第86話 破天荒な偶然
突然現れた玲狐と共に、ウォータースライダーを滑っていった。その間、玲狐はずっと笑顔のまま俺のことを見つめ続けていた。
そして滑り終わると、玲狐に手を引かれビーチエリアに連れていかれた。
「それじゃ、この状況について説明してくれるかな?」
「これは、だな。先生からチケットを貰ってそれで丁度いいから生徒会のみんなで行こうってなって」
「ふーん・・・」
「そ、それよりもなんでお前もここにいるんだよ。お前、家族で旅行に行ってたんじゃなかったのか?」
「たまたまここの近くに来てたの。それで、大きいプールがあるって聞いて、せっかくだから行こうって」
「そ、そうなのか」
「そう、私がここにいるのはただの偶然よ」
「そ、そうか、じゃあ俺はこれで」
「そうね、みんなを待たせるのも悪いしね」
「え」
「え?」
「お前は家族のところに戻るんじゃないのか?」
「何言ってるの?優くんと会ったからには一緒に行くよ。それに親にはもう言ってるし」
「はぁ・・・わかったよ」
玲狐を連れて燐達の元へ戻り、軽くみんなに事情を話してから、再び俺は流れるプールに入って行った。
ふぅ、やっぱりいいなぁ。何も考えずにぼーっとしながら流れて行く。
さっきの出来事も無かったことになったらよかったんだがな。
しばらく流れるままに流れていると、七海がこちらに向かって来ていた。
「ゆ、優さん。そろそろお昼にするそうですよ」
「そうか、後で行くから先に行っててくれ」
「あ、あの、今回は会長さんが全員分奢ってくれるらしいですよ」
「ん、そうなのか?なんか悪いな」
「こ、ここのお店が会長さんのお家と繋がってるらしくて・・・」
「あー・・・なんとなく分かったわ」
プールから上がって、みんなが集まっているイートインコーナーへ向かって行った。
そういえば亜衣さんもお嬢様だったな、すっかり忘れてたけど。
まぁ、普段からそんな姿を見ないから忘れかけてただけだが。
それにしても、たくさんあるな。ハンバーガーに、焼きそば、かき氷にカレーライス。
他にも色々あるが、どれを食べるか本当に迷うなぁ。悩んだ末、俺は焼きそばを選ぶことにした。
やはり、こういうところに来たらつい食べたくなるんだよなぁ。
うん、美味い。やっぱこういう所で食べる焼きそばは格別だな。もう食べ終わってしまった。
ここはもう一つ、いっておくか!
まだまだ残っているテーブルから俺は、かき氷を持っていった。
かけるシロップは・・・イチゴかな。
んー、美味い!冷たい氷に甘めのシロップが抜群に合うな!!
「あら、優さんもかき氷食べてたんですか?」
「おう、お前も貰ったんだな。何味にしたんだ?」
「私はレモンにしてみました」
「へぇ、一口もらってもいいか」
「えぇ、構いませんよ。はい、どうぞ」
「お、おい。燐?み、みんな見てるんだが?」
「構いませんから。どうぞ」
「そ、そうじゃなくてだな・・・」
「あ、あの、腕が疲れるのでお早めに」
「・・・あむ。う、うん。美味いな」
「それでは、優さんのもいただけますか?」
「わ、分かってるよ。ほら、早くしてくれ」
「ふふ、ありがとうございます」
「ちょっとちょっと!!二人とも何してるの!?」
「何をって、優さんからかき氷を一口もらおうと」
「ダメダメダメ!!」
「別にいいじゃない。あなたもやったんでしょう?」
「それはそうだけど!!」
あぁ・・・だからこの二人揃ってるときにこういうことしたく無かったんだよなぁ・・・
常にうるさいのに、他の人とちょっとくっつくだけで玲狐が色々と文句いうんだよなぁ。
その意図も燐は汲み取ってくれると思ったんだがなぁ・・・あ、あの顔あいつ、わざとやったな。
くそ・・・せっかくゆっくりできると思ったのに、またあの二人をなだめないといけないのか。
夏休みぐらい休ませてくれぇ・・・
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