第34話 破天荒な家族旅行その3
朝、起きようとした時、体に重みを感じ目を覚ました。
すると隣には姉さんの姿があった。浴衣が少し乱れている状態で。
どうしたものかと考えた結果、まず気づかれないようにこの状況から脱出することを決めた。
運のいいことに美玖と母さんはまだ寝ていたので物音を立てないよう静かに布団から出る。
なんとか脱出に成功したもののまだ誰も起きる気配がないので少し外に散歩に出ることにした。
書き置きを残し、部屋から出る。するとそこで七海と鉢合わせた。
「お、おおおおはようございます」
「おはよう、仕事中?」
「は、はい。ち、朝食の準備をしてまして」
「そうか、邪魔してごめんな」
「い、いえ。その、ゆ、優さんはどちらへ?」
「ただの散歩だよ、そこらへんフラフラして帰るよ」
「わ、分かりました、お気をつけて」
七海と別れ、外へ出る。まだ朝も早いこともあり薄く霧がかかっていた。
歩いて行くとここに来たときに見た花がまだ咲いていた。そこを少し進むとちょっとした花畑があった。
とても綺麗で、どこかで見た気がしたのだが気のせいだと思っていた。
持ってきていた携帯で花畑の写真を撮り、もう少し先へ進む。
するとそこには一戸建ての民家があった。
起こしては申し訳ないと思い、旅館へと戻る。
旅館に戻り部屋に帰ると既にみんな起きていた。
そして机の上には朝食が並んでいた。俺が帰るまで待たせていたと思い謝ると、運ばれてきたのはつい数分前らしい。
朝食は鮭や海苔、納豆などの和風でとても美味しそうなものだった。
シンプルでありながらも家で作るものよりも美味しさが違った。
この部屋の感じで余計にそう思えるのかもしれない。
朝食を食べ終え、少しくつろいだ後、みんな荷物をまとめ始めた。
荷物をまとめ終わると、姉さんが女将さんを連れてきた。
「この度は鎌切旅館に泊まって頂き本当にありがとうございました。」
「こちらこそ、素敵なところに泊まらせていただいて」
「璃亜さんには本当に感謝しております」
「いやいや、私はアイデアと少しの投資をしたまでですよ」
「またいつでも泊まりにきてください。サービスしますよ。ほら、七海。あんたも何か言いたいことあるんでしょ?」
「ええ!?」
「なんだい、言わなくてもいいのかい?それならこのまま帰ることになるよ」
「うぅ・・・あ、あの!わ、私をもらってください!」
「は!?」
「えっと、女将さんどうゆうこと?」
「あのね、この子を璃亜さんのお家で預かって欲しいの」
「い、いや私の家は狭いし・・・」
「いや、あなたの家じゃなくて、実家の方でよ」
「え、そ、それは母さんに聞いてみないと」
「あら、私はいいわよ?」
「ほ、本当ですか?」
「えぇ、もちろん。」
「でもどうして急に?」
「この子に他の街とかについて知って欲しいのよ。そして帰ってきたときに役立てて欲しいのよ」
「なるほど。七海ちゃんはそれでいいの?」
「は、はい!」
「それじゃあ一緒に行きましょうか」
「よ、よよろしく、お、お願いします」
七海が一緒に住むことが決まった、のだが何か裏があるとしか思えないほどに話が進んでいた。
もしかして初めからこうなることが決まっていたのか・・・?
そんなことを考えているときに目の前まで七海が近づいて来た。
「こ、ここここれからよろしくお願いします。」
「お、おう。よろしく」
帰り際に七海が荷物をたくさん持って出て来たので半分ほどの荷物を肩代わりした。
姉さんはまだやることがあるとか言って、帰りの分のチケットを七海に渡していた。
電車内に入り、荷物を下ろす。
七海はその時にバックから本を取り出し、読み始めていた。
携帯の画面をつけると通知の量がすごかったのでそのまま電源を落とした。
先ほどから七海が本から顔を出しチラチラとこちらを見ていたが目を合わせようとするとそらされてしまう。
何か顔についてるのかと思い顔に手をやると、再び本を熟読し始めてしまった。
これからどうなっていくのか少し心配になりながらも、楽しくなりそうだなと思っていた。
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