してるはずないから。

考えれば考えるほど矛盾点が浮かぶ。


 結局、どういうことなのかは分からない。ただ、比奈を疑わないままでいることに決めた。比奈を否定はしないつもりでいるからだ。

頭を切り替えて、イベントの方をどうしようか考えよう。ポイントをたくさん得るには、その日に人を殺した人を殺すのが一番稼げる。つまり、遅くに殺した人が勝ちということだ。


「比奈」


「なに?」


「もう少し時間が経って、ポイントが一人一人に集まってきてから殺しに行こうか」


「そう......だね......」


「どうしたの?」


「あ、いや、ちょっとね。ごめん」


 とても残念そうな顔をしている。なぜだろう。ただ、これ以上深堀りすべきではないと思った。


「とりあえず休憩かな」



 しばらく時間が経って、ぼくたちは出発した。夜の9時のことである。

3時間以内にポイント高いやつを2人で一人ずつ殺すのが今日の目標。


 街中を歩いていると、右手のほうに突如痛みが走った。

その瞬間に動くのをやめてよかったと思った。そうしていなければ、恐らく右手は飛んでいただろう。


 しばらくして声が聞こえた。


「あーあ。止まっちゃったのね」


 現れたのは僕と同い年くらいの少女だった。同年代なら女子の方がいいか。しかし、そのいたずらが好きそうな雰囲気が彼女を少女と呼んでしまった理由なのかもしれない。


「もう少しで右手がパーンだったのにね」


 彼女はくすくす笑う。

殺しに来たということは、ポイントが低いということだ。ただ、スルーはさせてくれそうにない。


 殺すか。

ナイフを彼女に向かって振る。


 次の瞬間、ナイフが真っ二つに割れる。

よく見ると、マフラーにでも使われていそうなふにゃふにゃのヒモが浮いている。


「ねぇ。ヒモってすごいと思わない?」


 何もぼくは言わない。けれど、彼女は続ける。


「ヒモはね、人を好きな風に殺せるんだよ? 絞め殺したり、斬り殺したり、衰弱死させたりとかね」


 恐らく、糸ノコや縛っての放置のことを言っているのだろう。

彼女は口が裂けそうなくらいに不気味な笑みを浮かべる。


「どう殺されたい?」


 いいだろう。

彼女と同じくらい大げさに笑みを浮かべてぼくは言う。



「全部で」

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