第96話 破天荒な不運
はぁ、昨日は散々だったな。あの後里奈さんと二人で大学のキャンパス内を歩いてたけど途中で里奈さんは急に居なくなるし、そう思ってたらいつの間にか隣に菜々さんがいるしで頭の整理が追いつかなかったな。
挙げ句の果てに姉さんが急に戻って来たかと思えばそのまま車に乗せられるし結局、何がしたかったんだろう。
でも、大学かぁ・・・どこに通うか正直悩んでたんだよな。里奈さんから貰ったパンフレット、後で見て見るか。
っと、そろそろ学校に行かないと遅刻するな。
家を出ると、珍しく外には誰もいなかった。なんか調子狂うな・・・って、そんな事気にしてる場合じゃないか。
うおっ!ここの道工事中かよ、仕方ないちょっと遠回りになるけどこっちから行くか。
にしても今日はなんかついてないな、いつもならこんな事にはならないんだが。
その時、優の近くを一台のリムジンが通り過ぎて行ったのだが、何故か近くでリムジンが停まっていた。
そして優が近くを通り過ぎるとリムジンの窓が開いた。
「あ、やっぱり君だったのね!」
「里奈さん?おはようございます」
「うん、おはよ。あれ、君ってここの道だったの?」
「いえ、それが今日に限って道が工事中で」
「ふーん・・・それなら車乗って行きなよ」
「え、いやいや。それは流石に」
「でも、急いでるんでしょ?」
「・・・走れば間に合うかと」
「へ〜・・・この先の歩道も工事中みたいだけど?」
「え」
「乗って行く?」
「・・・お願いします」
この先も工事中とか今日どれだけ運が悪いんだよ・・・もう自分の運の低さに嫌気が差すな。
俺は俯きながらリムジンへ乗り込んだ。リムジンの中には里奈さんの他に菜々さん、そして亜衣さんも乗っていた。
こ、これはなんというか気まずい。早く学校に着いてくれ!
ひたすら無心でいる事数分、いつの間にか学校に着いていた。
ふぅ、これでようやく学校に行ける。学校ってこんなに良いものだったっけ。
でも、俺は一つだけ忘れていたことがあった。そう、亜衣さんも一緒に乗っていた事を。
その事を忘れ、リムジンから出ると目の前で燐と玲狐が歩いていた。
どうやら時間には間に合ったようだな。心から安心していたその時だった。
「優さん、待ってくださいよ。私を忘れないでください!」
「あ、すまん。すっかり忘れてた」
「あれ、優くんじゃんおはよう」
「お、玲狐に燐か。おはよう」
「あの、優さん。どうして亜衣さんと二人で登校を?」
「実はな、いつも通ってる道が工事中で通れなくて困ってる時にたまたま会ってな、そのまま車に乗せてもらってたんだ」
「あの、私達が来る時には工事なんてしてませんでしたよ?」
「うん、私も一緒にいたからわかるけど無かったよ?」
「え、俺の見間違いか?でも、俺は確かに見たんだが・・・って、亜衣さんどこ行った?」
「会長さんならもう学校に入っていったよ」
「・・・私達も行きましょう。聞き出すのはいつでもできますし」
「それもそうだな」
俺と玲狐はさっきの出来事をそんなに気に止める事はなかった。ただ、俺が行く時間が悪かっただけなのだから。
そう、もう少し早く出ていればこんな不幸に会わずに済んだはずなのだ。
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