表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
R. U ─赤の主従たち─   作者: 幻斗
16/41

ドタバタLOVE.RED 1

ミーティングを終え、理子と蘭は今度は理子の部屋に入り、二人の役割について話し合った。


「いい?蘭ちゃん。私たちの役目はネット上での情報集めよ。」

「『R.U』のホームページに『色を見た女性募集』みたいなのを載せて反応を待つんでしょ?で、あたしは何をすればいい?」

「蘭ちゃんにはTwitterを担当して欲しいの。ハッシュタグを使って主様に色を見た人を集めたりね。」

「OK!任しといて。それで集まったらどうするの?」

「ある程度の数になったら律姉さんにバトンタッチよ。その中から『R.U』の一員になってくれそうな人ををスカウトするの。しばらくはその繰り返しかしらね。」

「了解!たくさん来るといいね。」




自室に残った律は早速パソコンのメールチェックを始めた。

『新一』という名のフォルダには、新一から転送された500件以上のメールが入ってた。

(これが局に来た問い合わせメールね。この中に主様のお役に立てそうな娘はいるかしら。主様に絶対の忠誠を誓う、私た地みたいになりそうな娘が。)


ミルクティーを飲みながら、全部の問い合わせメールにざっと目を通し、はじめに男と断定出来るメールを別フォルダに移す。仮に赤斗に色を見たとしても、今のところ男は赤斗と『R.U』に必要無い。

次にメールの差出人情報に記載された年齢、無いものは文章の書き方から年齢層を推測し、若そうな者とそうでない者に分ける。年齢で差別する気は無かったが、赤斗と年増の絡みを律はイメージ出来なかったので、とりあえず若くなさそうな女性は後回しにする。

最後に、メールの文面から知性も品性も感じられないメールを別フォルダに分ける。『R.U』にバカはいらない。


この振り分けで残ったのは約100通のメール。これらとホームページの記載を見て集まった人間を照会して、ダブった女性にのみDMを送ることになっている。

局に来た問い合わせメールの差出人にDMを送れば、より早期に対応出来るのだが、個人情報にうるさい現代社会では「局に送ったメールのアドレスをなぜ『R.U』が知っている?」などと騒がれると、新野 新一とテレビ局に迷惑を掛けるので自粛することにしたのだ。


律は振り分け作業がひとまず終わったので、エリザベス女王付女官であるマーガレットと情報交換するためにメールのフォルダを閉じた。


だが、このとき羽根川 律は致命的なミスを犯していた。

そのミスが発端となり、三年後に竜崎 赤斗は御堂 蘭を失うこととなる。


律がメールチェックする際に赤斗が同席していたなら防げたかもしれない。あるいは、新しい秘書になるあの女性だったら見抜けたかもしれない。

しかし、さしものハーバード10もその巧妙に仕組まれた罠に掛かってしまっていた。




「ハロー、律。お久しぶりですね。」

モニターに映し出されたマーガレットが親しげに言った。


「ハロー、マーガレット。お元気?」

流暢な英語で律が返した。


「元気よ。そろそろ貴女から連絡が来る頃だと思っていたわ。日本の反応はどう?」

「予想以上に来たわ、そちらは?」

「同じく予想以上だわ。特にこちらはイギリス本国だけでなく、ヨーロッパ中から問い合わせが来てるから、それはもうちょっとした社会現象よ。」

「そちらの主役は女王陛下でいらっしゃるから仕方ないわね。それで反応はどういった感じ? こちらは問い合わせの仕分けが始まったばかりだけど。」

「そうねぇ、番組内で何らかの異常を感じた人間は、老若男女合わせて今のところ三千てとこかしら。まだまだ増えるだろうけど。」

「さすがに日本とは桁が違うわね。異常ってやっぱり色に関したこと?」

「そう。色が変だったというのが9割かな、それから私がレッドバロン(竜崎男爵)に感じた違和感と似たのが、残りの1割かな。ざっくりだけど。」

「主様の色が薄く見えたって現象ね。それで肝心な『モノクロ』はいた?」

「今のところ確認出来ていないわ。そちらは?」

「同じよ。まぁ始まったばかりたがらこれから分からないけど。」


「ねぇ、律。やはりレッドバロンの仰られたように、色を見た人間は味方に、そうでない場合は敵になるのかしら?」

「まだ分からないわ。でもその可能性は十分あるわね。」

「私がレッドバロンの敵になるかもってことね。少し嫌だな。」

「お互いそうならないよう願いたいわね。じゃあまた連絡するわ、マーガレット。」

「分かったわ、律。何か進展があったら知らせるね。バーイ。」

「バーイ。」


ふぅ・・。回線を切った後、律はわずかにため息をついた。


(あの娘、主様に惹かれたわね。でも仕方ないか、マーガレットは主様の従じゃないものね。)


羽根川 律は赤斗の従である。

従は主に恋愛感情を持たない。いや、持てないと言った方が正しい。


『主従は対等では成り立たないが、恋愛は対等でないと成り立たない。』

赤斗が従たちによく言っている言葉だ。

初めの頃はあまりピンと来なかったが、主従となり数年経つ今となっては、まさにその通りだと理解出来た。


マーガレットはすでに女王という崇拝する主に仕えているから、赤斗を魅力的な異性として見ることが出来る。だからといって、律はそれを羨ましいと思わなかった。

自分はいつまでも主を崇拝していたい。主を見上げていたい。その想いで律は満たされていたからだ。






「ウッキー!もう、どうしたらいいのさ!」

LOVE.REDのオフィスで馬飼 里奈が楼蘭 さくらに向かって叫んでいた。


「ちょ、落ち着いてよ、里奈ちゃん。」

「里奈はデザイナーなの!事務仕事なんて出来ないよー!」


ひっきりなしのデザイン依頼と、デザイナー達の売り込みの対応に大わらわの里奈がとうとうキレた。


LOVE.REDにも事務スタッフが数人いる。さらに、番組放送後の仕事増加を見越して増員したのだが、それでも間に合わない。

想定以上に数が多すぎたのだ。


「こうなったら律姉さんに泣きつくしかないね。」

さくらがお手上げ状態で言った。


「ダメーッ、律姉ちゃんに言ったら主様に役立たずと思われちゃう! それなら死んだ方がマシ!」

「アンタ、胸も無けりゃ度胸も無いのね。」

「なにぃ?それ言って生きてた奴いないんだけど?」


「まぁまぁ、私に任せなって。」



「という訳なんだけど律姉さん。誰か事務処理に優れた人いない?」

「つまり今一番大変なのは、セレブからのクレームに対応出来ていないってこと?」

「そうそう。セレブの機嫌を損ねさせないで依頼を待ってもらうことの出来る人。誰かいない?」

「ん~、主様にご相談してみるから少し待って。」


「という訳ですが如何致しましょう、主様。」

「アハハ、里奈にセレブ対応しろというのは、巨乳になれと言うのと同じだな。分かった、私が行こう。」


「ふぇ!? ゴホン、失礼しました。今何と仰いました?」 

「私が里奈達の手伝いに行こうと言ったんだ。」

「主様自らですか?それはさすがに問題かと存じます。」

「何が問題かね? 困っている人がいたら助けるのは当たり前だろ。とにかく私はLOVE.REDへ行くから、本部のことはお前に任せたぞ。」

「え!? まさか主様お一人で行かれるのですか?」

「そうだ。」

「ウッキー! そ、それは筆頭秘書として承服しかねます! せめて蘭だけでもお連れに。」

「お前、キャラ変わってるぞ? 蘭も今忙しいんだから却下。もう決めたんだから諦めろ。」

「は・・い・・」


赤斗が単身LOVE.REDに赴くという話は、すぐに飛田 瑠璃子の耳に入った。


「まぁまぁ、律っちゃん。主様の気持ちも察してあげなさい。主様はいつも私たち従に感謝してるって言ってるでしょ、だから今とても忙しいあなたたちの手を借りずに、今回はお一人で行きたいのよ。」

「でも瑠璃子姉さん・・、お一人なんてあまりにもお可愛そうで・・。」

「向こうにいけば里奈ちゃんたちがいるから大丈夫だよ。」

「・・そうね、分かったわ。でも二度とこんなことにならないよう、早く人員を増やさなくちゃ。」

「そうそう。頼んだわよ。」


こうして竜崎 赤斗は律の猛反対を押し切って、里奈たちの待つLOVE.REDへ単身乗り込む。



「えーーーーっ!!! 主様がここへいらっしゃるの!?」

「そ・う・よ。その前にあなた達の『部屋』なんとかしなさい。」

「げっ、何で知ってんの? 律姉さん。」

「モニター越しに見えてるわよ。さくら。」

「ハイ! 今から大掃除します!」

「今日中にご到着されるから、それまでに掃除と主様にして頂くことを簡潔にまとめといて。それとご奉仕マッサージをしっかりとね。」

「それだけは任せて! じゃあ、これから忙しくなるから切るね。」

「うん、くれぐれも主様にご負担をかけないように、じゃあね。」


(ものすご~く不安だわ。)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ