第18話 破天荒な体育祭その7
「いよいよ体育祭最後の競技だ!このリレーで勝って学年優勝を取ろう!」
「おー!!」
先生の掛け声と共にクラスメイト全員が団結する。
ほかのクラスのところでも円陣を組んでいたりうちのクラスのように掛け声を掛け合ったりなど様々だったがどのクラスも絶対に1位を取ろうという気合いがありその様子は全体にまで伝わっていた。
そしてそれぞれが自分の走る場所へと向かう。
アンカーの集まる場所にはトップバッターで走る人も集まっている。
トップバッターとアンカーはスタート位置が違うため普通の走者達とは違う所で集合することになっている。
俺はアンカーなのでその場所に向かっていった。するとそこには燐がいた。
「あれ、燐。お前もアンカーなのか?」
「そうですよ。」
「マジかよ、俺お前に勝てる気しないんだけど・・・」
「大丈夫ですよ、今回はきっと勝てます。」
「そう言われると勝てるか不安になるな」
「ふふ、お互いがんばりましょうね」
「あぁ、絶対勝ってやるからな」
ちょっとした勝負を取り付け、再び前を確認するとトップバッターの人達がレーンへと並び始めた。
『これより1年生による全員リレーを開始します。』
アナウンスが流れたと同時に選手の準備も完了する。
『位置について、よーいドン!』
トップバッターの4人が走り出した。
そこから追い抜き、追い越されが続いていた。
客席に居る保護者達の声援やクラスメイトの応援などがあちこちで繰り広げられている。
そしてどんどんとバトンが渡ってゆき、いよいよ俺たちアンカーの手前まできた。
現在のトップは俺のクラスである1組、その後を追うかのように走ってきているのが2組、そしてその後ろに3組と4組の選手。
そして先に来たのは委員長だった。
「頼んだわよ!」
「おう!」
委員長からのバトンをしっかり受け取り、そのままゴールへと全力で走る。
姉さんやクラスのみんなからの声援がこちらまで響いてきている。
みんなの頑張りを無駄にしたくない!そんな気持ちで俺は走った。
だが後ろから走ってきた燐もいつの間にか追いついてきていた。
そしてそのままゴールへと一直線に向かっていき、俺もゴールへと急いだ。
そしてほぼ2人同時にゴールテープを切った。果たしてどちらが先にテープを切ったのか・・・判定は全クラスが走りきってかららしい。
残りの3組、4組のアンカーもゴールし、いよいよ判定結果が出た。
結果は僅かに俺の方が早くゴールテープを切っていた。
「1位は1組!!」
保護者達から盛大な拍手が送られた。
そしてクラスのやつらからは胴上げをされた。みんなで頑張って取った1位だ。
この時の場の盛り上がりはこの体育祭の中で1番盛り上がっていた。
『それではこれより閉会式に移ります。』
閉会式では特に頑張った人に賞状が贈られる。
その中の一人に俺も含まれていた。
内容は今回のリレーで見事1位になったことらしい。
生徒会長から賞状を受け取り、いよいよ総合順位の発表だ。
『1年生の総合優勝クラスは1組です!』
俺達は午前の部で負けていたもののこのリレーで逆転し優勝を果たした。
ほかの学年のところでも優勝したクラスの人達が喜んでいた。
そして優勝したクラスの学級委員長が前に出て校長先生から賞状を受け取った。
『最後に生徒会長から一言お願いします。』
「はい」
テントの中で書いていた書類を一旦置き、前へと出てきた。
「えー、今日はお疲れ様でした!みんな全力を出し切ったかな?出し切ったよね!今日は帰ったらゆっくり休んでください。私も休みます!」
生徒会長がテントの中へと戻っていく。
戻った後副会長に何か話しかけられていたが恐らく、まだ仕事が残ってる。
とかそんな感じだと思う。いつもそうだからな・・・
『それではこれにて閉会式を終わります。この後は各クラスごとで集まり、帰りの準備が整い次第帰宅してください。』
楽しかった体育祭もこれで終わったのだ。
俺達は言われた通り集まるため先生の元へと向かう。
そして先生が点呼をとり、話し始めた。
「お前たち、今日はお疲れ様!そして優勝おめでとう!先生はとても誇らしいぞ!会長も言ってたとおり今日は帰ってゆっくり休め。それじゃあ解散!」
帰りの支度をしていると玲狐がこちらへと向かってきた。
「優くん、後片付けあるからね」
「そういやそうだったな」
玲狐と2人でテントへと向かった。するとそこには既にレン達がいた。
「おう、優。優勝おめでとう」
「ありがとうな、そっちも惜しかったな。」
「リレーで2位取れてたらな・・・」
まぁ確かにそうだよな、燐は相当速いからな。
あれでも結構離れてたのにあっという間に追いついてくるしな。
「それはそうと、早く片付け終わらせて帰ろうぜ。」
「それもそうだな。ちゃっちゃとやっちまうか。」
俺達が先に片付けをしているとほかの実行委員たちも集まって来て、会場は元のグラウンドへと戻っていった。
片付けを終え、会長に報告しに行く。
「会長、後片付け終わりました。」
「うん、ありがとう。それじゃあみんなも帰っていいよー。おつかれー」
俺は荷物を取りに行き、そのまま帰宅しようとしたら、校門前で美玖が手を振っていた。
「あれ、先に帰ってなかったのか?」
「もちろんだよ!お兄ちゃんを置いていけるわけないでしょう」
「そうか、ありがとうな」
「う、うん!」
「そんじゃ玲狐またな」
「玲狐さん、さようなら」
「うん、バイバーイ・・・ってちょっと待って!」
「なんだよ、早く帰りたいんだけど」
「そうじゃなくて!私は!?」
「え、お前まだ帰らないのか?」
「違うよ!私も誘ってよ!」
「でもなー、たまには家族水入らずの会話が」
「いいじゃん!家隣なんだから!」
「はぁ、わかったよ。こんな所で駄々こねんな」
「やった!ありがとう、優くん」
「さっさと行くぞ」
「あら、玲狐ちゃんも来たのね」
「おば様、こんばんは」
「ねぇ優、私お昼のこととか色々聞きたいことあるんだけど」
「わかったから、帰ってから話すから!」
たまにはこうゆうのも悪くないなと思いつつ、みんなでくだらない話をしながら家へと帰った。
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