第60話 破天荒なお正月
朝、いつもより少し早く目が覚めた。しばらくぼーっとした後、隣のベットを見ると珍しく姉さんがいなかった。
いつもならまだ寝ているのに・・・。
そう思いながら布団から出てリビングに向かった。すると、ソファで寝ている姉さんを見つけた。
なんと言うか、新年早々変なものを見た感じだな。
大方、あの後飲み過ぎて部屋に戻らずそのまま寝てしまったのだろう。
とりあえず、起こしてあげようとした時、姉さんの目が開いた。
「・・・おはよう、姉さん」
「お、おはよう。優」
「いつも飲み過ぎないで、って言ってるじゃないか」
「き、昨日はちょっと色々あって」
「色々、ねぇ・・・」
少し考えている間に姉さんはいなくなっていた。
逃げ足だけは相変わらず速い人だ。
と、思ったらまた戻って来た。しかし、明らかに顔色が悪かった。
恐らく二日酔いだろう。俺はコップに水を汲んで来てから姉さんに渡した。
やっぱり飲み過ぎだな、今度飲み過ぎたら禁止させるのも手かもしれない、と密かに思っていた。
姉さんの体調もだいぶ回復して来たところで朝食が出来ていた。
今日は雑煮だった。久しぶりに食べる雑煮はとても美味かった。
雑煮を食べている途中で玲狐たちが尋ねて来た。
初詣の誘いだったので行く事にした。
七海もどうかと誘うと、首を縦に振ってくれたので、一緒に行く事にした。
俺は急いで雑煮を食べ終わり、私服に着替え初詣へと向かった。
初詣に向かっていると、同じく初詣に行こうとしていたクレアと出会った。
クレアも仲間に入れ、初詣へと向かった。
いざ神社に着くと想像していたよりも列はそんなに長くはなかった。
だが、普段より多い事に変わりはない。
自分たちの番になるまで話しながら待っていると、順番はあっという間に来た。
賽銭を入れ、自分の願いが叶うよう祈った。
参拝を終えた後、せっかくなのでおみくじも引いて行く事に。
前に引いた時は凶だったし、いいの来てくれ!と願いながらおみくじを開けると中吉と書いてあった。
大吉よりは下だが、凶じゃないだけいいだろう。
なになに、病に注意?あぁ、去年も油断してて風邪引いたしな今年は気をつけるか。
他の奴らにも聞くと、玲狐と燐は大吉、七海とクレアは俺と同じく中吉だったらしい。
玲狐はおみくじを見てなんだかすごくニヤニヤしていたがよほどいいことが書いてあったのだろうか、少し気になるな。
初詣を終え、家に帰ると何故か奏蘭さんがまた家にいた。
そしてこちらに寄って来たので警戒していると、ポチ袋を渡された。
「はい、お年玉」
「あ、ありがとうございます」
「後、後ろで震えてる子と驚いてる玲狐ちゃんと燐ちゃんにも」
「な、なんで姉さんが!?」
「だって今年は私ここにいるし、お邪魔する機会も増えるかなと思って新年の挨拶に来てたのよ」
「え、待って。姉さん・・・ここに居るの?」
「えぇ。今度の仕事はこっちの方が近いから」
「お父さん達も知ってるの?」
「えぇ、昨日の夜に言ったもの」
「え、えぇ・・・」
「燐ちゃん、そんなにがっかりしないで・・・」
「あ、みんな帰って来たね!!おせちできたって!」
「え、姉さんこのタイミングで入ってくるのか!?」
「あれ、玲狐ちゃんたちも居るんだ!上がって行きなよ〜、おせちたくさんあるからさ」
「あ、は、はい。お言葉に甘えて」
「優さん、私もいただくわ」
「お、おう。どうせたくさんあるだろうしな。食って行くといいよ」
「それじゃあ、食べましょう!!」
この時、俺は見逃さなかった。
姉さんが左手でお酒のボトルを持っていたことを。
そして、後ろでクスクスと笑う奏蘭さんを見て、姉さんへの尊敬度がまた一つ下がった。
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