第73話 破天荒な誘拐
昨日は散々だったな・・・。クレアに呼び出されたかと思えば姉さん達に捕まって、家に帰れずそのまま温泉に。
そして温泉でくつろいでたら燐が一緒に入ってるし、夜は姉さん達が酔っ払って介抱するのが大変で、結局疲れは取れずじまい。
疲れ果てて布団に倒れこんで寝てたみたいだけど、起きたら時刻は既に6時を過ぎていた。
今から出ても学校に間に合うか間に合わないかの瀬戸際だった。
急いで姉さんを起こし、車を出させた。しかし、幸運な事に制服を着たまま捕まったので、遅刻しなくて済みそうかもしれない。
だが、何故かリュックに入れていた教科書が今日の授業のものに変わっていた。
変えた記憶がないんだがなぁ。まぁ、先生に怒られることは無くなったし、いいか。
二時間後、なんとか学校に着くことができた。姉さんと別れ、燐と一緒に教室へ向かう。
二人で教室に入ると、一瞬だけクラスにざわめきが走ったが、俺と燐が来た後に先生も入って来たのですぐに鎮まった。
授業が終わり、やっと家に帰れる。そう思っていた。
玲狐達も今日は用事があるといい、珍しく一人で帰り道を歩いていた。
すると、目の前にクレアが立っていた。
「どうしたんだ、クレア。こんなところで」
「私優くんのことずっと待ってたんだ。はい、クッキーあげる」
「おぉありがとう!早速いただくよ」
「うん。それでさ、優くん。昨日はどこに行ってたの?連絡もつかなかったし・・・」
「あ、あぁ。そのことはすまない。実は姉さん達に捕まっててな」
「私、ずっと待ってたのに。優くんならきっと来てくれるって。ずっと、ずっと・・・」
「・・・クレア?」
「でも、私昨日玲狐ちゃんに言われて分かったんだ。欲しいものがあるならそれはどんな手段を使ってでも手に入れるべきなんだって」
「お前、一体何を言ってるんだ?」
「・・・ごめんね」
「え、お前何を急に謝って・・・」
あ、れ・・・なんか意識が・・・。なんだ・・・こ・・・
「えへへ、一緒に帰ろうね。優くん」
目を覚ますと、俺は見知らぬ部屋にいた。そして、腕を柱と鎖で繋がれていた。
鎖を解こうと腕を動かしてみたがびくともしなかった。叫んでみても自分の声が反響するだけ。
声を出していて少し疲れてきてしまったので、一度辺りを見渡した。
しかし、ここには何も物が置かれていなかった。
何があるか全く予想がつかないので、無駄に体力を使わないようにおとなしくしていた。
すると、数分後扉が開いた。その扉から姿を現したのはクレアだった。
「あれ、優くん。もう起きてたの?」
「クレア!?なんでここにいるかは知らないがちょうどよかった!この鎖、解いてくれないか?」
「うーん・・・嫌!」
「な、なんで・・・」
「だって解いちゃったら優くん、またどっかに行っちゃうじゃない」
「またって・・・だから昨日はすまんって」
「ううん、もういいの。私決めたから。優くんはここにずーっといるの」
「は!?意味わかんねぇよ!!」
「ここはね、私の秘密の部屋なの。音も聞こえないし、普段は扉も隠されてるからここは誰にも開けられない」
「クレア、お前・・・」
「私と一生一緒にいましょうね、優くん」
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