第5話 友達の家と破天荒な勘違い
燐を見送ったあと俺は家に戻り居間へと向かった。
テーブルには既に夕食が並んでおり、母さんが俺の帰りを待っている状態だった。
申し訳ないなと思いながら席に着いた。
今日の夕食は唐揚げとサラダのようだ。いつもよりはちょっと量が少なめだが作ってもらえるだけでもありがたいので気にしないでおこう。
「いただきます」
母さんの唐揚げは衣がさくりとしていて中の肉も丁度いい柔らかさでたまらない。
サラダもいろいろな野菜が入っておりどれも綺麗に盛り付けられている。
こんな料理が毎日食べられるのは最高だな、と思いながら食べ進める。
そして食べ終わり皿を片付けようとすると。
あ、優今日デザートがあるんだけど食べる?」
「うん、食べるよ」
なるほど、今回量が少なかったのはこういうことか。
「はい、今回はチョコレートケーキよー」
チョコレートケーキ、俺の大好きなケーキだ。あの甘さがたまらない。
母さんからケーキを受け取りフォークでいただく。
うん、うまい。さすがは母さん何を作っても美味しい。
最高の母さんだよ。今度何かお礼でもしないと。
食べていると横にコーヒーが置かれた。
コーヒーと相性も良くすぐに食べ終わってしまった。
「ごちそうさま。それじゃ部屋で勉強してくるよ」
「えぇ、わかったわ」
そう言って部屋へと戻る。
一通り今日の勉強を終わらせ風呂に入る。明日のことを考えながらゆっくりと浸かっていた。
風呂上がりに牛乳を飲もうとしたら電話が鳴った。
『もしもし』
「おぉ、レン。どうした?」
『次の実行委員会っていつだっけ』
「次は確か来週だぞ」
『そうか、わかった。それまでに準備運動の項目を考えとけばいいんだな』
「そうだ、忘れんなよ」
『おう、そんじゃまた学校で』
「おう」
電話を終え牛乳を飲み干す。
そして部屋に戻る途中でふと思い出した。
そう、妹が帰ってくるということを。
妹が帰ってくるのが明日だ。だがその日はクレアの家に泊まることになっているので抜かりはない。
だがさすがに泣いてしまいそうなので妹宛に手紙を書いておくことにした。
書いておけばいくらか大人しくなるかと思い早速書き始める。
合宿で家を空けていた時の出来事でも書いておこう。
場合によっては玲狐と燐が説教食らいそうだがたまには罰を受けてもらわないとな。
書き終えた紙を封筒に入れ机の上において置く。こうしておくだけで十分なのだ。
妹は合鍵を持っているからな。いないと知ったら間違いなく入ってくるだろうし。
目立つところに置いておいたほうがいいだろ。
さて、やることもやったし寝るか。明日こそゆっくり寝たいものだ。
目が覚め、時間を確認する。時刻は六時この前の目覚ましのせいで早く起きてしまったな。
階段を降り居間へと向かう。今日は珍しく玲狐が家にいなかったなと思いながら用意されていた朝食を食べる。
朝食を食べ終わり身支度を整えている時携帯を確認すると玲狐からメールが入っており燐と先に行ってるとのことだったのでそのまま家を出ることにした。
久しぶりに一人で通る通学路だがいつもより静かで落ち着くな。そんなことを思っていたのもつかの間
「優くーん」
クレアが手を振って待っていた。クレアは家とは逆方向のはずだが・・・
「おはようございます、優くん」
「おう、おはよう。どうしてここにいるんだ?家は真逆だろ?」
「玲狐さんに優くんを一人で行かせるのは可哀想だと連絡が来まして」
あいつ、余計なことを・・・
「さ、早く学校に行きましょう」
どうやら静かな時はここまでらしいな
そのままクレアと学校へ向かった。玲狐たちがなぜ先に行ったかは本人たちに聞いておくか。
学校に着き教室のドアを開けると俺の席に座っている玲狐がいた。
俺は自分の席に向かいそのまま玲狐と対面する。
「玲狐、教科書とか入れたいからどいてくれないか?」
「優くん、今日美玖ちゃん帰ってくるんだよね?」
「そうだが、それがどうした?」
「美玖ちゃんから離れるために友達の家に泊まりに行くのはいいけどどうして私じゃないの!?」
「もしかしてクレアさんが好きだからクレアさん家に泊まるの!?ねぇ、どうしてなの!?」
「おい、落ち着けって。それには理由があるんだよ」
「何よ、言ってみなさいよ」
「お前の家と俺の家隣同士だろ、それだったらすぐに見つかっちまうだろ」
「・・・あ」
「だからクレアの家にしたんだよ」
「なーんだ、そっかー。それなら仕方ないね。ごめんね」
「わかったから早くそこどいてくれ。荷物が入れられないだろ」
そういうと玲狐は素直にどいてくれた。これでようやく荷物を下ろせる。
そのまま席に着き教科書などを入れ始める。
「クレアさん、優くんのことよろしくお願いしますね。」
「えぇ、もちろん」
玲狐・・・お前は俺の母親か何かかよ。
そうしているうちに授業開始のベルが鳴った。
「よーし、それじゃ授業始めるぞー」
朝から勉強というのはやはり面倒くさいな。せめて昼からにしてくれればいいのに。
だが今日は午前中で授業が終わる珍しい日だ。早く終わることに胸を躍らせつつ授業に取り組む。
本当は今日話し合いをする予定だったがレンに急用が入ってしまったため中止となった。
授業もいつもより短いためあっという間に授業が終わってしまった。
「今日の授業はこれで終わりだー、気をつけて帰れよー」
気づけばもう放課後だった。俺は荷物をまとめクレアのところへと向かう。
「あ、優くん早いわね」
「ほら、さっさと帰ろうぜ」
「うん!」
俺とクレアはそのまま教室を出た。後ろでは玲狐が睨んでいた気もしたがとりあえず今はクレアの家へ向かうことを優先した。
下駄箱から靴を取ろうとした時に手紙が靴の上に置かれていた。手紙を開き確認すると
『今度何か奢ってもらいますからね』と
燐と玲狐から一言だけ綴られていた。今度の休みにでもどこかに連れて行ってやるか。
「優くーん、早く行きましょー」
おっと、待たせるわけにもいかないな。
足早にクレアの元へと向かう。とりあえず向かうとしようか。
クレアと一緒に帰っている途中に
「そういえば、なんで妹が帰ってくるってだけで避難しようとしたの?」
確かにそこは気になるよな、昨日詳しく言わなかったし。
「実はだな、美玖は玲狐たち以上にスキンシップが激しいんだよ。四六時中ずっとひっついてくるし」
「そ、それは確かに大変だね」
「まぁ、そのほかにも色々とあるわけだが」
クレアに美玖のことについて色々と話していたら
「優くん、ついたよ。ここが私の家」
どうやらついたようだ。3階建ての一軒家だなんて豪勢だな。
「さ、入って」
「お邪魔します」
思えばクレアの家に来るのは初めてだな。一体どうなっているのか楽しみではあるが、玲狐たちは大丈夫なのだろうか。
美玖が暴走しないといいんだが・・・
お読みいただきありがとうございました。