第15話 破天荒な体育祭その4
「・・・まさかお母さんが言ってたサプライズって」
「そう、私が帰ってきましたー!」
「誤解を生む前に退場してください」
「えー、せめて優に会わせてよー」
「ダメです!璃亜さん、いいえお姉ちゃん」
「お、久しぶりにお姉ちゃん呼びしてくれたねぇ。」
「話題を逸らそうとしないでください!」
「はいはい、でもなんで私が優に会っちゃダメなのよ。」
「・・・まさかお姉ちゃん、あの事忘れたの?」
「あの事って何?」
「5年前にあったでしょ」
「あー、あれか!いや、でもあれは私の気持ちをそのまま伝えただけなんだけどな」
「とにかく、来るんだったら変な事はしないでよ。お兄ちゃんに迷惑かかっちゃうし」
「優に迷惑かける訳にもいかないしね。大人しくしててね美玖ちゃん」
「はぁい・・・って、なんで私が注意されないといけないんですか!」
「だって美玖ちゃんも私と同じようなものでしょ?」
「う・・・そこは否定できません。」
「じゃあこうしよう。お互いに止めるようにすればいいんだよ」
「なるほど、それは名案ですね。」
「じゃあ約束だよ。そしてそろそろ優のところに連れていってくれるかな?」
「そうですね、向かいましょう」
「美玖ちゃん、前みたいに話してくれてもいいんだよ?」
「はぁ、じゃあ行くよお姉ちゃん」
「うんうん、案内頼むよー」
そして璃亜の車のトランクからカメラなどを取り出し、後ろの席に無造作に置かれていたバックを手に取り機材を入れていく。
携帯バッテリーやインスタントカメラもまとめ、袋に入れれるだけ詰めた。
始めは1人で持っていこうとしたが、流石に量があったので美玖にも少し手伝ってもらった。
そして2人でグラウンドへと向かう。
グラウンドでは既に次に競技である綱引きが始まっていた。
両者どちらも気合の入った掛け声で綱を引っ張っていく。
引っ張ったり引っ張られたり、となかなか熱い展開が繰り広げられていた。
数分後左側が相手の一瞬の隙を突き思いっきり引っ張った。
それにより右側の人達はまるで流れるかのように引っ張られていった。
気がつけば2人はその場で立ち止まり食い入るかのように見入っていた。
その試合が終わると2人は我に返り母の待っている所へと再び歩き出した。
保護者スペースを抜け、母の待っている所がいよいよ見えてきた。
「お母さーん」
「あら、遅かったわね。それと久しぶりね、璃亜」
「ただいま、お母さん。」
「今回はどこに行ってたの?」
「今回はフランスに行ってきたんだ。後でお土産届くだろうからさ楽しみにしててよ。」
「あら、それは嬉しいわ。ありがとう」
「そういえば優の出る競技ってまだやってない?」
「残念だけどもう終わってしまったの」
「えぇ!?そんなー・・・」
「お姉ちゃん、さっきの綱引きで午前の部は終わりみたい。」
『これで午前の部は終了です。午後の部は昼休憩の後に始めます。生徒の皆さんは先生の指示に従い昼休憩を取ってください』
「ほら、アナウンスも入った」
「仕方ないわね・・・璃亜」
「何?」
「優を連れてきてくれない?」
「え、うん!行ってくるよ!」
「え、お母さん私も」
「美玖、今日は譲ってあげなさい」
「はぁい」
「それじゃあ行ってくるね!」
そして璃亜は足早に優がいるグラウンドへと向かった。
その少し前、クラスでのミーティングが行われていた。
「えー、我がクラスは現在2位に入っています。1位との差は約30点ほど。午後から巻き返して私達が優勝するぞー!」
「「「おー!!!」」」
「それでは各自自由に昼休憩をとってくれ。くれぐれも集合時間に遅れるなよ」
そう言い残し先生はテントへと戻って行った
さて、昼休憩だ。俺は美玖が来るまで待つとしよう。
いつもこういう時は必ず美玖が迎えに来てそのまま昼食になる。
なので俺はここで大人しく待機している・・・はずだった。
「ねぇ、優くんお昼ご飯一緒に食べない?」
「玲狐さん邪魔です!優くん、私とお昼食べませんか?」
「あー、どっちともダメだ!今回は先約が・・・」
早く迎えに来てくれ・・・そう思っていたその時、背すじがゾクッとした。
この感じは覚えがある。だが、なぜいないはずの人のような感じがするのだろうか。
恐る恐る後ろを振り向く。するとそこには・・・
「ねぇ、優。この仲のよさそうな2人は誰かな。お姉ちゃん知らないぞー?」
いないはずの姉が後ろに立っていた。
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