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男の娘のリアル

 翌日、ライトは明に戻って学校に出かけた。

 いつも通りに可愛い女子の制服を着て。


 学校側は最初のうちだけ反対して、1ヶ月も経てば何も言わなくなった。

 噂では剣道をしてるからそれで脅したんじゃないかと言われてる。

 なにせ、4月に木刀を持ってるのが目撃されたから。

 そんな噂があっても実力行使じゃなくて、メンタル攻撃なら出来るからクラスメイトはゲームでバカにしてきた。

 それにブチギレて今回のゲームに手をつけたことにつながる。


 正直言って明はクラスメイトに会いたくない。

 実力で恐怖を植えつければ制することができるけど、なるべくそんなことをしないで普通に生活したいと考えている。

 だから、いつもバカにするみんなの声に耳を傾けないようにして高一の6月まできた。


「よぉ、白百合ちゃん。噂のゲームに手を出したボロ負けになってるのかな?」


 教室について席に座ると、いきなりバカな男子達が囲んできた。

 明が脳筋男の娘と思ってるこいつらは、手を出せば教師を黙らした件を外に漏らすと脅してもきてる。

 親に迷惑をかけたくないから黙ってやり過ごすしかない。

 明の怒りが頂点の昇らないように奴らも手加減をしてるのがさらにムカつく。


「なあなあ、俺達が(あお)ったんだからどうせ始めたんだろ?結果教えろよぉ」


 性格の悪い連中に一部のクラスメイトは吐き気を感じている。

 でも、手を出せば明に「なぜ今まで助けなかった?」と言われて攻撃されるんじゃないかと怯えている。

 誰も明を助けない。

 強すぎるとは難儀なものだ。

 手を出せば木刀でも殺してしまうかも知れない。

 それなら、手加減すればいいと言うかも知れないけど、それをすれば脅しの内容を実行される。

 だから、明は何もできない。


「ちっ、何とか言えよー!」


 手を出すのが早いバカがここで明の頭を机に叩きつけようとしてきた。

 明は背後の気配に気付いて痛みを覚悟した。



 …………………?

 いつまで待っても痛みが来ない。

 意を決して振り返ると、そこには小さなメガネ男子がバカを抑えてる図があった。


「僕のパーティーのリーダーに手を出さないでくれるかな」


 そのセリフに明はまさかと思った。

 その顔を見て彼は笑みを返した。

 そして、空いてる右手でメガネとウィッグを取った。

 黒髪のウィッグで隠されていた茶髪が姿を見せて、セミロングの美少年に姿を変えた。


「桜井、てめぇ…」


 バカもさすがに状況を理解した。

 こいつはゲームで明に加担してる奴なのだと。

 明と同じ男の娘なのだと。

 さらに、こいつの目の鋭さから明側の人間だとも予想がついた。

 そのせいでバカの体は小刻みに震え始めた。


桜井紅葉(さくらいくれは)だ。プレイヤーネームはスペード、いくつかのゲームでトッププレイヤーになってる。VRMMOに手を出してるなら知ってるだろ?」


 その言葉を聞いて教室の空気が凍りついた。

 ライトが後で聞かされたことだが、スペードはいくつかのゲームの大会で優勝した経験もある実力者で、あのゲームは相性がそんなに良くないから満点の動きができてないだけで世界が認める実力者だそうだ。


 そんな奴を傷つければプロゲーマーに誘おうとしてる連中が黙ってない。

 本人はやる気がなくても周りが絶対に守ろうとする。

 それを知ってるからバカどもは明と紅葉から離れた。

 そうしないと2人からどんな目にあわされるか分からないからだ。


「ねぇ、例のゲームにも手を出してるなら明日は絶対にイベントに顔を出しなよ。そこで男の娘がVRMMOで強くなれるってとこを見せてあげるから」


 紅葉にそう言われてみんなは何か言いたげだった。

 まぁ、元々強い男の娘にそう言われても仕方ないだろうね。

 つまり、見せたいのはライトである明の方だ。


「さて、今日は胸糞悪いから早退するよ。人の苦労も何も知らない奴らと同じ空気を吸いたくないんでね」


 そう言ってバカ共と傍観者を睨みつけてから、紅葉は明の手を引いて出て行った。

 荷物は後で先生に取りに行かせるつもりらしい。


 その足で職員室に行って担任に本当にそれを頼んだ。

 そして、待ってる間に何人かの教師が2人に腰を低くして挨拶してから職員室に入って行った。

 こんな朝早くにゲーマーと剣道っ子に会うと思ってなかった教師は驚いて腰を抜かすこともあった。

 それくらいこの2人は大物と危険人物として見られてるわけだ。


「噂は本当なんですね。そうでなくちゃ尊敬なんてしませんよ」


 紅葉はいつものスペードの調子でそう話しかけてきた。

 明は少しスッキリした顔で尋ねてみることにした。


「ねぇ、なんでゲームでもリアルでも助けてくれたの?」


 その問いに紅葉として答えてくれた。


「だって、まっすぐに自分を貫こうとする姿勢がかっこよかったんですもの。本気であそこまでやれる人なんてそんなにいない。無理やりにでも自分を通そうとするあなたに惚れたんです。それが答えです」


 紅葉は頬を赤らめて告白してくれた。

 それに明はドキッとした。

 ゲームでもリアルでも会えるなら。

 明には人生で最大の選択する時が来たらしい。

 これでも一応男同士だし、女装すれば女同士にもなる。

 どっちにしても性別の壁を超えた恋愛になる。

 短い間にずいぶんと家族以外を見てきたなと思った明には答えは一つしか無かった。


「それが告白なら、お付き合いしよう。君のさっきのかっこいい姿に救われた。だから、僕は君を幸せにしたい」


 その言葉に紅葉は笑ってうなずいてくれた。

 その様子を担任は隠れて見ていたが、空気を読んでしばらく待っていてくれたのだ。


 しばらくしてちょうど良さそうなタイミングで出て2人に荷物を手渡した。

 そして、早退にしてくれるように動いてくれることになった。

 てか、明のような危険人物を追っ払えたのは教師的に良かったのかもしれない。


 2人は学校を出ると手を繋いで帰宅した。

 そこからゲームを再開する約束をしている。

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