第150話 破天荒な尾行
今日は朝から玲狐とデパートに映画を見に来ている。
なんでも知り合いから映画のチケットを2枚貰ったらしく、その付き添いで俺も同行して来たってわけなんだが。
これ、タイトルとか予告映像を見た時に思ったけど、完全に恋愛映画だよな。
そもそも玲狐は映画なんて滅多に見に行かないし、知り合いってのは嘘で、大方誰かの入れ知恵だろ。
まぁでも、玲狐が楽しそうだしこれはこれで悪くはないかもな。
上映時間も近くなって来たところで俺はポップコーンと飲み物を二人分購入し玲狐の元へ向かった。
「お待たせ、ほらお前の分も買って来ておいたぜ」
「ありがとう、優くん!」
チケットに書かれている座席の場所に行き、玲狐に先に座って貰った後隣に俺が座った。
やっぱり映画館のスクリーンは大きいよなぁ。家のテレビと比べても迫力が段違いだ。
恋愛映画か、あまり見た事ないけど俺でも楽しめるかな・・・
優がそう考えている後ろでこそこそと後ろの席に入っていった人物がいた。
「玲狐ちゃん、楽しそうね」
「優も楽しそうね、ちょっと玲狐ちゃんが羨ましいわ・・・」
「あ、あの本当にこんなことしていいんでしょうか・・・」
「七海ちゃん、こういうのも大事だよ!」
後ろでは奏蘭、璃亜、七海、美玖の4人が小声で話しながら悠人玲狐の二人を見守っていた。
そもそもの始まりは優達がデパートに行く前まで遡る。
前日に奏蘭が玲狐に映画のチケットをプレゼントした。もちろん次の日の休日に行かせるために。
そして案の定玲狐は優を映画に誘った。その時から計画はスタートしていた。
あとは四人に連絡を取り、優達が出かけたタイミングで集合しその後ろを着いて行った。
バレないように距離を取りつつ近付いてたのだが、たまに玲狐が後ろを振り向いて来るのでその時だけ4人は全力で気配を消しながら隠れたりもした。そしてようやく映画館に着いたタイミングで玲狐の警戒が解けたのか、優と楽しそうに話したり腕を組んだりしていた。
その様子を見ていた4人はギリギリと歯ぎしりをしたり、壁に拳を叩きつけたりなど様々なことが行われていた。
「ねぇ、玲狐ちゃんってあんなに積極的だったかしら?」
「前から優に対してアプローチはしてたけど、多分この前のことがあったからもう離したくないんじゃないかしら」
「なるほどねぇ・・・」
「でも、さすがにいちゃつきすぎだとおもいます!!」
「美玖、よく言ったわ!」
「べ、別に少しくらいはさせてあげても・・・」
「甘い、甘いわ七海!ここで止めなければ今後もっと被害を被ることになってしまうわ!!」
「そ、そういうものなんですか?」
「そういうものなのよ!」
いよいよ映画が始まろうとした時、奏蘭の隣に女性が1人座って来た。
その時、奏蘭の肘にその女性の持っていたコップが当たってしまった。
「あ、すいません・・・って、姉さん?」
「え、燐ちゃん!?」
上映が始まったと同時に一番見つかってはいけない人物に遭遇してしまった瞬間であった。
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