第38話 破天荒な追求
花火が終わった後、会場で解散しそれぞれ家が近い者同士がまとまり一緒に帰って行った。
俺達も帰ろうと家に向かっていた。
そして家までの距離が近くなって来た頃、後ろから肩を叩かれた。
後ろを振り向くと燐がいつものように笑ってこっちを見ていたが、何か考えていそうな表情でもあった。
「どうかしたか?」
「あの、後で私の家に寄っていきませんか?」
「お前の家にか?」
「えぇ、ダメですか?」
「いや、別にいいけど」
「ではこのまま参りましょう」
「お、おう」
七海と美玖に少し燐の家に寄ってから帰るとだけ伝え、そのまま燐の家に入って行った。
思えば燐の家に入るのは結構久しぶりだった。
小学校くらいの時は燐と玲狐と俺の三人の家をそれぞれ行き来したり、泊まったりもしていた。
中学になってからは外で買い物をしたり俺の家で遊んだりが多くなっていた。
元々小学校の頃から俺の家で遊ぶ方が多かった。理由は母さんの出す手作りのお菓子だ。
それが美味しすぎるからという理由で週に2、3回ほどのペースで来ていた。
俺が思い出に浸っている間に燐は家の鍵を開け、既に中に入っていた。
俺もそのまま家に入っていった。あぁ、やっぱり昔と何も変わってないな。
と、そう思っていた。
そして居間に案内され、お茶と少量のお菓子が置かれた。
その後燐は少し部屋を片付けてくると言い残し、部屋に向かった。
出されたお茶を飲みながら待っていると燐が私服に着替えて降りて来た。
片付けを終えたらしく、そのまま部屋に案内された。
燐の部屋は2階にある。この階段自体登るのが久しぶりだった。
そして燐の部屋の前に着くとそこからは謎のオーラのようなものを感じた。
なんというか、絶対に触れてはいけないものが大量にあるような。そんな感じだ。
燐が躊躇いなくドアを開ける。燐が開けた瞬間俺はとっさに目を閉じてしまった。
だが、せっかく片付けまでしてくれたのに入らないわけにはいかないと思い、俺も覚悟を決めて目を開ける。
視界に飛び込んで来たのはあたり一面に大小様々なぬいぐるみがあちこちに置かれている部屋だった。
想像と違い、あまりにも女の子のような部屋をしていた。
さっき感じたものとは比べ物にならないほど和やかなムードが広がっていた。
だが今でも視線のようなものを感じていた。だが今は燐と俺の二人しかいない。
最近そんな気を少し感じるようになっていた。だが、特に気に止めようともしなかった。
きっと自分の勘違いだろうとそう考えていた。
部屋に入り、真ん中に置かれていた小さなテーブルの横に座った。
燐が俺の正面に座り、話し始めた。
「今日、結衣さんと二人で買い出しに行きましたよね?」
「あぁ、行ったな。足りなくなったからな」
「そして帰って来た時、妙に静かでしたよね?」
「い、いや。俺たちだって静かに帰って来る時くらいあるって」
「そうですか、ではなぜ結衣さんは赤くなっていたのでしょうか」
「うぐっ、そ、それはだな・・・」
「何かありましたね?」
「・・・はぁ、あったよ。やっぱり嘘は通じないか」
「当たり前です。それに今まで優さんが私に嘘を突き通せたことなどないじゃないですか」
「そ、それは言わないでくれよ・・・」
「今日あったことを正直に言ってくれれば考えてあげます」
俺は今日の買い出しの時に起こった事を燐に説明した。
すると燐が納得したかのように頷いていた。
こいつ、もしかしてほとんど予想できてたんじゃ・・・と思っても既に全て言ってしまっているので何も言えなかった。
燐が家に寄って欲しい理由がこれの説明のためだけということを聞かされ、電話でもよかったじゃないか。と言ったところあなたの妹に知られてもいいの?などと完全に全てをわかっていてここに呼んでいたらしい。
委員長とのことを全て言った後、燐に質問を投げた。
後ろのぬいぐるみ少し変じゃないか?と。
すると、燐は何やら悟ったように後ろにあったぬいぐるみをこちらに持って来た。
燐の説明によると、そのぬいぐるみは限定ものらしく両目が赤になっているらしい。
ベットに置いてあった両目が黒のものも持って来ていた。
自分が思っていたのと全く違ったため、すまんなんでもない。と謝った。
燐は普通に許し、ぬいぐるみを元の位置に置き直した。
その後、俺が帰る頃に燐が玄関まで見送ってくれた。
おやすみ。と一言だけ言い残し俺は家に帰った。
優が帰った後、燐は自分の部屋に戻りパソコンを開いた。そこには優と結衣の二人が写っている写真が何枚かあった。
燐は少しその画像を眺めた後、パソコンの電源を落とした。
近くのところからぬいぐるみを取り、電気を消した。
ベットに入り、燐は持って来たぬいぐるみを強く抱きしめた。
「優さんは・・・私が必ず・・・」
燐が寝た後も優の前に置かれていたぬいぐるみの片目は赤く光っていた。
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