第35話 破天荒な転校生
家に帰宅し、持って来た七海の荷物を部屋に運ぶ。
七海は璃亜の部屋を借りることになっている。
部屋のドアを開けると、まるでこのことを知っていたかのように璃亜の部屋には何もなかった。
七海の荷物を部屋の中に置き、窓を開ける。外から心地良い風が吹いてくる。
今回は衣服や毎日使うものなどを持って来ていた。
残りの大きい荷物は明日、送られてくるらしい。
「ゆ、優さん」
「ん、なんだ?」
「そ、その。わ、私がここに住んでほ、本当に良かったんでしょうか・・・。わ、私、人と話すの苦手で、それに不器用で」
「そんなこと気にすんなって。人と話すのが苦手でもいいさ、少しずつ慣れていけば」
「で、ですが・・・」
「とにかく、自分の家みたいにくつろいでおけって言ってもまだ慣れてないだろうから言わないけどさ、せっかく違うところに来たんだしここで色々と頑張ればいい。」
「そ、そうでしょうか」
「もちろん、頑張ったらそれだけ結果はついてくる。報われない努力はないんだからさ」
「は、はい!」
「あと、その敬語はやめてくれ。その、せっかく一緒に住むことになったんだし」
「で、ですがこの喋り方に慣れていて・・・」
「まぁ、徐々にでいいよ、そんなに急かさないから」
「わ、わかり・・・わ、わわかった、よ」
「よし、それじゃ俺はこの辺で。幾らか片付いたらリビングまで降りて来てくれ。お茶でも淹れるよ」
「は、はい!」
俺は部屋から出てリビングへと向かった。
リビングでは既に二人がくつろいでいた。
そして俺は冷蔵庫からコーヒーを取り出しコップに注ぎそのまま飲み干した。
その後コップを洗い自分の部屋へと戻る。
自分の部屋に戻り、まずクローゼットを開けた。
しかし、そこには誰もいなかった。だがこれはチャンスだと思った。
いつもは驚かされてばかりだがきっと何か秘密があるに違いないと思いクローゼットの中を確認する。
探しては見たものの特になんの仕掛けも見つからなかった。
結局どうやって入って来ているかはわからずじまいだった。
その後は部屋の整理が終わった七海にお茶を淹れてあげ、四人で話していた。
そして朝、いつもの時間通りに起きるとリビングでは制服姿の七海が家事を手伝っていた。
旅館の手伝いの癖が抜けないらしく成り行きでこうなっていたらしい。
だがそろそろ行かなくては遅刻してしまうため大急ぎで朝食を食べ終わり学校へ向かう。
七海は少し遅れてから登校するとの事だったので案内は母さんに任せている。
家を飛び出た時目の前に玲狐がいたことに気づかずそのまま突進していた。
「もぅ!危ないよ!」
「す、すまん!だがもう出ないとやばいぞ」
「え!?ほんとだ!」
急いで学校へ向かいなんとか遅刻ギリギリでクラスにつけた。
ちなみに燐は既に登校していたらしい。
そして荷物を入れていると先生が入って来た。
「よーし、全員いるな。今日は転校生を紹介する。入ってこい」
教室のドアをゆっくり開けて七海が入って来た。普通に歩いてはいるのだが顔が既に真っ赤だった。
「か、かかかか鎌切 七海です。こ、こここれからよ、よよよろしくお願いします」
軽い自己紹介が終わった瞬間クラスのみんなが騒ぎ始めた。
可愛いだの守っててあげたいだのいろんな声があった。
ちなみに玲狐もその一人だった。まぁ玲子の場合は彩に似てるとでも思ってるんだろ。
「それで席なんだが、あそこの奥の空いてる方に・・・」
「あ、あの」
「ん、なんだ?」
「そ、その私ここにあんまり慣れてなくてそ、それでその、い、一緒に住んでるゆ、優さんの隣がいいなって・・・」
「よし、ならお前はあそこに移動だ。そして七海はそこの空いたところに座ればいい」
「あ、ありがとうございます・・・」
そして俺の左隣の席に座った。
「い、色々とお、お世話になります」
その時クラス中から痛い視線が突きつけられていた。
そして後ろと右側から凄まじい気配を感じた。
これはやばいと本能的に察するほどにこの状況はまずい。
打開策を考えている間に先生が話を続けていた。
「ま、そんなわけだ。みんな仲良くしてやってくれ。あと優、お前後で職員室な」
「え!?は、はい」
そうして七海が新たにクラスに加わった。そして俺の居場所がまた少し減った。
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