第36話 破天荒な放課後
七海が転校してきて、クラスがとても賑やかになっていた。
放課後にはクラスの人達に囲まれ質問攻めに遭っていた。
オロオロしながら必死に会話をしようとしていた中、委員長がみんなの行動を一時的に抑え、七海は少しずつ質問に答えていた。
玲狐とクレアはじっとこちらを見てきていたので逃げるように教室を出た。
そして俺は職員室に呼ばれていたのでそのまま向かうことにした。
「失礼します」
「こっちだ」
「はい。それで、一体どうしました?」
「いや、どうしたも何も優、七海と一緒に住んでるってどういうことだよ」
「えぇっとですね、話せば長くなるんですが・・・」
俺は休みの時にあったこと、そして七海と暮らすことになった理由を色々と話した。
「なるほどなぁ、いろいろな事を知るために転校させたと。そしてその間はお前の家で預かるってことになってるんだな」
「まぁ大体そんな感じです」
「事情はわかった。親御さんの了承も貰ってるようだし大丈夫だな。」
「そうですよ。別に何かする気もないですし」
「ま、確かにお前なら心配はいらなそうだな」
「疑いが晴れたようなら教室に戻りますけど・・・」
「あぁ、もう戻っていいよ。私もやることがあるしね」
担任との話を終え、職員室から出て荷物を取り教室に戻ろうとした時ドアの前に燐が立っていた。
そして燐はそのまま俺の腕を掴み屋上まで向かった。
屋上には玲狐とクレアもいた。
この三人が集まった時点でなんの話かはだいたい決まっているようなものだ。
「さて、優さん。七海さんの事について教えて貰っても?」
「そうだな、まぁ元々言うつもりだったが」
燐たちにも担任に話した事とほぼ同じ内容を伝えた。
「なるほど、勉強のために来たんだね。」
「まぁ大方の理由はそれだな」
「まだ他にも?」
「あぁ、あいつの人見知りも直してやりたくてな」
「でも、可愛いから良いじゃん」
「いやいや、可愛いからってなんでも許されてたらいつかダメになるだろ?だから少しでも改善してやりたいんだよ」
「・・・へー、そうなんだ」
「で、お前たちも何か話があってここに呼び出したんじゃないのか?」
「いえ、聞きたかったことはだいたい聞けたので」
「そうか、なら俺教室戻って良いか?まだ荷物持って来てないし」
「そうだったね、ならこの私がついて行ってあげても良いよ!」
「いや別にとってくるだけだし、先に下に行っててくれよ」
「日に日に私の扱いが雑になってる気がするんだけど・・・」
「気のせいですよ!玲狐ちゃん!」
「そうね、きっと気のせいだわ」
「絶対思ってるじゃん!!」
後ろで玲狐が何か言っていたような気がしたが特に問題もなさそうなのでこのまま教室へ向かう事にした。
クラスに戻りドアを開けた瞬間、急に七海が向かって来た。
そしてそのままぶつかってしまった。
「いった・・・」
「うぅ・・・はっ!ゆ、優さん!」
「七海か、飛び出したら危ないぞ」
「す、すすすすみません!で、でも色々と質問されすぎて怖くなっちゃって・・・」
「ま、まぁ初日だしな。仕方ないっちゃ仕方ないんだが・・・」
「あ、優くん。七海さんが急に走り出しちゃって・・・」
「あぁ、大丈夫だよ。委員長」
「そ、そう?なら良いのだけれど」
「とりあえず荷物とってくるか・・・」
「あ、あの。荷物ならここに・・・」
「お、ありがと。助かるよ」
「い、いえ。これくらいは」
「とりあえず今日はもう帰った方がいいわよ。みんなには言い聞かせておくから」
「ありがとな!委員長!」
「だから委員長って呼ばないでって!」
教室を出てまっすぐ玄関に向かう。
七海はまだ今日来たばかりなのでスピードを落としてゆっくり向かう。
そして三人を待たせている玄関までなんとかたどり着いた。
俺たちが着いた事に気づいた燐がにこやかに微笑みながら小さく手を振っていた。
玲狐とクレアは何やら話し込んでいるみたいだが少しずつヒートアップしてきている気が・・・。
玲狐たちの喧嘩を止め、そのまま家に帰る。燐は七海と話していた。その時、燐が七海を一瞬ジッと見つめていた気がしたのだが、普通に話しているようで特に変わりはなかったので気にしない事にした。
何はともあれ、七海の初登校は終わった。
お読みいただきありがとうございました。ご意見ご感想などもお待ちしております。




