第44話 破天荒な文化祭 後編
今日もまた朝から店の手伝いがあるので、学校に着いた後に更衣室へ行き、着替えて来た。
教室に行くと、みんながそわそわしていた。
そしてドアを開けて入って来たのはメイド服を着た玲狐とクレア、そして七海の三人だった。
この三人が入って来た瞬間、歓声が上がった。
玲狐とクレアは堂々としていたが七海はまだ少し恥ずかしかったようで下を向いていた。
昨日も見てたのにまだこんなに盛り上がれるのか・・・。
さて、昨日の時点で、うちのクラスは学年一位を取れていた。
しかし油断すると二組に負けてしまうかもしれない。
なぜなら今一位である一組と二位の二組との差はほんの僅かだった。
今日の状況によっては巻き返されるかもしれない。
それだけはなんとしても止めねば・・・。
『これより、文化祭最終日を開催します。』
そうして、文化祭の最終日が始まった。
今日は昨日の反響もあってか最初から列ができていた。
そのおかげかこちらも大忙しだった。
昨日こっそり見ていたが間近で見ても七海のスピードは玲狐達に比べ、早かった。
さすがだと感心していてもその間にどんどんとオーダーが入る。
事前に用意しておいたコップに飲み物を注ぎ、さらにケーキやクッキーを乗せる。
そして出来たものを渡し、また作る。それの繰り返しがずっと続いた。
午後になり、交代の時間になった。
午後の奴らに服を渡し、教室から出た。
今日はのんびり見学しようと思っていたが、昨日の姉さんとの約束を思い出しメールを送った。
すると数秒で返信が来て、その数分後には姉さんが来た。片手に女子を連れて。
「・・・早くない?」
「あぁ、この子に道案内頼んだのよ」
姉さん、その人めっちゃ息荒いんですが・・・
って、あれもしかしてこの人昨日の。
「はぁ・・・はぁ・・・。ま、全く。昔っから、変わって、ませんね」
「姉さんその人は確か」
「そ、里奈の妹の亜衣。暇そうにしてたから引っ張って来ちゃった」
「ひ、暇なんかじゃないですよ。生徒会の仕事中でしたのに・・・」
「あー、それは悪いことしたねー。よし、じゃあ優。一緒に行ってあげて」
「は!?」
「だって一人でやるなんてかわいそうじゃない。手伝ってあげなさいよー」
「し、正直今は頼みたいです。ち、ちょっと疲れが」
「わかったよ、やるよ。その代わり後でケーキ買って家に送っておいて、姉さんの自腹で。」
「そ、そりゃないって・・・」
「今回のは自業自得だからな」
「それは私もそう思います」
「うぅ、わかったよ。帰りに買うよ」
「それじゃあ行きますよ。優さん」
「わかりました」
こうして亜衣さんの生徒会の仕事を手伝うことになった。
何をするのかはよく知らなかったので聞いてみると各クラスのお店を回って採点をしているらしい。
そういえば昨日そう言ってたな・・・。あの人食べてばっかだったから全然気づかなかったけど。
でももう生徒会審査のポイント集計は終わっているらしい。俺が行く意味あったのか?
ちょっと深く話を聞くと生徒会の仕事は嘘で、姉さんから逃げるための方法として言ったらしい。
なるほど、案外姉さんはバカなのか・・・そうだった。
せっかくの空いた時間なので色々見て回りたいそうだ。生徒会として行くときはほぼ見るだけだったらしい。
会長は満喫していたみたいだが。
まぁここであったのも何かの縁だと思い、このまま一緒に行動することにした。
うちの店は行列があるのでまた燐のクラスに行くことにした。
店に入り、アメリカンドックを二本注文し席に着く。
昨日ここで初めてあった人と今日一緒に行動している。
なんか最近こういうの多いな・・・。まるで見えない何かが働いているような。
「あ、あの」
「どうしました?」
「その、今日は突然にも関わらず着いてきてもらってありがとうございます」
「いえ、いいんですよ」
「ですが、私は嘘をついてまで・・・」
「一つや二つくらい嘘をついたってどうにもなりませんよ」
「ですが・・・」
「とにかく、俺が大丈夫って言ってるんですし、心配しないでください」
「はい、ありがとうございます」
少し話していると燐が注文していたものを持って来ていた。
「こちらアメリカンドックになります。どうぞごゆっくり」
その声は少し怒りを感じるような声だった。
亜衣さんは何も感じてないようだし気のせいか。
二人でアメリカンドックを食べた後はクラスの出し物のアトラクションで楽しんだ。
ちょっとした迷路や脱出ゲーム。お化け屋敷にも行った。
亜衣さんはお化け屋敷を楽しめるタイプの人みたいだな。
怖さのレベルが少し高いと言われていたので行って見たが意外にも平気だった。
でもこれは玲狐達と一緒だったらラリアット食らってもおかしくなかったな。
後ろからすごい悲鳴が聞こえたがすごい知ってるような声だった。
どうか違いますようにと願いながら後ろを確認すると玲狐とクレアが抱き合いながら出てきた。
後ろでは七海がおろおろしながら立っていた。
そんなところを見ていたらアナウンスが入った。
『これにて文化祭終了です。みなさんお疲れ様でした。気をつけておかえりください』
楽しいのはあっという間というのは本当なんだろうな。
多少の衝撃はあったがとても楽しく過ごせた。
時間を早く感じてしまった。それは亜衣さんも同じだったらしい。
「もう、終わってしまいましたね」
「えぇ、そうですね」
「あの、また今度お話ししませんか?」
「俺でよければ」
「ありがとうございます。それでは」
生徒会室に戻って行く亜衣さんを見送った。
さて、俺も戻ろうかな。と歩き出していた時、前には玲狐達の姿があった。
「優くん、さっきの人について説明してもらおうか」
「私は昨日お会いしましたけどあそこまで親しかったですか?」
「そうね、私もあの時の情報が欲しいわ」
「あ、あの。優さん。う、浮気はダメですよ」
この後、四人による質問責めにあった。
もう勘弁してくれよ・・・。
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