第71話 破天荒な温泉
クレアに連れられながらクレアの家に向かっていた。その途中で、コンビニに寄ると言っていたのでコンビニに入った。
クレアがコンビニでの買い物を済ませている間に俺は外に出ていた。
すると、俺の前に車が一台止まった。出てくる人の邪魔になるかと思い右に避けると、突然自分の体が浮いた。
まさに一瞬の出来事で、自分の身に何が起こっているか理解する前に、先程の車に乗せられていた。
クレアが会計を終え、外に出た時には既に優の姿はなかった。その代わりそこに玲狐が立っていた。
「あれ、クレアちゃん。どうしたの?」
「あの、優くん知りませんか?さっきまで外にいたんだけど」
「あぁ、優くんならもういないよ〜」
「そ、そんなはず無いわ!!だって私が家に誘ったのに・・・」
「嫌だったんじゃ無いかな?」
「れ、玲狐ちゃん。今日はよく冗談を言うのね」
「冗談?何のこと?」
「な、何でも無いわ。と、とりあえず私は優さんの自宅に向かうので・・・」
「今日は帰ってこないよ」
「・・・どうしてそんなこと分かるの?」
「分かるよ、だってこのこと教えたの私だもん」
「教えた?一体、何を言ってるの?」
「優くんが、あなたに連れて行かれそうだってお姉さんに」
「う、嘘・・・」
「凄かったよ、電話したらすぐ切られちゃってさ。あの人の行動力なめてたよ」
「だ、だけど優くんが帰って来ないなんて証拠は」
「あるよ」
「え?」
「あの人達の事だし明日まで絶対に帰って来ないよ」
「そ、そんな・・・」
「まぁ、私に隠れて優くんを誘ったのが悪かったかな」
「・・・今日は帰ります」
「うん、また明日ね。クレアちゃん」
「っ・・・えぇ、また明日」
「でも、優くん帰って来ないんじゃ今日は暇だな〜」
その頃、車に乗せられていた優はこの車が姉の車だということを思い出していた。
運転席を見るとそこにはやはり姉が座っていた。
知らない人では無いと一安心した後、なぜ突然連れて来られたかが疑問に残っていた。
すると後ろから突然抱きつかれた。一瞬驚きはしたが何か既視感を感じ、後ろを振り向くとそこには奏蘭さんがいた。
「あ、優くん久しぶり。あの時以来かしら?」
「ど、どうも奏蘭さん」
「優、やっと正気を取り戻したか!!!」
「姉さん・・・どうしてあそこに居たんだ?」
「あー・・・急に温泉行きたくなってね」
「なら一人で行ってくればよかったじゃないか」
「一人で行くのなんて寂しいじゃない」
「それで奏蘭さんがいるのは分かったけど、俺必要なく無いか?」
「優くん、もしかして私達のこと嫌いなの?」
「違いますよ!!」
「じゃあ問題ないわね」
「・・・もうわかりましたから。そろそろ離してください」
「あぁ、そうね。ごめんなさい」
「もう少しで着くわよ」
「温泉とか結構久しぶりだなぁ」
「結構広いみたいよ」
「へぇ、楽しみだな」
「ほら、着いたよ」
「おぉ・・・って、ここ七海の家じゃないか!!」
そう、姉さん達に連れて来られた先は七海の実家の旅館だったのだ。
にしても、前に来た時よりもでかくなったなぁ・・・。
姉さんが先に旅館に向かって行ってたので慌てて姉さんに着いて行った。
旅館に入ると、何人ものお客さんが受付に居た。
どうやら人気になったようで、俺たちが来た後も次々とお客さんが入って来る。
しばらく待っている間に受付の順番が俺たちに回って来ていた。
すると、店員の人が何かに気づいたのか別室に移動させられた。
中に入るとそこには、七海の両親が居た。
「あら、璃亜さんこんにちは」
「どうも、女将さん」
「そちらの方は?」
「あぁ、私の友達の奏蘭よ」
「初めまして、奏蘭です」
「まぁ、礼儀正しい子ね。それで今日は三人でお泊まりかしら?」
「えぇ、私が温泉に入りたかったので付き添ってもらいました」
「そうでしたか。では、先にお部屋にご案内させていただきますね」
女将さんの案内のもと、三階の奥の部屋に案内された。そこは、明らかに他の部屋とは違う雰囲気を放っていた。
外の景色を窓から眺めることができるが、なんと外にはお風呂が設置されていた。
まさか、露天風呂が部屋にあるなんて思いもしていなかった。
「露天風呂なんてあったのね」
「これは、お酒が飲みたくなるわね・・・」
「いや、姉さん。酒は飲まないでくれよ・・・」
「それではごゆっくり」
「とりあえず温泉行きましょうか」
「優くんはどうします?」
「あー、俺は後で行きますよ」
「そう、それじゃ先に行ってるわね」
「おう」
・・・よし、姉さん達は行ったか。俺は先に露天風呂を堪能させてもらおう。
おぉ、いい景色だ。こんな中で入ったらさぞ気持ちいいんだろうな・・・
ふぅ、落ち着くな。景色は綺麗だし、静かでのんびりとしていられるな。
日頃の疲れも取れていく。・・・何か飲み物でも持ってくればよかったかな。
「優さん、お茶はいかがですか?」
「おぉ、丁度いいな。いただく、よ・・・」
「どうかしましたか?」
「り、燐!?」
誰もいない、そんなこと何度も確認した、したのに。
一人でくつろいでいたはずなのに、何故か隣には燐がいた。
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