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【1話】「詩子、別れ」
「あぁ…だるい。腰痛い。背骨交換したい」
やっと休憩に入った俺は、そう言いながら、ポケットに手を伸ばす。が、
「あれ…あれ!ない…ない!ナインティナイン!確かにここにアルシンド…」
ポケットにあるはずのそれは、いくらまさぐってもない。股間周りをまさぐりすぎて変な気分になってくるだけだ。
「俺の詩子がない…」
イムが詩子と呼ぶそれは、ただのスマホだ。
と言ってもこのご時世スマホがないと生きていけない人間が多い。スマホ依存とはよく言ったものだ。しかしまぁ、自分のスマホに好きな女の名前を付けるやつはそうそういないだろう。
「ダークバース出来ねぇじゃねーか…詩子…ツリッターも見れないじゃないか…詩子…」
そう嘆きつつ、休憩も終わり、仕事も終わり、
「走った時に落としたかなー、交番行ってみるかぁ」
と交番に行くも届いておらず、
「詩子…一緒じゃないとやだよ…詩子…」
と言いながらとりあえず家に帰って寝ようと、ボロボロの足をとぼとぼ歩かせるのだった。