雨天時の少女と大好きな彼
昔に書いた小説を編集してみました。誤字などがありましたら、ご報告ください。少しでも感想を頂けると嬉しいです。
これは、とある少女の雨の日のお話。
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1週間くらいずっと雨が降り続いている。この時期には珍しい。せっかく咲いた桜も一気に散ってしまったことだろう。
私の右手には包丁が握られている。家から新聞にくるんで持ってきた。学校の屋上。明日は始業式がある。つまり今日は春休み最後の日。
雨が降っているので肌寒い。制服の上にカーディガンを羽織っているが、傘もささずに雨に濡れると体も冷える。
私は持っていた包丁を足元に置いた。コンクリートの屋上の床にたまった水溜まりに沈む形になった。
生々しい赤い線が無数についた右手から、携帯を取出しメールを打った。
電話帳に登録してある全員に。
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To <宛先参照/表示>
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Sub
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今から自分の手首を
包丁で切ったあとに
学校の屋上から堕ち
私は、2回死にます
死んでしまった私を
見つけた幸運な方は
写真か動画に撮って
私に送ってください
さいごのお願いです
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全ての人に同時刻に送れるように宛先を入れては保存した。全てメールが完成したので
一斉送信した。
携帯はポケットにしまい、メールや電話が1通も来ないうちに、水溜まりに浸かっていた包丁を右に持ち
勢いよく左手首に振り下ろした。
もともと、貧血気味だった私はすぐに視界が薄れて来た。包丁は思ったより左手首に食い込み抜けなく刺さったまま。
右手でポケットから携帯を取出し握り締めた。左手首は、ぶらんぶらんと揺れている。私はおぼつかない足取りで前に進み
堕ちた。
8階建ての学校なので、屋上から地面までは距離がある。それでも堕ちるときはあっという間だと思っていたが、案外ゆっくりに感じる。
途中で携帯のメール音が鳴った気がした。
途中で左手からぶちっという音が聞こえた気がした。
地面に叩きつけられる前に密かに願った。
…―大好きな彼が私を1番に見つけてくれますように―…
願った直後、体は地面に叩きつけられた。胸に圧迫感があったが、すぐには死ねないようだ。
ふと左の方を見ると左手首がなかった。途中でちぎれたことに今気が付いた。それでも体全体に雨があたっているのは分かる。
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右の方から電話が鳴った。握り締めていた携帯のディスプレイをみると大好きな彼の名前。
左手と真逆なくらいに正常な右手でなんとかして通話ボタンを押した。
「もしもし?お前なに言ってんだよ!悩んでるなら言えよ?おい、聞いてるか?」
ボタンを押した瞬間に彼の迫力のある声。私の大好きな彼の声が聞こえてきた。
「死なれちゃ困るんだよ!」
最後に彼の声が聞けるなんて嬉しくて幸せを感じた。
「聞いてるか?ちゃんと聞けよ!俺はお前がス―…」
こんなことしなければよかったと心の底から思った。
私は愛されていたんだ。
彼の言葉を最後まで聞けないまま意識が途切れた。
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「―…ストレスだったんだよ。お前に復讐してやるよ。だから俺が殺すまで死ぬなよな」