第68話 破天荒な手伝い
今日は燐に頼まれ、朝から燐の家に来ていた。
何か物を作るらしく、その手伝いをして欲しいと言われ、俺も特に予定はなかったのでそれを受けた。
着替えてから燐の家に向かうと、外には数枚の材木が置かれていた。
材木を眺めていると、工具箱を持って燐がやって来た。
「あら、結構早かったですね」
「まぁやることもないしな。それで、何を作るんだ?」
「壁掛け時計です」
「壁掛け時計!?」
「なんとなくですが、作りたくなってしまったので」
「でも一から作るのって結構大変じゃないか?」
「だから呼んだんですよ」
「そうでした。とりあえずどう作るんだ?」
「ネットで調べたら作るためのキットがあるようです」
「あー、じゃあ先にそれ買いに行くか?」
「それがこちらになります」
「いや、あんのかよ!」
「話を最後まで聞かない優さんが悪いです」
「ぐっ、何も言い返せない・・・」
「とりあえずこの材木を切りましょうか。優さん、任せましたよ」
「いや、俺任せかよ!」
初めは燐にもやらせようとしたが謎の圧があったため、渋々燐からノコギリと材木を受け取った。
とりあえず何個かに切っておくか。材木を机の上に置き、ノコギリで切っていく。
その工程をしばらく繰り返し、一つの材木から五つの正方形に分かれた。
その後、ノコギリで切った部分にやすりを掛けていく。
やすりをかけ終え、机の上に全て並べた。
「お、終わったぜ・・・」
「お疲れ様です、これお茶です」
「おぉ、サンキュー」
「では次は穴を開けます。後は私がやりますので優さんは休んでいてください」
「そうさせてもらうよ」
「お茶のおかわりも机の上に置いてあるのでお好きにどうぞ」
「おう、ありがとうな」
燐は工具箱から電動ドリルを取り出し、どんどん穴を開けていく。
あいつ、切るの面倒くさくて俺を呼んだのか・・・?
その後も燐はどんどん時計を組み立てていく。
一時間後、ついに二つの時計が完成した。
「ひと段落しましたし、お昼ご飯にしましょうか」
「それもそうだな」
「では私はお昼ご飯を作ってくるので片付けを頼みますね」
「あぁ、わかった」
燐が家に戻っている間に残っている物を片付けた。
電気ドリルややすりは工具箱の中にしまい、木を切った時に出た粉を回収しゴミ箱に捨てた。
片付けも終わり、工具箱を持って燐の家に入る。
燐から工具箱の置き場所を聞き出し、元の位置に戻しに行った。
戻し終えてリビングに行くと、炒飯が置かれていた。
「簡単なものですが、どうぞ」
「おう、ありがとうな!それにしても、一皿多い気がするんだが」
「あぁ、それは姉さんのです。今は部屋で仕事中だからあとで持って行ってあげようかと」
「燐のところの姉さんはしっかりしてるなぁ。それにひきかえうちは・・・」
「そうですか?とても賑やかで楽しそうですけど」
「お互いで感じることは違うんだな」
「これを食べ終わったらデコレーションをするので、優さんはしばらくゆっくりしてて下さい」
「そうか、ならお言葉に甘えてしばらくゆっくりさせてもらうよ」
燐が作った炒飯は中々美味しかった。自分で作ったやつよりも美味しかった。
炒飯を食べ終わり、燐が洗い物をしようとしていたところを止めて、代わりに俺が洗い物を担当した。
燐には時計の製作に集中して欲しいしな。
洗い物を終え、しばらくゆっくりしていると燐が時計を持って戻って来た。
片方には花が飾られとても可愛らしく、もう片方は四葉のクローバーでデコレーションされていた。
「やっと完成しました・・・」
「おつかれさん、でも二つも欲しかったのか?」
「いえ、元々優さんのも作っていたので。これが優さんのです」
そう言うと、燐から四葉のクローバーのついた時計を手渡された。
「マジか、いいのか?」
「えぇ、もちろんです」
「ありがとう、部屋に飾らせてもらうよ!」
「えぇ、使ってくれると嬉しいです」
「さて、俺はもう帰るよ。素敵な土産ありがとうな」
「えぇ、また何か作りましょうね」
「おう、それじゃまたな!」
優は燐から貰った時計を抱え家に帰って行った。
家に帰ると、早速部屋に時計を飾った。インテリアとしての見た目は抜群だな。
部屋に緑があるのも気持ちが落ち着くし、悪くないな。
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