第21話 破天荒な姉
玄関のドアを開けた瞬間前に立っていたのは姉である璃亜だったのだ。
いつもは美玖が驚異的な速さで出迎えてくれるのだが、あいにく不在なようで代わりに出たのが璃亜だった。
「とりあえずリビング行こっか」
「はい・・・」
璃亜の後ろをついていくがその間にも緊張での冷や汗が流れ出てくる。
「さぁて、今日あったこと洗いざらい全部話してもらおうじゃないの」
「嫌だよ、てかなんで話さないといけないんだよ。なんか理由でもあるのか?」
「ある!」
「あるのかよ・・・それで、その理由は?」
「決まってるじゃない。私のことが好きなのに家に置いてけぼりで自分だけ遊びに行って、しかも女の子と遊んでたなんて完全に浮気じゃん!」
「あのなぁ、そもそも俺は姉さんと付き合ってないし付き合う気もない」
「なんでよー。あ、もしかしてあの子達がいるから?ならあの子達を消せば自動的に・・・」
「おっと、それ以上は言わせないぞ。あと、そんなことしても何も変わらないと思うぞ。むしろ嫌いになる」
「えぇ!?」
「話戻すけど俺達はそもそも姉弟なんだから無理なんだって。」
「で、でも・・・あ、じゃあ姉弟らしくしてればいいんだね?」
「姉さん、やっとわかってくれたか」
「うん!優のおかげね」
「あぁ、長年の苦労がついに報われた・・・」
「そんな大げさな」
「こうしちゃいられない、まずは美玖に連絡しないと」
「あ、ちょっと・・・行っちゃった。でもこれからは姉弟らしくすればいいんだよね。うふふ、今後が楽しみだわ」
璃亜の不敵な笑いがリビングからかすかに漏れていたが誰も気にしなかった。
璃亜は突然笑い出すことがよくあるのでいつものやつだと完全に思い込まれている。
だがそれもまた璃亜の作戦のうちだったとは誰も知る由もなかった。
次の日の朝、リビングへ行くと母と姉が一緒に朝食を作っていた。
「あ、優おはよー。朝ごはんもう少しで出来るからねー」
「お、おう。おはよう・・・ちょっと顔洗ってくる。」
なんだ、あの変わりようは・・・絶対何かあるに違いない。
とにかく用心して過ごさないと。
顔を洗い、リビングに戻ろうとした時、前で美玖が立ちすくんでいた。
「おい、美玖どうしたんだ?」
「お、おおおおお兄ちゃん!大変!!」
「何が?」
「お姉ちゃんが!!変なの!!」
「安心しろ、元からだ」
「違うの、そういう変じゃなくて。私を見て笑ったの!しかもすごい笑顔で!!」
「それいつもの姉さんだろ?」
「あ、そっか。知らなくても仕方ないか」
「なにがだ?」
「ううん、なんでもない。でもどうしてあんなにご機嫌そうなんだろう」
「昨日色々あったんだよ。それで改心したらしい。」
「ほぇー。でもホントに改心したのかな」
「きっとそうだろ。あの変わりようからすれば一目瞭然だろ。さ、早く行こうぜ」
「本当に改心したのかな・・・」
リビングに戻るとテーブルの上に既に朝食が置かれていた。
ベーコンエッグにレタスやトマトなどが皿に盛り付けられていた。
だがそれは俺のところだけで他のみんなのところにはサンドイッチが置かれていた。
「母さん、なんで俺だけ別メニュー?」
「違うわ、それは私じゃなくて璃亜が作ったの」
「はぁ!?姉さんが!?」
「そんなに驚かないであげて」
「いやでも、姉さん料理出来なかったんじゃ」
「私が教えたのよ。昨日の夜に作り方聞きに来てたの」
「ち、ちょっとお母さん」
「あら、言わない方がよかったかしら」
「まぁ確かに見た目すごい美味そうだけど」
「食べてみて。味は母さんが保証するわ」
「それじゃあいただきます」
皿に乗っているベーコンエッグの黄身の部分を切る。
すると黄身がトロっと流れ出てきた。
ベーコンと白身を一緒に切り黄身をつけて食べる。
「美味い・・・!」
「よかったー」
「というかベーコンエッグくらいなら味見の必要とかなかったんじゃ」
「それがね、黄身を半熟にするのに時間かかったり焦げちゃったりで案外大変だったのよ」
「そこまでして作ってくれたのか、ありがとう。姉さん」
「いいのよ!私たちは姉弟だからね!」
「・・・あれ、お姉ちゃんそんなこといつも言ってたっけ?いつもなら優、愛してるーとか言ってたのに」
「それは卒業したのよ。姉弟としての自覚を持とうって思ってね」
「へ、へぇ・・・」
「とりあえず早く食べちゃいましょう。」
朝食を食べ終わり母さんと姉さんで食器を洗っている間に美玖が隣に寄ってきた。
「ねぇ、昨日お姉ちゃんに何か言ったでしょ」
「まぁ色々あってな」
「何があったの」
「えっとだな・・・」
昨日あったことについて手短に話した。
特に何の変哲のないいつもの事をただ言っただけだったんだが
「なにそれ!?玲狐さんたちとお出かけってどうゆうこと!?」
「そこかよ!」
「まぁここは後で聞くとして姉弟らしくする・・・ね」
「何か問題でもあったか?」
「特になさそうだね。じゃあ本当に自覚持っただけなのかな」
「だから始めっからそう言ってるだろ」
「私が深く考えすぎたかな」
「きっとそうだろ。さ、俺はやることがあるから部屋に・・・」
「その前に、昨日のこと聞かせてもらうからね」
「いやでも、色々やることが・・・」
「問答無用!!」
この後2時間昨日のことについて聞かれた。
美玖から解放された後自室に戻り、ベットに横たわる。
するとこんこんとノックが響いた。ドアを開けたのは璃亜だった。
「暇になったから来ちゃった。」
「それなら自分の部屋にいけよ・・・」
「いいじゃん姉弟なんだし」
こいつ、ここぞとばかりに姉弟の権限主張してきたぞ。
しかも言い返せないって分かっておきながら・・・。
まずいな、前より格段にめんどくさい。
大人しくベットで横になってるかと思った時、璃亜が突然隣に入ってきた。
「入るのを許可した覚えはないんだけど?」
「いいじゃん、姉弟なんだし」
「だからって抱きつくなよ!」
「いいじゃん、私は言われた通り姉弟らしくしてるんだから」
「普通の姉弟はこんなことしないって!」
「よそはよそウチはウチですよー」
「くっそ・・・」
「えっへへー、優ー大好きだよー」
「力込めんな!さっきからずっと当たってるんだよ!」
「んっふふ、当ててるのよ」
「あー、わかったよ!もう姉弟らしくしなくていいから!普通通りに戻ってくれ!」
「わかった。」
「え、すんなり?」
「うん、これで愛してるって言ってもいいってことでしょ?」
「そうゆう訳じゃなくて・・・」
「優大好き!愛してる!!」
「うるさい!出てけ!」
璃亜を半ば強引に部屋の中から外に出した。
そして布団に倒れ込む。さっきあったことを思い出し布団の中で暴れていた。
その疲れからそのまま布団の中で寝てしまった。
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