第72話 破天荒な介抱
落ち着け、まずは状況を整理しよう。俺は姉さん達を見送った。その後、誰もいないことを確認して露天風呂に入った。
そして温泉でゆっくりしていて、飲み物が欲しいと思ったタイミングで隣に燐が飲み物を持って温泉に入っていた。
うん、全く理解できない。何処かに見落とすスキなんかあったか?いや、無いな。
「あの、優さん。どうかしましたか?」
「いや、お前のことで悩んでたんだよ」
「何かおかしいことでもありますか?」
「あーうん。今の状況そのものだね」
「あ、もしかしてお茶の気分じゃありませんでした?」
「うん、全くわかってないな」
「あの、優さん?」
「はぁ、もういいか。お茶貰うよ」
「あ、はい。どうぞ」
「・・・美味いな」
「景色も良いですしね」
「あぁ、そうだな。ところで、どうしてここにいるんだ?」
「姉さんに誘われたので」
「あれ、でも受付では三人って・・・」
「その時は三人だったんじゃ無いですか?」
・・・うん、もうこの事はなかった事にしようか。
なんか考えてる間に段々わからなくなって来た。もう外の景色を見て今あった事忘れよう。
ここの景色だけは最高だな。お茶も飲めるし、申し分ない。だけど、物凄く気まずい。
燐がタオルを巻いてくれているのが唯一の救いだが、隣はそんなに見れないな。
というか燐はなんとも思わないのかと思い、隣を見ると燐と目が合ってしまいすぐさま顔を逸らした。
「どうかしました?」
「嫌、なんでもない。俺は先に上がるわ」
「私はもう少し入っていますね」
「おう、わかった」
露天風呂から上がり、着替えた後、再び部屋を見回す。
どうやらまだ姉さん達は帰って来てはいないようだ。俺がホッとしている間に姉さん達が帰って来た。
もう少し温泉に入ってたら危なかったな。
「たっだいま〜!!」
「姉さん、おかえり」
「燐ちゃんもう来てるみたいね」
「えぇ、まさか燐も呼んでるとは思いませんでしたよ」
「あー、言い忘れてたね。ごめんごめん」
「いいよ、別に謝らなくても。あ、燐は今露天風呂に入ってますよ」
「おー、燐ちゃん露天風呂入ってるんだー後で感想聞いてみよー」
「・・・優くん、燐ちゃんとの露天風呂どうだった?」
「え、奏蘭さん?い、一体何のことを?」
「私は全部知ってるのよ。それに、燐ちゃんから連絡もらってるし」
そう言いながら、奏蘭さんは燐とのやり取りが書かれたメールを見せて来た。
「・・・全部筒抜けってわけですか」
「で、どうだった?ときめいた?」
「いや、急に隣にいたんで恐怖しかなかったです」
「あー・・・やっぱりそうなっちゃうかー」
「あの、ずっと気になってたんですけど燐が急に出てくるのって何か理由あるんですか?」
「うーん、今はまだ言えないけど私から言える事は、燐がやってる事は私が教えてるんだよ」
「奏蘭さんが、ですか?一体何のために」
「それは乙女の秘密だよ、優くん」
「はぁ、そうですか」
「あー!!優が奏蘭とまたイチャイチャしてる!!」
「げ、姉さん。いたのか」
「え、今露骨に嫌がったよね!?」
「優くん、お姉さんと一緒に散歩にでも行きましょうか」
「私もお供しますよ、優さん」
「燐!?いつの間に」
「ちょっと、私も行くから!!!」
「姉さんちょっと黙って」
「ちょっと、私にだけ冷たくない!?」
文句ばかり言う姉さんをなだめながら外に出て、旅館の周りを歩いてた。
途中で饅頭屋に寄り、みんなで温泉まんじゅうを食べた。
歩いていると小腹も空いてくるし、丁度いいな。旅館に戻ると、既に部屋に料理が並んでいた。
タイの生け作りや鍋、デザートにリンゴやモモなどたくさんの料理が並んだ。
これを四人で食べ終えた後、姉さん達は再び温泉に入っていた。
と言っても室内の露天風呂だが。姉さん達が風呂に入っている間、残っていた俺はさっき買って来た饅頭を食べながらテレビを見ていた。
しばらくすると、燐だけが戻って来た。どうやら姉さん達は酒を飲み始めたらしい。
これは先に布団を敷いておいたほうがよさそうだな・・・。
数分すると、案の定姉さんが酔っ払って出て来たので絡んでくる姉さんを引き離しながら水を飲ませてから布団に落とした。
奏蘭さんは普通に部屋に戻って来てはいたけど、足取りがおぼつかなかった。
奏蘭さんに肩を貸しながら布団まで誘導し、寝かしつける。姉さんとの扱いの差が酷い?・・・日頃の行いだと思うよ。
その後、俺達も布団に入って眠りについた。
・・・そう言えばクレアに何も言えずにここに来てたけど、大丈夫かな。
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