第80話 破天荒な体育祭再び 前編
いよいよ迎えた体育祭当日。人が集まるにつれて、どんどん賑やかになっていった。
俺達生徒会と実行委員は登校時間より早めに来て、用具の準備やテントの設置などをしていた。
今はクラスに戻って来ているが、出欠を取り次第またすぐにテントの方へ戻らなければならない。
体育祭では生徒会が司会進行を任されているので、持ち場をずっと離れている訳にもいかないのだ。
出欠確認を終えて、俺と燐がテントに戻ると他のメンバーも既に集まっていた。
生徒会のメンバーも全員集まったことを確認し、校内アナウンスを掛ける。
『まもなく、開会式を始めます。生徒の皆さんは入場の準備をしてください』
ふぅ、開会式の担当は俺か。緊張するな、ちゃんと噛まずに言えればいいんだが。
俺は椅子から立ち上がり、ゆっくりと深呼吸をしていた、その時だった。
「やっほー!!元気にしてた?」
「り、里奈さん!?」
「え、お姉ちゃん!!何でここに!?」
「いやぁ、今年はどうなるか気になってさ〜。でも、緊張はほぐれたでしょ?」
「あ、確かに・・・いつの間にか気持ちが楽になってました」
「お姉ちゃん、まさかこの為に・・・」
「ううん、偶然だよー。それじゃ、私はこれで。最後まで見てるから頑張ってね〜」
「あ、はい!」
・・・行ってしまった。突然現れて、去っていく嵐のような人だ。
でも、みんなの緊張もほぐれてるし万全の状態で始められそうだな。
よし、まずは目の前の事に集中だ、頑張ろう!!
『ただいまより、体育祭開会式を始めます』
さっきの里奈さんの登場により、緊張がだいぶ減っていた俺は、動揺する事なく開会式を行うことができた。
無事に開会式を終え、いよいよ競技に入る。ここから生徒会はそれぞれの役割に分かれる。
午前では、俺と燐が選手の誘導とスタートの合図。テント内では七海が各クラスの得点をまとめ、亜衣さんと委員長がアナウンスを行う。
早速俺達は最初の種目の100m走のスタンバイに入る。
まずは一年生を4列になるように並べ、座らせる。
その時、偶然美玖と目があった。美玖がものすごい勢いで手を振って来たので、周りに見つからないよう小さく手を振り返した。
そして、テントの方に準備完了の合図を送り、アナウンスを待つ。
『これより100m走を始めます。まずは一年生からです』
俺たちは早速第一走者達を立たせて、先生から借りたスターターピストルを構える。
「位置について、よーい、ドン!」
ついに体育祭が本格的に開始した。にしてもこのピストルやってみたかったんだよなぁ。
まさか本当にできる日が来るとは・・・
おっと、感動に浸ってる場合じゃないな。次の組の準備もしないと。
一組目が全員ゴールしたことを確認した後、燐からのOKサインが出るまで待つ。
・・・よし、それじゃ二組目もスタートさせるか。これを、三年生の最後まで繰り返すだけだ。
意外に面倒くさいかもしれない・・・まぁ、俺が任されたことだし、最後まで責任持ってやらないとな。
二時間ほどやり続け、ついに三年のラストまで来た。
やっている人たちには一瞬だったのだろうが、俺は永遠に感じてしまってた。
でも、とりあえずはこれで最後だ。
次の種目は、パン食い競争か。ピストルの役、燐に変わってもらおうかな。
「なぁ、スタートの役交代しないか?」
「いいえ、優さんが自ら引き受けたのだから、最後まで頑張ってくださいね」
まぁ、確かに自分から引き受けたけどさ・・・流石に変わってくれても良かったじゃないか?
ん、燐が何か言ってるが・・・なんて言ってるんだ?遠すぎてわからん。
とりあえず今の仕事に集中するか。
再びテント側に合図を送り、アナウンスをかけてもらう。この間にまた第一走者組を立たせる。
パン食い競争出る人が羨ましい。この後にパンを食べる天国が待ってるしな。
あぁ、いろんなパンが吊るされてる。来年は選手サイドで出たいな・・・
しかし、パン食い競争は割と速く終わった。と言っても、パン食い競争は選択種目なため、やる人が限られて来るのだ。
これはラッキーだった。さっきよりも短い時間で終わった。全員が終わったことを確認し、再びテントへ戻っていく。
「優くん、ご苦労様」
「亜衣さん。これやるの中々キツイですね」
「来年は改善が必要ね」
「ともかくこれで一旦休憩ですよね?」
「えぇ、それで構いませんよ」
「それじゃお先です」
「お昼食べたらすぐ戻って来てねー」
「わかってますよー」
こうして体育祭の前半が終了した。
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