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10話 血

「おーい」


 あれ? 比奈の声が聞こえる。そうか......打たれたんだっけか......


「え、あ、あ、おはよう」


 状況把握をしないと。

周りを見る。さっき倒れた場所と同じところにまだいた。ただ、なぜかあの操作主が倒れている。その操作主の体はくっつけたら動きそうなくらいに、綺麗に真っ二つだった。ほんと、比奈のナイフ切れ味が良すぎるなぁ......

細い廊下は、思ったより血だらけではなく、死体をもう一度見てみると、真っ青になっていたことに気づく。


「ありがとう」


 比奈が微笑みながら言う。その笑顔がぼくにとっては最高の治療薬かもしれない。こちらが感謝するべきはずなのに先に感謝されてしまった。


「こちらこそありがとう」


 そう言って、動こうとすると、体が悲鳴をあげる。流石に笑顔という治療薬にも限界はあるらしい。ぼくの体には二箇所穴が空いている。しかし、なぜだか血は止まっている。


「比奈、あの後何があったの?」


「えとね、凛が、打たれたちょうどその後に、操作主を斬り殺したよ。あの銃声のおかげで、私が立ち上がった音が聞こえなかったみたい」


 よく、あのタイミングを計って斬りかかれたものだ。比奈も一発撃たれていたはずなのに。でも、どうであれぼくが役に立ったなら良かった。

けれど、そうなると、比奈が人を躊躇なく真っ二つにしているということになる。比奈がそうしているのか、このゲームがそうさせているのか。前者でないことを祈るばかりだ。


「凛は結構やばい状態だったんだよ。もうすぐ失血死するところだったんだよ? もっと気をつけなよ」


「どうやって、ぼくの血を戻したのさ」


「あれから奪ってたやつを使ったの」


 そう言って、もう動くことのないクラスメイトを指す。


 もしかして、比奈が切った相手から血が流れなかったのって、比奈が奪ってたから? それなら、操作主の死体が真っ青だったことにも納得がいく。


「それで、血を入れたら、起きた。よかったよ」


 なんて優しいんだろう。もう神。


 そういえば、今何時だろうか。

プロフィール画面を開く。午前2時。もう、次の日になってるのか。一日近く倒れていたことになる。

生存者が約1億人になっていた。もう、日本の人口分ほどしかいない。


 しかし、それはどうでもいいこと。日がたてば減っていくのだから。それよりも、今日もまた、1人殺さないといけない。

獲物探しの時間の始まりだ。


 昨日の戦闘場所である細い廊下から去っていく。戦闘場所も選ばないといけないよな。細い廊下なら、銃を避けられない。それを計算していた操作主は賢かったのだろう。覚えておこう。

外に出る。しかし、近くに人はいない。車の音がうるさいだとかそんなこともない。そんなことを考えながら、歩いていると、血を流して倒れている少年がいた。まだ、生きている。彼は、昨日誰かと戦って負傷したのだろう。あの小ささでよくやれるものだ。強いな。でも、怪我しているから今は弱い。ちょうどいい。殺そう。


「あなた、大丈夫?」


 比奈が少年に話しかけた。

比奈が人に話しかけるのは珍しい。そう思ったので、一旦様子を見守る。


「血が流れすぎてて......」


「そう......それなら、血をあげるよ」


 そう言って、どこから取ってきたのか、輸血セットを出してきた。


「何型?」


「B型。って、ほんとに助けてくれるの?」


「だって、あなたまだ小さいでしょ? 放置するのは忍びないなって思ったから......」


 比奈は、優しい声で話す。他人にも優しい。やっぱり、神だ。


「それじゃあ、右手出して。血を入れるから。最初痛いのは我慢してね」


「わかった」


 少年は、指示通り右手を出す。


「いたっ」


 少年は幼気な反応を見せる。こんな子でも人を殺して、クラスメイトのように罪悪感に苛まれているわけではないということには多少なりとも違和感を持たざるを得ない。


「はい、後は血が入るのを待ってね〜」


 輸血パックの血がだんだん減っていく。そして、輸血が完了する。


「よし、オッケー」


「ありがとう!」


「こちらこそ、ありがとう」


 比奈がにっこりと笑う。


「じゃあね、お姉ちゃん!」


 それが、彼の最後の言葉だった。

輸血をしてもらったはずの彼は、その場でパタリと倒れて動かなくなった。



「じゃあね。少年」

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