男の娘のゲームスタート
僕の名前は白百合明です。
見た目は思いっきり女の子みたいな男の子です。
クラスのみんなから「女みたいなお前にVRMMOで強くなるとか無理だからw」と言われたので、販売され始めたばかりのMagic World Onlineという新作の電脳世界にダイブするタイプのゲームをプレイすることにしました。
これで僕みたいな子でも強くなれるところを見せてやります!
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初めてのゲームで緊張しながら明はゲームを起動して無機質な設定画面に姿を現した。
ダイブしてやってきた設定画面で目を開けると、目の前に突然文字が出てきた。
「このゲームはかなり自由度が高く、平和に暮らすのも、戦いにいそしむのも、冒険を楽しむのもそれぞれの自由です。我々の作った世界をお楽しみください。って、結構なんでも出来るんだ」
設定前の開発側からの言葉を読んで明は感心した。
そうしてるとすぐに設定に移った。
最初に決めるのは当然だけどユーザーネームだ。
「うーん、そのままはまずいだろうから適当に入れよ」
そう言うとライトと入力した。
それで通ったので今度は武器やステータス振りの画面になった。
剣や弓や盾といった物がずらっと明を囲んだ。
「うわっ!すごいね。この中から選ぶんだね」
そう言いながら即行で刀を選択した。
このゲームには武器ごとにもステータスに影響する効果があるので、明は刀の攻撃と素早さの上昇の恩恵を受けることになる。
その影響を受けた画面でステータス振りを始めた。
「振れるポイントはそんなにないんだ。なら、これにしようかな」
明はスッスッと画面を弄って、攻撃、防御、魔力、魅力、素早さなどの10項目の中から攻撃と魔力と素早さに振った。
無難な選択だが、このゲームは調整前なのでこれでも結構すごい振り方になっているのかも知れない。
そんなことを考えずに明は先に進めた。
「えっと、種族選択も出来るんだ。でも、僕は魔法剣士がいいからこれでいいかな」
そう思って種族選択なしを押した。
それで人間側になったが、この選択を後々後悔することになるのを今の明には知るよしもなかった。
それで準備完了になった明は瞬間移動系の魔法で最初の街に飛ばされた。
そこはよくアニメやゲームに使われているような城下町で、かなり活気に溢れてモブキャラが歩き回っている。
その光景に感激して明は口をぽっかりと開けて見上げたり見わたした。
そうしながら歩いていると、自分のすべきことを見失った。
最初は色々と確かめるのが普通かなと思って広場へと向かった。
ここがゲームの中心地になるなら、広場はプレイヤーのたまり場だろう。そう思って行ってみたらビンゴだった。
噴水を囲む広場にはたくさんのプレイヤーがいて、そこの周辺にプレイヤーに役立つ店が並んでいる。
さすが、色々出来ると言ってるだけあって、道具屋、宿屋、不動産屋、教会とかなり揃っている。
その立ち並ぶ建物の中にギルドもあって、そこからかなり実力のありそうなプレイヤーが出てきた。
それ以外のところでは普通に暮らしてるプレイヤーもいた。
「うーん、僕は何から始めようかな」
どういうゲームなのかプレイヤーを見て理解したところでそう呟いた。
そうしてると後ろから変な男が声をかけてきた。
「なぁ、お嬢さん。俺とパーティー組まない?」
「えっ?僕男ですよ?」
「冗談きついぜ!そんな見た目で鈍臭そうな奴が男なわけないだろ」
絡んできた変な奴の言うことはまるで大嫌いなクラスメイトと一緒。
あのクラスメイト達のことを思い出して明は思わず刀を抜いてしまった。
背後に立つその男の首元に、前を向いたまま刀を当てていつでも切れる状態にして、ここから殺気立てて脅した。
「僕を怒らせないでよ。殺すよ」
さすがに変な男もこの状況には冷や汗をかいた。
その状態で怯えながら明に言い返した。
「待てよ!このゲームではPKしたら追放だぞ!分かってるのか!」
「始める前にパッケージの裏に書いてあったことは熟読したから分かってる。でも、やろうと思えばやれるってのを見せただけだよ」
そのセリフに変な男は完全にビビってしまった。
相手に死の恐怖を植えつけられたのを確認して明は刀をしまった。
その途端、周りのプレイヤー達から強い男の娘に歓声が上がった。
大きな広場で一時的に注目の的になった明は照れながらその場を後にしようとした。
そうしたら、声をかけられた。
「ライトさん!待ってください!」
振り返るとそこには自分と同じ男の娘が立っていた。
男の娘は見た目と声である程度判別がつくので、彼女がこっち側なのは間違いない。
「今の騒ぎで迷惑でもかけましたか?」
明は心配そうな顔でそう尋ねた。
すると、笑顔で首を横に振って答えた。
「いや!かっこよかったです!よければ仲間にしてください!」
キラキラする目を向けられた。
そこから瞬間的にここで断ってもついてくるなのと思ったのでソロプレイは諦めた。
だから、こっちもある程度の笑顔で対応した。
「いいですけど、僕はダンジョン攻略とか戦闘に行くつもりだから、ついて来れそうになかったら置いて行きますからね」
「はい!それでもちゃんとついて行きます!」
予期せぬアクシデントに巻き込まれながら明はライトとして初めての仲間をゲットした。
自分がクラスメイト達を見返すために始めたゲームは、とても楽しいものになりそうだ。