第78話 破天荒な体力測定
今日は午後から、クラス順に分かれて体力測定が行われる。初めは俺達1組からだ。
みんなは面倒くさがっていたりしていたが、俺はこの日をずっと楽しみにしていた。
実は、今日の体力測定で燐と勝負する事が決まっていた。
前回の体力測定の時に、俺は興味本位で燐の100mのタイムを聞いていた。すると、俺よりも燐の方が速かったのである。自分でも結構速い方だとは思っていたのだが、燐に負けていた事実は変わらない。そこで俺は来年に一度だけ勝負をしようと頼み込んだ。
すると、燐は了承してくれたが勝った時には何でも言うことを聞いて欲しい、そう言われた。俺は負ける気が無かったので即了承した。
そして、今日がその時だ。俺はこの日のために姉さんにアドバイスを貰っていた。
失った代償は大きかったが、得たものもまたデカかった。
隣のレーンには燐がスタンバイしていた。
同じ番で走る事になるとは思わなかったがそれも好都合。全力で行くぜ!
さぁ、燐よ俺の走りをとくと見るが良い!!
「位置について、よーい、ドン!」
スタートの合図と共に、一気に駆け抜ける。やはり練習した甲斐があった。去年より速くなっている!そう感じていた。
しかし、いつの間にか燐に順位を追い越されていた。そして、一位のままゴールして行った。
燐に先に行かれたものの、俺も2位で終えることは出来た。
「去年よりも速くなりましたね、優さん」
「お前、また速くなったのか?」
「優さんが本気ならば、こちらも本気で返しますよ」
「恐れ入ったぜ・・・」
「では、約束の方よろしくお願いしますね」
「あぁ、わかってるよ」
その後、他の測定も順調にこなしていった。
シャトルランに上体起こし、反復横跳びなどなど全てやり終えると流石に体がクタクタになった。
もう動きたくない、と思っていても放課後には生徒会がある。
今日だけは家に早く帰りたい、そう思っていた時だった。亜衣さんからメールが届いていた。
どうやら今日の生徒会は無くなったみたいだ。どうも体力測定で疲れてしまったらしい。
まぁ、今回ばかりは俺もこれで良いと思う。俺も疲れ切っていたしな。その後、委員長がうちのクラスに来て理由に関して愚痴っていたが、おそらく明日委員長も俺たちと同じ事を言うんだろうな・・・
久しぶりに早く帰れるので少しだけ気分が良くなっていた。その時
「優さん」
「うぉ!燐、急に後ろから出てこないでくれよ」
「すみません、てっきり気づいているかと思って」
「いや、無理だから・・・」
「まぁ、そんなことは置いておきましょう。約束のことですが」
「あぁ、そうだったな。俺は何をすれば良いんだ?」
「次のお休みの日、私の家に来てください。内容はその時にでも」
「ん、わかった。それじゃ帰るか」
「はい」
俺達は二人で学校から出た。その数分後、帰宅途中に俺を見つけた玲狐が、凄まじい勢いで飛びついて来た。
その時にまた、どうして背後の気配を感じ取れないのか、と燐に言われたのだが・・・
普通の人間はそんなこと出来ないんだけどな。出来ないよな?
そう、玲狐に問いかけてみたのだが
「え、出来るよ?」
と答えられた。
なんだ、俺がおかしいのか?だんだん何が正しいのか分からなくなってきた・・・
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