第75話 破天荒な帰宅
朝の二度寝から目が覚めると、時刻は既に夜の10時を回っていた。
俺がリビングに入るなり、姉さんと母さんがこちらを向いた。
そして姉さんが勢いよく飛びついて来た。
「優!!やっと起きたのね!!」
「うわ、ちょ姉さん。苦しいって・・・」
「だってあんた、昨日帰って来なかったじゃない・・・!!どれだけ私たちが心配したと思ってるの
!?」
「・・・本当にごめん」
「あんた、昨日どこにいたの?」
「そ、それは・・・」
「まぁまぁ、璃亜その辺にしておきなさい。それより優、お腹空いたでしょう、ご飯食べる?」
「おう、食べる」
「今、温めてくるわね」
母さんが台所に戻った後、俺は席に着いた。そして、隣には姉さんが座った。
姉さんは何があったのかをずっと聞いてくる。しかし、俺が真実を話せばクレアが姉さんに何をされるか、あまり考えたくなかった。
本当は言ってしまった方がいいのだろうが、これ以上姉さんを怒らせるのもまずい。
なんとかして誤魔化すために友達の家に泊まっていたと嘘をついたが、姉さんの目はまだ俺を疑ったままだった。
俺が理由を言い切ったタイミングで母さんが夕飯を運んで来た。
そこで姉さんとの話し合いは中断された。ある意味タイミングが良かったので母さんには感謝しておかないと。
姉さんが自室に戻ったタイミングで俺も夕飯を食べ始めた。
クレアのとこの料理も美味かったが自分の家の料理が一番だな。
夕飯を食べ進めていると、母さんがこちらを見て、笑いかけていた。
「どうしたんだ?母さん」
「いいえ、なんでもないわ」
「そうか、ならいいんだけど」
「今回の事、燐ちゃんから聞いたわ」
「・・・そうか」
「その事を伝えに来てくれた時の燐ちゃん、すごかったわよ」
「そうなのか?」
「えぇ。もう顔中汗だくで息も切らしてて、でもあなたのことを第一に考えていたわ。今度会った時にはちゃんとお礼言いなさいね」
「あぁ、わかってるよ」
夕飯を食べ終え、俺は再び自室に戻った。
携帯を開くと、未読メールや不在着信が大量に溜まっていた。
メールを確認しながら処理して行くと、クレアからメールが届いた。
届いたメールを見ると、また逃げたのですか?とだけ書かれていた。
これはもう返信はしなくてもいいと思い、そのままメールを削除した。
メールの整理を終えた後、布団に倒れこんだ。
今回は色々とありすぎて何かを考える余裕が全くなかった。
ただ、分かることはクレアは玲狐のような要注意人物になっているということだった。
過去にも玲狐にやられたことがあったとはいえ、今回は玲狐の上をいっていた。
次もまた何かされるんじゃないかと思うと体が震えてしまった。
今は、燐が俺の全ての頼りだ。何かあれば必ず助けてくれる、そんな救世主的な存在になっていた。
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