第27話 破天荒なテスト
テスト当日、教室に入るといつもの賑やかさが消え、みんなただひたすら勉強をしていた。
話している人もいたが、友達に教えてもらっているだけでそれ以外の話題が聞こえてこなかった。
・・・1人を除いては
「優くん、昨日のドラマ見た?すっごく面白かったんだよ〜」
「玲狐、お前随分と余裕そうだな」
「ふっふーん、テストくらい簡単だからね。授業の応用とかちょっとした引っ掛けが出るくらいだから大したことないよ〜」
「お前は気楽そうでいいな」
「そうでしょ〜」
「褒めてないんだが・・・」
「優くんも勉強ばっかしてないで私と喋ろうよ〜」
「お前、油断してクレアに負けても知らないからな」
「大丈夫だって。私負けないからさ」
「忠告はしたからな。後で痛い目見ても知らないからな」
「はいはい、忠告どーも」
玲狐も自分の席に向き直り、教科書を開いた。やっと勉強をする気になったかと感心していたら、教科書の間に小さい本が挟まっていた。
流石におかしいと思い少し横にずれて中身を確認しようとすると、玲狐も同じように横にずれてきた。
「・・・おい、お前何見てんだ?」
「え、き、教科書だよ〜」
これで何かを隠していることは明らかになったので席を立ち、即座に玲狐の手から教科書を取り上げる。
すると教科書の間には小さな本が挟まっていた。
「お前これ、中に本入れてんじゃねぇか!」
「な、なんでわかったの!?」
「俺が覗こうとしたらお前が同じように動くし・・・」
「え、の、覗き?もう、覗きはダメだよ、優くん」
「そうゆう意味じゃねぇよ!それと、お前、問い詰められた時に思いっきり慌ててたじゃねえかよ」
「そ、そんなに言うのなら私が読んでたって証拠でもあるの?もしかしたら優くんが入れたかもしれないじゃん!」
「そんな時間どこにあった」
「う、ありません・・・」
「これでわかったろ」
「はい」
「これからはちゃんとしろよ」
「あ、先生」
「だから嘘も大概にしろって・・・」
「優、私がどうかしたか?」
「せ、先生。いつの間に」
「たった今来たんだよ。それで、なんで君は本を持ってるんだ?今日はテスト当日だろ?」
「い、いや。これは玲狐のやつで・・・」
「優くんが教科書に挟んで読んでました」
「おい、玲狐。お前・・・」
「ほぅ、随分余裕そうだな。結果を楽しみにしてるぞ。さ、みんな教科書はしまえ、テストを始めるぞ」
こうして最初のテストが始まった。
順番は国数英理社の五教科だ。
国語は漢字の読み書きや読み取り問題などが中心的だった。内容的には割と優しめな問題配置になっており、点数は取りやすいだろうが油断すると間違えそうな引っ掛けも多くなかなか侮れなかった。
次の数学では新たに出て来た計算法やちょっとした中学の応用問題などが出題された。
中学のものとなると所々忘れていたりで結構大変だった。
そして英語、これが一番難しい。リスニングがあったのが救いだったが英語の文法など覚えるものがたくさんあり、覚えていく度にごちゃごちゃになってくる。俺の一番の苦手教科だ。クレアに教えた時ついでに教えてもらえば良かったと後悔していたが今は集中しようとギリギリまで粘り、問題と戦っていた。
昼食を挟み次に行われたのが理科。実際にやった実験のレポートから出題されたり、教科書の内容から出されたりと今までの中では格段に答えやすかった。
最後に社会。今回は地理だった。地図の図法や地図記号など簡単そうではあったがどこの記号だか思い出せなかったり、どの図法かもごちゃごちゃになっていた。そして苦労したのは世界地図を書くという問題。大まかでも何も言われなさそうだが適当すぎても不正解になりそうでなかなかに大変な問題だった。
テストの終わりを告げるチャイムが鳴り、クラスのどんよりとした空気が一気に戻りいつものワイワイとした賑やかな空気になった。
「みんな、お疲れ様。今日はこれで終わりだ。明日には返すから楽しみにしてなさいよ」
こうしてテストの悪夢は去っていった。
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