第162話 破天荒なデート?
今、俺は燐と二人でデパートに来ているわけだが・・・
通り過ぎる人達がほぼ毎回振り返り、燐の着物姿を眺めている。
うん、どうにも落ち着かないな、これは。
燐は見られていても何も反応を示さないが、一緒にいる俺に限界が来てしまったので、近くの喫茶店に入ることにした。
中に入っても視線を少し感じたが、外にいるよりはマシなので気にしないようにして席に座る。
とりあえずコーヒーを二つ頼み、ゆっくりと息を吐き出す。
「いやぁ、お前のこと色んな人が見てたな」
「そうですね」
「その、なんだ俺もすごく似合ってるとは思ってるぞ」
「・・・それはもっと早く言って欲しかったのですが」
「あぁ、すまん。初めに見たときはあまりの衝撃に声が出せなくてな」
「そ、そうですか」
「でもなんで今日着物だったんだ?普段はあまり着ないのに」
「女には色々とあるものですよ、そうやって無闇矢鱈に詮索しようとしたらダメですよ」
「そ、そうなのか?」
「えぇ」
「よくわかんねえ・・・」
話を続けていると、コーヒーが机の上に運ばれてきた。
コーヒーに砂糖を入れ、スプーンで軽くかき混ぜる。
そして軽く一口。・・・うん、美味しい。
ほのかな苦味と砂糖の甘さ、コーヒーの匂い。
どれをとっても申し分がない。燐も既に口をつけていたようだが、燐は砂糖などを入れず、ブラックのままコーヒーを嗜んでいる。
そういえばこのデートに関して一つだけ疑問があった。
そう、玲狐がこのデートを許したという事。すなわちそれは、何か裏があるということになる。
俺はコーヒーカップを机の上に置いた後、真剣な眼差しで燐に語りかけた。
「なぁ、今日は他の用もあって俺を呼び出したんだろう?玲狐を言いくるめてまで大事なことなのか?」
「はい。実はですね・・・私と優さんと玲狐の三人で同居したいと思いまして」
へー、同居か。なるほどね、それなら確かに俺だけじゃなく玲狐の許可もいるよな。うんうん、燐はしっかりと考えてるなぁ。
・・・いや待て、今、同居って言った!?しかも俺達三人で!?
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